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リーンカーネーション・サーガ:極点物理の支配者 〜亡国の王子はルールスペースで世界の理を再構築する〜  作者: 八咫烏


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再興の影

ヘルシンキ砦の占領から一夜。砦内ではエルウィン再興軍の兵士たちが、数年ぶりの「勝利」に沸き立っていた。兵舎のあちこちから、リーンの名を讃える唱和が聞こえてくる。


しかし、砦の最上階に位置する作戦会議室の空気は、それとは対照的に冷え切っていた。


「見事な初陣だった、リーン。君の『兵器』と『力』、そして何より兵たちを惹きつけるカリスマ……兄として誇らしいよ」


円卓の奥で地図を見つめる第二王子・アルベールが、薄く笑みを浮かべて口を開いた。その瞳には、弟の功績を称える温かさは微塵もなく、自分を脅かす存在への底冷えするような警戒心が宿っている。


◇◇◇◇◇


「だが、立ち止まっている暇はない。帝国が態勢を立て直す前に、一気に王都を奪還する。リーン、君と君の仲間、そしてリオンの遊撃隊には、エルウィン港の奪還を命じる」


アルベールは地図上の港を指し示した。港には帝国の重装甲艦隊が停泊している。本隊が王城を襲撃する間の「囮」として、リーンの火力を利用しようという魂胆だ。


リオンが異議を唱えようとしたその時、リーンが静かに片手を挙げてそれを制した。


「兄上。その任務、単なる『囮』としてではなく、港の敵艦隊の殲滅、あるいは完全撤退までを含めた『攻略』として引き受けましょう」


アルベールの眉がピクリと動く。リーンは真っ直ぐに兄を見据え、言葉を継いだ。


「ただし、条件があります。僕が港を落とし、王都の奪還が叶った暁には――僕に、この国の『将軍』の地位を約束していただきたい。名ばかりの王子ではなく、軍を動かす正当な権限を」


会議室に戦慄が走った。それは、暗に「兄の傀儡にはならない」という宣言に等しかった。アルベールは一瞬、顔を険しくさせたが、すぐに取り繕った笑みを浮かべる。


「……面白い。よかろう、それほどの成果を上げるというのなら、将軍の椅子など安いものだ」


◇◇◇◇◇


会議を終え、廊下に出た一行の顔は暗かった。


「……いいの、リンネ。将軍だなんて、そんなこと言ったらアルベール王子はもっとあなたを警戒するわ」


ユーリが心配そうに、だがリンネの決意を察して小声で囁いた。

「港には逃げ場がない。アルベール王子は、あなたが戦死すればそれで良し、生き残っても手柄を横取りするつもりよ。そのために、あえて無理な地位を餌にしたのよ」


「わかってる。兄上は僕が怖いんだ。だからこそ、自分の身を守るための『盾』ではなく、敵を打ち砕くための『地位』が必要なんだ」


リンネは自嘲気味に笑い、腰のガバメントに手を置いた。ティファやキースたちも、その無謀な作戦とリンネの覚悟に憤りを感じつつも、彼を一人で行かせる選択肢など持っていなかった。


◇◇◇◇◇


リンネは窓の外、凍てついた月が照らすエルウィンの大地を見つめた。


アルベールの狙いは明白だ。将軍の地位を約束したのは、港の艦隊を前にリーンが消えることを期待しているからに他ならない。


「……リオン先生。港の奪還、引き受けます。ただし、もう一つ」


リンネの瞳に、かつての平穏な学生生活では見せなかった、鋭利な刃物のような光が宿る。

「戦車にさらなる『改良』を施します。……帝国だけでなく、誰にも僕たちの邪魔をさせないために」


再興という名の希望の裏で、王家兄弟の亀裂は決定的なものとなった。エルウィン港――そこは、帝国との決戦の地であると同時に、新しき「将軍」が誕生するか、あるいは亡国の王子が沈むか、運命の分岐点となる。


本日もお読みいただきありがとうございます!

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