第一五話 大量破壊兵器を確保せよ その③
特殊作戦突撃団が武器庫の一つに突入した頃、特殊作戦団も同様にもう一つの武器庫に突入しようとしていた。
「事前にカールグスタフとモーターを敵にぶち込め!!」
特殊作戦団二個小隊の総指揮を任されている内田一等陸尉の指示に対し、84mm無反動砲Bとコマンドーモーターこと60mm迫撃砲を装備している隊員たちが、84mm無反動砲BにはHE 441B 榴弾、60mm迫撃砲には60mm迫撃砲榴弾を装填して引き金を引く。発射し終えるとまた撃つ。爆発音が途切れることはなく響き続けた。
「撃ち方やめ!! 突撃!!」
隊員たちは突撃を開始する。
すると内部に入った隊員たちに銃撃による歓迎を受けた。先に無反動砲による攻撃をしつこく行ったお蔭かその攻撃は弱かった。
照準を合わせられないように素早く駆け抜ける。動き回りながら標的を決めて次に狙いを定め、手に持っているM4カービンの引き金を引く。乾いた音が複数響いた。狙われた敵兵はこと切れていた。
頭上から撃ってくる敵兵がいた。それを予測していたかのように隊員たちは遮蔽物に駆け込んだりするなどの対処を取るが銃弾が命中し負傷するものも出た。
負傷者が出たお返しとばかりに上に向かってMK3手榴弾を複数投げ込んだ。安全ピンは外されているので信管は既に作動しており潜んでいた敵の上で手榴弾内にあるTNT爆薬が爆発。それによって生じた衝撃波が、骨と肉を砕き抉り脳と内臓を揺さぶって損傷させ敵兵を次々と無力化していく。
着々と敵の抵抗を潰していくものの、抵抗は衰えることはない。
機関銃陣地が立ちはだかった。銃口から吐き出される銃弾のシャワーは無理やりにも突破することを許さない。
それに対して、土嚢を積んで作られた機関銃陣地には火力をぶつける。M4カービンの銃身下に装備されているM203A2グレネードランチャーから40×46mmグレネード弾、Mk19自動擲弾銃からは40×53mm擲弾が殺到し機関銃を使いものにならなくさせそこにいた敵兵をひき肉にさせる。
「あそこから撃ってきたぞ!!」
「狙撃班、ここからでは排除できない。排除してくれ」
息を潜めて隙を見せた瞬間に襲いかかろうとする敵兵と機関銃は狙撃班のM24対人狙撃銃、バレットM82A1対物狙撃銃の精密射撃によって沈黙に追い込まれる。
進撃は順調であった。抵抗によって多少の遅れがあったがまるで噴水のように湧いてくる抵抗をしらみつぶしに片づけられていた。特殊作戦団が通った後に残るのは破壊の痕と敵の死体だけであった。自衛隊特殊部隊最強の実力をまじまじと見せつけていた。流石の特殊作戦突撃団は特殊作戦団のような圧倒的な戦闘力を持つに至っていない。
しかし、目標である核兵器の存在を未だ確認することはできなかった。
「まだ目標は見つからんのか?」
「はい。未だに」
「ここまで探しているんだ。それなのに見つからんとは……」
既に持ち出されたのでは? そんな疑問が内田一尉の脳裏に浮かび上がってしまうがそれを言葉にはしななかった。焦燥ばかりつのる。任務が失敗すれば確実に自分を含め潜入している部隊全員の命はないと思っている彼は全員の命を預かっているという責任感で押しつぶされそうになる。
「不審者を発見!!」
「何、確かに……」
箱を抱えて後ずさりをしている敵一人を発見した。姿形からしてウォルク人で一揆勢の幹部である可能性が高かった。大事に自分たちに見えないように隠して持っている姿から何かとても大切な物を持っているのかもしれない。
嫌な予感が内田一尉の脳裏をよぎった。核兵器、あの男が隠すように持っていた箱。二つの単語から導き出される結論……。
「超小型核兵器……まさかな」
鼻で笑い飛ばしたかったが、核兵器が発見されていない以上は些細なことでも無視するのはできなかった。
「あの男を捕まえて、箱の中身を探れ」
その指示に、内田一尉の傍にいた二人の陸士のM4カービンが火を噴く。銃口から放たれた銃弾があの男の胸部と右腕と右太ももを射貫いて転倒させる。またあの男の周囲にいた護衛も素早く射殺し安全を確保する。
あの男の下に駆け寄り、箱を回収。開いて中身を確認しようとした。
「……」
内田一尉は絶句した。
嫌な予感が当たっていた。中身を見る限り超小型核兵器であった。
しかも――。
虫の息であるあの男から呪詛の響きを含ませた声が内田一尉の耳朶に届く。
「キサマら……絶対に許さん。道連れにしてやる……」
撃たれたときに行ったのか核兵器は作動していた。内田一尉は息を呑む。緊張と元々早まっていた動悸が極限まで達する。
「不味い起爆する!! 逃げろ!!」
唾を出して指示を飛ばすが手遅れであった。刻一刻を減らしていく起爆するまでの時間からして到底城の外に回避するのは間に合いそうにない。
(無駄だ……この距離じゃ助からない)
絶望の呻きを漏らす。脳裏には今までの人生が走馬灯のように思い出す。おしまいだと諦めが心の中で覆うものの生存本能が内田一尉を含め皆の両足を動かして可能な限り核兵器から離れようとするが……。
特殊作戦団全員が武器庫の外に出た瞬間――――核兵器が起爆した。
轟音が轟き、爆炎と衝撃波が襲いかかり隊員たちをなぎ倒していった。
「総隊長、総隊長」
誰かが自分を呼ぶ声が聞こえてきた。意識を取り戻した内田一尉は強烈な耳鳴りに顔をしかめた。
「うう、何も見えない真っ暗だ……ここは冥府か?」
「いえ違います。総隊長も俺も生きています!?」
「何? 核兵器は作動した筈だぞ……」
部下からの報告に、内田一尉の頭の中はどういうことだ? という疑問が湧きあがり混乱してしまった。その間に目を開いていたときはぼやけていた景色が次第に元通りとなり耳鳴りも収まってきた。
周りを見渡すと戦闘によって荒れ果てた光景と何かが崩れる音が聞こえてきた。
内田一尉は片手を目の前に出して二、三回開いたり閉じたりする。指先と手のひらが接触する際に感触が伝わって同時に音が聞こえてきた。ここで初めて内田一尉は自分が生きているという実感を抱いた。
実のところ核兵器は内に秘めていた威力を発揮していなかった。要因は起爆装置か原料であるウランやプルトニウムなどの核物質が著しく劣化していたためだと推測されるが、調べようにも粉々となっているため真相は不明である。
特殊作戦突撃団は抵抗を排除し化学兵器の確保しており、核兵器の無力化によってこの作戦は成功として終わることになった。
核兵器と化学兵器の脅威がなくなった自衛隊は総攻撃を開始。一〇月二四日、一揆勢残党が立て籠もっていた拠点は陥落した。これはウォルク地方西部を騒がしていた存在が一部を除いて戦う力を失ったことを示していた。
次で完結します。
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