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第十四話 大量破壊兵器を確保せよ その②


 ラぺリンク降下した特殊作戦突撃団は進軍していた。透明魔法により敵兵は目で姿を捉えることはできず防音魔法により耳で存在を確認することができなかった。しかし、先々にあるトラップによって順調とは言えなかった。それらが障害となって彼らの動きを止めることになったのだ。


「またか……一〇メートル先にワイヤーを五つか六つ確認。さっき危うく引っかかりそうになった鳴子だ」


 チームγリーダーの早井二尉はその報告を聞いて舌打ちをしたい衝動に駆られる。


「ただちに解除しろ。そして警戒を緩めるな」

「了解、さて透明魔法が掛けられているワイヤーがないか、確認、確認」


 トラップは実に巧妙であった。全てがワイヤーを踏むと鳴子や機関銃やクロスボウが作動するか塗料が入っているバケツが引っかかった間抜けに掛かるようなものであった。ワイヤーを切れば簡単に解除できる代物であるが、目立つワイヤーを囮にして解除しようと無警戒で近づくと透明魔法が掛けられたワイヤーを踏んでしまうなど、トラップ解除を任務とする隊員たち息を抜くことができなかった。透明魔法が掛けられているものが確認できるよう処置が施されている暗視装置がなければいともたやすく引っかかってしまう。

 周囲を確認する。ワイヤーを切ることで作動するものではないことを確認すると、ナイフとハサミを取りだし次々とワイヤーを切っていく。


「トラップ解除……」

「行くぞ」


 一か所に長く留まることができない。敵に発見される危険性が高くなるからだ。魔法も万能ではない。姿を見えなくても撃たれたら死ぬのだ。不老不死の魔法を掛けられている訳ではないのだ。一定のダメージを受けると姿を晒すことになる。そうなれば潜入が露呈し警戒が厳しくなって他部隊がやり難くなってしまう。

 あともう少しだ。あともう少しで目的の武器庫だ。もう少しの辛抱だと早井二尉が思っていると――。


「うん!?」


 後ろから声が聞こえてきた。振り向くと敵が一人いた。百姓の身なりからして一揆勢であった。そいつなら問題はない。透明魔法と防音魔法を看破する術を持っている筈がない。いつも通り、念のため身を潜めていれば大丈夫……。


「だ、誰かがいるぞ!! 間違いない敵だ、敵襲!! 敵は透明魔法を使っているぞ!!」


 看破されてしまった。何故だ!? と早井二尉は内心で叫ぶ。その敵は何かをチームγめがけて投げ込んだ。すると掛けていた魔法が強制的に解除されてしまう。


「くそ!! なぜ解除された……仕方ない。それ、やっちまえ!!」


 あともう少しだったのに。ミッドイーナのときといい、何であと一歩というところで敵に発見してしまうのだろうか? 神様はとても意地悪だ。

 愚痴っている間に、部下の一人が発砲。サプレッサー付き拳銃の銃口から飛び出した拳銃弾は叫んだ敵兵の右肩と左ひざを射貫く。激痛に歪む表情を浮かべながら倒れ込み、うめき声を出して小刻みに震える。

 早井二尉は部下たちに指示を飛ばす。


「雑魚に構うな!! 向かうは地下の武器庫!! 立ち塞がるものは容赦するな!!」


 チームγ全員が駆け出す。再び魔法を掛けることはなかった。敵に発見されまた対抗手段を持っているのだ。無意味だと判断したからであった。

 道中で立ち塞がる敵は、装備している火器で即座に倒していく。

 視界の先に、大きな扉が見えた。あれが武器庫だなと早井二尉は思う。

 すると銃声が轟いた。扉の前にいた敵が撃ってきたのだ。

 慌てて伏せて即座にこちらも撃ち返す。そうすると敵は遮蔽物の影に隠れて攻撃を回避する。この手際の良さは反撃を予測していなければできない動きであった。

 回避した敵の上から銃弾が飛んできた。突然の攻撃にチームγの数名が傷を負う。

 さらなる損害が生じるのを防ぐために手投げ式の閃光弾、発煙手榴弾をばら撒いて敵の視界を遮り少し後退を行う。


「小隊長、これは」

「ああ、間違いない。この動き素人の一揆勢とは違う、それなりの場数を踏んでいる兵士の動きだ。それに……耳が尖っていない(……)


