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リーンカーネーション・サーガ:極点物理の支配者 〜亡国の王子はルールスペースで世界の理を再構築する〜  作者: 八咫烏


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ユーリの特訓と、新兵器『絶対障壁』の開発

朝日が昇る。だが、僕の部屋にはまだ夜の重みが沈殿していた。

 机の上には、マリアンヌが最後に遺したエルウィン王国の紋章入りの手紙が置かれている。彼女が命懸けで繋いだエドワードとの連絡路、そして彼女が夢見た故郷の奪還。


(……感傷に浸る時間は、もう終わった)


僕はカーテンを勢いよく開き、眩しさに目を細めた。隣で丸椅子に座り、僕が起きるのを待っていたユーリが、ビクッと肩を揺らす。


「起きた? ……顔、少しはマシになったわね」


「ああ。計算の続きを始める。ユーリ、昨日言ったことは本気か?」


「当たり前じゃない。マリアンヌに『あいつ、全然使えないわね』なんてあの世で笑われたくないもの」


ユーリの瞳には、かつての「お転婆な貴族の娘」の影はなく、一人の戦士としての覚悟が宿っていた。


1. 異世界人の「防壁」の解析

僕は昨日、ジョーンズ軍曹との戦闘で得たデータを羊皮紙に書き出した。


「ユーリ、見てくれ。これが異世界人が纏っている『存在の防壁』の推定モデルだ。ジョーンズには、僕のルールスペースによる大気操作(真空)が効かなかった。それは、彼の皮膚表面数ミリに、物理定数を固定する『定常フィールド』が展開されていたからだ」


「物理定数の固定……? つまり、周囲の空気がなくなっても、そのフィールドの中だけは『空気があった時の状態』を維持し続けるってこと?」


「察しがいい。おそらく彼らは、この世界の魔力に適応するために、魂のレベルで『自分自身の存在論的な境界』を定義している。……僕の指弾(レールガン)が通用したのは、それが『物質的な質量』を持った攻撃だったからだ。ルールの上書きではなく、物理的な衝突であれば、そのフィールドも限界を超えれば突破できる」


だが、今の僕の指弾では連射性能とエネルギー効率に問題がある。そして何より、僕自身を守る「盾」が足りない。


2. ユーリの特訓:石礫の指弾への対応

僕は魔力を持たない。だから、魔力を用いるフォトン・バレルのような兵器は扱えない。

 僕たちは宰相邸の演習場へと向かった。


「ユーリ、君の属性は『風』と『水』だ。これを複合させて、単なる防御魔法ではなく、高周波の振動を伴う『流体防壁』へと昇華させる」


僕は足元に転がる小石を指で弾いた。

 『ルールスペース』により電磁加速された石礫が、ユーリの横を音速で掠めていく。


「きゃっ!? ちょっと、リンネ! 本気で狙ってきてるじゃない!」


「戦場では『ちょっと待って』なんて言えないよ。マナを一点に集めるな。空間全体に薄く、だが『波長』を高速で変化させながら展開するんだ。異世界人のフィールドが『静』の防御なら、僕たちは『動』の干渉でそれを相殺する」


僕は次々と石礫を弾く。魔力を使わない物理的な質量攻撃。魔導師が最も苦手とする、不可視の高速弾。


「……言うのは簡単なんだから! やってやるわよ!」


ユーリは歯を食いしばり、魔力を練り上げる。

 数時間の猛特訓の末、彼女の周囲に、陽炎のような空気の歪みが生じ始めた。超速で振動する大気と魔力の膜。これが、僕が設計した新概念防壁の「核」となる。


3. 新兵器:絶対障壁『アイギス・プロトタイプ』

夕暮れ時、僕は研究室に籠もり、最後の手順に入っていた。

 ユーリの魔力制御を「システム」として固定するためのデバイス。


「これを、君の腕輪に装着する」


僕はユーリの左腕にある魔導触媒に、銀色の小型チップを取り付けた。僕のルールスペースの演算を、ユーリの魔力で物理現象として固定する共鳴装置だ。


「ルールスペース・フェーズ3。……『絶対障壁(アイギス)』、起動」


ユーリが魔力を込めると、彼女の前に、青白く輝く六角形の結晶板が幾重にも重なって出現した。


「……すごい。魔力をそれほど使っていないのに、空間そのものが硬くなったみたい」


「これは、君の魔力を触媒にして、空間の『弾性係数』を局所的に無限大へ引き上げたものだ。異世界人の弾丸も、おそらくダニエル少佐が持ち込んでくるであろう兵器の衝撃も、この障壁なら理論上すべて無効化できる」


ユーリはその障壁をじっと見つめ、それから僕に向き直った。


「リンネ。これで、あなたはもう一人で崖から落ちる必要はないわね」


「……ああ。君が盾になり、僕が矛となる」


僕はマリアンヌの埋葬された丘の方角を、一瞬だけ見た。

 悲しみは消えない。けれど、その悲しみは今、帝国の「常識」を粉砕するための冷徹な武装へと変わった。


「ダニエル・ノートン少佐。君が次に何を仕掛けてくるか……楽しみにしていますよ」


暗闇の中で、僕のルールスペースが静かに、そして禍々しく黒い光を放ち始めた。


本日もお読みいただきありがとうございます!

14年前に書いた思い入れのある作品を、今の全力で毎日リメイク投稿しております。

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