第129話 ……閉じ込めたらどうなるんだろ?
「……」
「お疲れ、レオちゃん。昨日何してた?」
……逃げてしまった。
「ん?ずっと右手眺めてどうしたの?なんか付いてるの?」
この手に感触が残ってる。
「……」
「ねぇはぁとちゃん、レオちゃんがおかしいんだけど…」
「なに言ってんのミライ、こいつはずっとおかしい」
なにをやってるんだ僕は…
「…それでは、新作カップ麺、この味で決定という事で…製造に入りますがよろしいでしょうか?」
「……」
「…レオちゃん?」
「おい聞いてんのか」
これじゃ生娘じゃないか。
白石レオは王子だろ?
「はいワン、ツー…って白石?なにその右手。そんなん振り付けにないから」
「どうしたの?レオちゃん」
「おいダンスレッスンくらい真面目にやれよ」
しかしどういう事なんだ…?
「……レオちゃん?利き手を眺めてたらご飯食べられないでしょ?」
「ミライ、もうほっとこう」
あれは確実に男根だった。
「レオちゃん…もしかして……生命線、縮んだ?」
『FOOLS』は女性アイドルユニットじゃないのか?
「え?なに?レオお前死ぬの?」
あの一陽は男だというのか……?
あの見た目で?
いや、それはいい。彼女には…いや、彼には男根が付いていた。今はその事実だけでいいだろう。
「いつ死ぬの?」
なぜ女性アイドルユニットに居るのかも、僕の気にするところじゃない。
「ねぇねえ」
問題なのは僕が、彼の男根に驚いて逃げた、という事実だ。
「ねーぇーー」
「はぁとちゃんうっざ」
女の子だと思ってた股間にぶら下がってたもんだから驚いてつい…
「死ぬの?ん?いつ死ぬん?」
「……君達は知ってたのか?」
「ん?」
「一陽の事だよ」
飯処日清館の卓を囲む『TRY AGAIN』。ミライとはぁとの間に疑問符が浮かぶ。ピンと来てないようだ。
「一さんがどーしたんだよ?」
「あれ?もしかして……」
なにを勘違いしたのかミライがキラキラした目で僕に期待の眼差しを向けてやがる。
「レオちゃんは一さん推しなのかな?」
「ははーん。なるほど?自分興味ありませんけど?みたいな態度取ってても結局興味深々なんじゃない。ははは、ださ。小学生。そのノリ、小学生。やい小学生」
「はぁとちゃん、こら。はぁとちゃんがすぐそうやって揶揄うからレオちゃん恥ずかしがっちゃうんでしょ?やめなさい」
「やーいやーい小学生やーい」
「こら」
……ちょっと話題に出しただけでなんでも「好き」「嫌い」の話にしてしまうこの類人猿は置いといて……
「レオちゃん、三人でファンクラブ作ろうね?」
「いやミライ…違うんだ」
「?」
「知らないのか?彼の…」
「彼って誰?」
……どうやら知らないらしい。
一陽は女性アイドルとして認知されてる…
だとしたら、この秘密は不用意に暴露できないぞ?
僕らが生きてるのは芸能界。ディープなネタはそこら辺に転がってる。しかしアイドルの性別詐称はいかがなものか…
「レオちゃん?」
「……この破天荒さが『FOOLS』の魅力だとでもいうのか」
「どうしたの?」
「ラーメン伸びるぞ?」
……もし、彼の性別がバレたら『FOOLS』はタダじゃすまないだろう。関わらない方がいいかもしれない。
……だが。
とりあえず……
一旦だな……
お疲れ様です。白石レオです。
昨日はありがとうございました。
あの後大丈夫でしたか?すみませんでした。逃げてしまって。
それでですね……
改めて、男女として、僕と一戦お願いできませんでしょうか?
お返事待ってます。
一旦喰っとこう。
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「あんたやったわね」
「すみません」
「一大事よ」
「はい」
こんにちは。天鬼りあです。
私達は今、新宿に居ます。デビューライブした『アキバStation』ってライブハウスです。
今日は二回目のライブです。
楽しみです。
「よく帰ってこられたね、せいちゃん」
「さしみかった?琴音ちゃん」
「刺身買った?さみしかった?の間違いだろ?」
「……私の捕ったマグロの刺身、買った?」
「え……買ってない」
あとせいちゃんが帰ってきました。
嬉しいです。
楽屋で衣装に着替えようとしてる私達の端で、はーちゃんが万理華さんに詰められてた。星熊さんの顔も険しい。
「『TRY AGAIN』の白石レオにイチモツを見られた…と」
「もうバレてんじゃないわよこのタコ」
「すみません…」
「一さん、どういう経緯でバレたんですか?」
「ホテルで……」
「「ホテル!?」」
はーちゃん、あの後何があったんだろ…
「あの…そろそろ本番近いし…着替えたいんだけど」
説教部屋と化してる楽屋に琴音ちゃんの訴えが響く。不機嫌そうな万理華さんはそんな琴音ちゃんに一瞥くれて一言。
「先着替えていいわよ」
「いや……」
琴音ちゃん、遠慮がちにはーちゃんを見る。
「うぅっ!!」
「陽!?どうしたの!?」
「うぅぅぅっ!!迷惑かけてごめんなさいっ!!やっぱり…僕は居ない方がいいんだっ!!」
あぁっ!またはーちゃんの発作が!!
紗良ちゃんがまたいたずらっ子な眼差しで琴音ちゃんを睨んだ。
「……琴音ぇ。お前はーちゃんいじめんなよ」
「え!?いや違……」
「はーちゃんは仲間だろ?」
「そうだけど…でも……」
「仲間なら裸も見せられるよなぁ!?」
ガバッ!!
「ぎゃああああああああああああああああああああああっ!!??」
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紗良ちゃんが琴音ちゃんの服めくって、紗良ちゃんが琴音ちゃんに半殺しにされて、どんちゃん騒ぎになって、現在……
「星羅、3月のライブの新曲は間に合うの?」
「万理華ンヌ、誰に言ってんの?」
「前回死ぬほど苦しんでたあんたに言ってんの」
「ばっちり。歌詞見る?」
「どれどれ…『しゅきしゅきだいしゅきホールド』?なによこの曲名!!」
着替え終えた私達は楽屋を出てた。
「衣装違うんだね、はーちゃん」
「うぅぅ、ごめんなさい」
「大丈夫だよ。はーちゃんはかわいいよ」
「?……ありがとう、りあちゃん」
私とはーちゃん、万理華さんとせいちゃんは衣装に着替えて廊下で待ってる。
「琴音、紗良、まだ?」
「この衣装ベルトが多くて着づらいっ!!」
「ぐふっ……琴音にやられたダメージのせいで…体が動かない…」
「早くしてね」
万理華さんが腕組みして二人を待ってる。
扉の向こうから二人のくぐもった声が聞こえてくる。
「ちょっと紗良。これ付けるの手伝って」
「なぁにぃ?琴音ったら甘えんぼさんなんだからぁ」
「手が届かないんだよ!!」
「ん~~。短いもんね~~」
「もっかい殴られたい?」
「どれどれ~?お姉ちゃんに貸してごらん?」
……てぇてぇ。
「……万理華ちゃん、白石レオさんからこんなDMが来てるんだけど……」
「陽あんたっ……ホントにホテルで何があったのっ!!」
「違うっ!!襲われたんだ!!」
「あんたそれ絶対返信しちゃだめよ!!」
……今、琴音ちゃんと紗良ちゃんが楽屋に二人っきり。
……閉じ込めたらどうなるんだろ?
「……でゅふっ」