 暗視装置が捉えた敵の姿はウォルク人の特徴である細長く尖った耳は確認できなかった。ウォルク人ならばたやすく確認することができる。武器庫の前を防衛している敵はウォルク人ではなかった。


「確かにそうですね。もしや!?」

「間違いないぞ。北から来た連中だ。大規模な集団を確認するのは今回が初めてだ」


 早井二尉が壁から顔を少し出すと銃弾一発が飛んできた。すぐに引っ込めようとしていたため銃弾は壁に吸い込まれて大事には至らなかったものの早井二尉の胆を大いに冷やした。


「一揆勢とは違って手ごわいですね」

「全くだ、一切の隙がない。だが動きに予想がつかない素人とは違ってプロは動きをそれなりに予測できる」

「では小隊長……この状況をどう対応しますか?」


 少し思案した後、早井二尉は口を開く。


「……チームγは耐え忍ぶ」

「はい?」

「我々は、チームσが到着するまで敵の攻撃を耐え続ける。敵が我々に釘つけになるように徹底的に抵抗する!!」

「了解!!」


 方針が決まった瞬間、何かが床に転がった音がした。


「グレネード!! 伏せろ!!」


 対応する間を与えないと言わんばかりに手榴弾は爆発した。爆風と破片によりさらに数名が負傷した。


「やり返すぞ。ここに擲弾をぶち込め」


 AGS-30自動擲弾銃、AK-74に装備されていたGP-30グレネードランチャーが火を噴く。解き放たれた擲弾が敵にめがけて飛翔し――――命中した。爆音が複数届いた。

 敵は沈黙する。


「ザマ見ろ」


 早井二尉は悪態をつくが、これだけの攻撃で完全に沈黙する訳ないと警戒は決して緩めていない。


「不味い、連中RPGもどきを持っているぞ」

「撃ち殺せ!!」


 SVD“ドラグノフ”狙撃銃を装備する隊員がRPGもどきを装備している敵一人に狙撃を敢行。無力化させる。


「待たせたな!! チームσ只今到着だ!!」


チームσが到着した。戦力は増強されたこれで怖いものはなかった。

だが戦場は武器庫に繋がる経路は一本だけ、別のところから迂回することはできない。真ん前には敵が待ち構えている。力攻め以外の手段はなかった。


「突っ込むぞ。援護してくれ」


 突撃を支援するべく、再び自動擲弾銃とグレネードランチャーが火を噴き、切り札であるカールグスタフM3――採用している陸上自衛隊の名称では84mm 無反動砲を投入。歩兵が装備できる火器のなかで最大の火力が敵に襲いかかる。

 敵がまた沈黙する。その隙を突いて一部の隊員が銃剣とトマホークを輝かせて突撃を開始した。


「食らえ」

「くたばれ」


 瞬く間に接近して、敵を殺傷していく。頭上にいる敵には手榴弾を投げ込んで対処する。


「掃討完了!!」


 短期間のうちに敵を掃討してしまった。いくら場慣れしていても圧倒的な火力には抗うことはできなかったようだ。


「ツラ拝ませてもらうぜ」


 扉の爆破準備を行っているとき。チームγメンバーの朝凪二曹は好奇心に駆られて死体となった一人の北から来た連中が被っていたマスクを外す。

 この素顔の情報が脳に達した瞬間、左頬にナイフで切られた傷がある朝凪二曹は真顔となった。


「白人か……それ以外に何かの情報を掴むものはないか」

「ですが、敵はどんな奴だかは分かりました」

「その通りだ。北から来た連中は猿人とかネアンデルタール人ではない。俺たちと同じ姿をした同じ人間だ……」


 北から来た連中は長年に渡りその素顔が不明であったために素顔は地球ではとうに絶滅している猿人かネアンデルタール人のような顔をしているという噂が流れていた。実際のところは瞳と肌の色以外は日本人と同じ顔立ちをしたホモ・サピエンスであった。

 死体を見つめ続けている朝凪二曹の顔が歪む。


「俺たち……歴史の残ることをしたことになるな。これが後々面倒なことになって戻ってこなければいいのだが……」


 彼の思った通りとなった。後にチームγは初の北から来た連中と交戦した自衛隊部隊となり、二人ははじめて連中を殺傷した自衛官として歴史に残ることになる。この出来事は後に彼の懸念を越えたとんでもないことを暗示するものとなったが、この騒乱の当事者たちは知る由もない。彼らはただの今を生きる人間であり全知全能の神様ではないのだ。仕方ないことであった。


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