第116話 やーいやーい!!ストーカー予備軍!!へんたい!!
「というわけで、ミライさんの状況次第で今後のスケジュールに変更が発生する可能性があります」
レッスン室に集められた『TRY AGAIN』の仲間に私は頭を下げるしかなかった。
「レオちゃん、はぁとちゃん、ごめんなさい」
巌鉄砕さんからの情報共有に対して、そして私の謝罪に対して二人はとっても淡泊な反応を示す。
「了解」
「あーい」
……なんか悲しくなった。
「事務所としては全国ツアーは予定通り開催したいと思ってます。ただ、3月の『新春!アイドル春祭』に関しては…複数のグループも参加するので、状況を見つつの対応になります」
巌鉄砕さんは事務的に告げてレッスン室を出ていった。
残された三人。
もう一度頭を下げる。
「ごめん、私の自己管理不足で迷惑かけて……」
「気にする事ないさ」
「レオちゃん…」
「君が悪いわけじゃない。それに、人気者にはそういうトラブルは付きものさ…実は僕もね…一昨日刺されかけたんだ。前ワンナイトした子に」
「……そのまま刺されて死ねばよかったのに」
「ミライ!?」
鼻くそほじりながら床に寝っ転がってるクソガ…はぁとちゃんが提案してくれる。
「しばらくウチ泊まる?」
「…ありがと。でもうちの親、厳しいから…外泊とか許してくれないんだ。特に鼻くそほじってるような子の家には……」
「あ?(怒)」
「そういえば…ミライはいいとこのお嬢様だもんね。確か…アイドル活動も反対押し切ってやってるんだっけ?」
過去の記憶を辿る顔しながらレオちゃんが言う。私達が出会った頃の事を思い出してるんだと思う。
「で?その親はなんて?」
クソガキが鼻くそ床に擦り付けながら…
「まだ何も知らない」
「「言ってないの!?」」
まぁ…普通そういう反応になるよね。
でもこんな事になってるってバレたら、アイドル活動辞めさせる大義名分をあの人に与える事になりかねない。
だから警察にも相談できない。
「それは…どうなんだい?」
レオちゃんが難色を示す。否定的な二人に私は笑いかけた。
「そんなに驚く事じゃないよ。家族以上の二人にすら黙ってたんだよ?」
「……重。ちょっとそーいうのめんどいわ、ごめん」
は?メンヘラに否定された?
「ミライ。ごめんけど僕はミライよりペットの方が大事だ」
は?ウシガエルに負けた?
「……二人とも流石だね。こういう事言えば大抵の人は勘違いするのに…」
「うっわ。そーやってファン増やしてんだ。うちそーいうグループじゃねーんですけど!?」
「僕が言うのもアレだけど…色恋営業なんてしてるからストーカーなんかが生まれるんだよ」
……
「で?これからどうすんだよビッチ」
「うん、クソガキ…この件は大事になる前に私の手で片付ける」
「おぉ…い、勇ましいな?(汗)」
私のアイドル活動をこんな事で邪魔されるわけにはいかない。それにあの人は私のファンだ。私が責任もって対処する。
「どうやって?どこの誰かも分からないんだろ?」
レオちゃんが問う。
どうやってと訊かれると困るけど……
「直接話すしかないよね…」
「レオ、こいつバカだ」
「どうやって?」
「…あの人は私の住所特定してる。私に会いに来てるんだよ。接触は簡単なはずだよ」
「で、自分から会いに行くって?やっぱりバカだ。刺されて死ぬぞ?」
「おんなじストーカーのはぁとちゃんに訊きたいんだけど…やっぱりこういうファンの心理として殺意みたいなの抱いてるのかな?」
「おんなじストーカーってなんだ(怒)」
「鏑木琴音のストーカーじゃん」
「ち・が・う!!健全なファンにして崇拝者!!その証拠に琴音様にウザ絡みしないから!!あくまでファンとしての距離感キープしてっから!?」
「でも他のメンバーさんにはSNSでウザ絡みしてるよね?」
「してねーし」
「本人に直接絡まないのははぁとがチキンなだけだろ?」
「うっせっ!!レオうっせっ!!あーウザいわ!!こーいうのがウザ絡みだわ!!あーー!!あーー!!」
……
「なーんも分かってねーわ!!バーカバーカ!!」
……クソガキだなぁ。
「大体ミライだって天鬼りあ様にDM送ったの知ってんぞ!?」
「え?そうなの?ミライ」
「あっ!!このクソガキ…っ!!」
「弁えろ!!一ファンの分際でよぉ!!おめーの方がストーカーだから!!」
……
「やーいやーい!!ストーカー予備軍!!へんたい!!」
……クソガキ。
「ミライ、それ『明石ミライ』のアカウントでやってないよね?」
「レオちゃん…だって。明石ミライ名義のアカウントじゃなきゃ認知されないじゃん?」
「……」
「はぁとちゃ……クソガキみたいな迷惑な絡み方してないもん」
「はぁ~!?誰の何が迷惑なんだよ!!おいっ!!ストーカー!!へんたいっ!!」
レオちゃんは何かを言いかけて……この不毛な争いへのこれ以上の介入をやめた。
代わりにため息と一緒に忠告する。
「……とにかくストーカー君に接触するなんて無謀だ。そもそも会って何を話すつもりだい?」
「やめてねって」
「…本気で言ってる?」「バーカバーカ!!」
私、真剣だよ?
真っ直ぐレオちゃんを見つめ返す私。その視線にリーダーも説得を諦めた。私の頑固は今に始まった事じゃない。
「……で?僕らは何を手伝えばいい?」




