2巻発売記念◆観察者 アルの場合◆……という名の誤字脱字感想募集
いつもありがとうございます。
2巻お買い上げの方もそうでない方もお楽しみください。
発売10月10日予定ですがすでに本屋さんに並んでいるようなので!
変化のなかったファストの冒険者ギルドが、異邦人の受け入れで騒がしくなった。冒険者は声の大きな喧嘩っ早くて年中酔っ払っているような者も多いが、資料室に来るようなヤツは大抵静かだ。この街に残るのはベテランだけど、微妙な強さの者たちばかりで景気良く羽目を外すことも少ないし、新人冒険者の数が少ないということもあるのだろうけど。
でも、異邦人は違う。幼女と思える外見と高い声の集団が多い、そう集団だ。僕の世界だった資料室は、大勢で押し掛けては資料を破りとって持って行こうとしたり、探す本や疑問を僕に問わずに仲間内で抑えていない声で話し合う空間になった。会議室ではないのだけれどね。
魔物の対策でまったく見当違いな結論を出してるのも聞こえてくるけれど特に注意はしない。住人だったら、そっと受付嬢に馬鹿をやりそうな冒険者の情報を流すくらいはするけどね、異邦人は死んでも生き返るし。
話しかけてくるのもいるけど、筋違いな質問が多い。なんかオイシイ依頼はないかって、下にある掲示板はなんだと思ってるんだろうね?
異邦人は飽きるのも早いらしく、まだまだ見るべきものがあるというのにすぐに資料室を訪れる者は少なくなった。資料を元の場所に戻さないのも多いし、付箋の代わりにページを折るなんてことも平気でされた。まあ、酷いヤツは出禁にしたけど。
「お勧めの見ておくべき資料はあるか?」
異邦人が珍しく問いかけてくる。質問してくるのもだいたい資料を好き勝手漁った後だったり、目当ての資料を指定してくることが多いのに。
「ここにある資料はみんなお勧めだけどね、欲しがられるのはモンスターの分布図や、弱点の資料かな? 僕的には『冒険の心得』」
資料室の主たる僕に、最初に質問をしてくるなら合格だ。今まで来た異邦人もあまりにも混んでいて、実は遠慮して問いかけて来なかったのかもしれない。集団ではなく一人一人に会ったらマトモなのかもしれないけど、そこまで興味はないし。
「じゃあその心得を。あとは分布図があるなら地図もある?」
「この国の地図なら」
「写しても?」
「個人で使う分には。売るのは違法だよ、結構重罪」
「国益に反する?」
「そう」
なかなか飲み込みも早いみたい、それに資料を写している。異邦人はSSとかいう風景や物を見たまま絵に収めるスキルや、本を読まずにその知識だけ吸収するスキルを持っているそうだ。ただ、それらを使わないほうが、スキルを発現させやすい下地を作ることが過去の記録から分かっているんだけど、教える義理はない。この人は知っててやっているのかな?
身長、人間としては高い。髪、光の加減で青にも見える銀髪。顔、美形・色白。体型、均整が取れている、たぶん見た目より筋肉質。声、バリトン。姿勢がよくて気取ってる訳でもないのに妙に仕草が優雅。めくる紙に皺を寄せない、ここ大事。
対象が作業をしている間、観察をし、有象無象から一個の人としての認識に変える。自慢じゃないけど、人の顔を覚えるのは苦手だ。すぐにいなくなる異邦人なんて房になってるブドウと一緒で一粒一粒の特徴を覚えるのは無駄。ただ一度覚えたら資料と同じで忘れない。
次に会った時もホムラは長居をした、どうも僕と同じ人種で紙という媒体が好きらしい。僕の資料だらけの机を少し片付けて、次は彼にお茶を淹れてもいいかもしれない。あんまり食に興味なかったんだけど、差し入れのお菓子を受け取った時のバターの香りがやたらよかったので、つい次も強請っちゃったしね。
調べたら、もらったお菓子はガレットという中でもサブレタイプのお菓子らしい。ザクザクッとした食感のほんのり塩気のあるバターの香るお菓子、予想通りすごく美味しかった。




