↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リーンカーネーション・サーガ:極点物理の支配者 〜亡国の王子はルールスペースで世界の理を再構築する〜  作者: 八咫烏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/40

左遷騎士と化け物王子

エルウィン王都の北端、手入れの行き届かぬ離宮の庭。

そこは、王家の「不名誉」を隠すための檻だった。


「……構えろ!リーン殿下」


風を孕むような鋭い声。

目の前に立つのは、リオン・ウィード・ヴォルタール。風雷騎士団の遊撃隊長を務める、この国屈指の若き剣才だ。本来ならば王太子(第三王子)の指南役に選ばれるはずだった男が、今、魔力を持たぬ「無色の王子」の前に立っている。


宮廷内では、これは明らかな「左遷」と笑われていた。だが――リオンの瞳に宿るのは、失望ではない。


(エリック王は、この母子を捨てる気だ。ならば、私が鍛えるしかない。この幼き命が、いつか放たれる牙に噛み殺されないために)


リオンは、敬愛するメアリ殿下の悔し涙を忘れていなかった。

彼はあえて心を鬼にし、二歳になったばかりの僕に向けて木剣を振るう。


「騎士にとって、魔力は生命線だ。だが、魔力を持たぬお前にはそれがない。ならば、泥を啜ってでも生き残る『技術』を体に刻み込め!」


ヒュン、と空気を切り裂く一撃。

大人でも反応できない速度。だが、僕はそれを「見て」いた。


(……驚いたな。この体、なんてスペックだ)


僕は横っ飛びに避ける。

前世の僕なら、頭で理解していても体が動かなかった。だが、この獣人の肉体は、一歩で数メートルを跳び、着地の衝撃を関節がしなやかに吸収する。

一年で人間の三歳分成長する獣人の身体能力。さらに僕は、これに「ルール」を付け加えた。


(重心の位置、関節の可動域、筋肉の収縮速度。すべては『ベクトル』と『モーメント』だ。魔法なんて不確かなものに頼らなくても、物理は僕を裏切らない)


「……避けたか。だが、次はどうだ!」


リオンが踏み込む。

僕は逃げなかった。逆に、彼の懐へと一気に潜り込む。


「なにっ!?」


リオンが驚愕に目を見開く。

僕が使ったのは、前世の図書館で読み耽った古武術と格闘技の知見。

相手の体重移動を読み、最小限の動きで死角を取る。二歳児の小さな体躯は、リオンのような長身の騎士にとって「視界の下」に消える死角そのものだった。


僕はリオンの膝裏を蹴り、同時に彼の腕を掴んで重心を奪う。


「ぐっ……おお!?」


巨躯が、まるで魔法にかけられたように地面へ向かって沈んだ。

柔の理。梃子の原理。

リオンが辛うじて踏みとどまるが、その顔には戦慄が走っていた。


「……今のはなんだ。風の魔法で加速したわけではない。ただの……いや、あまりにも『合理的』な身のこなし。誰に教わったんだ?!」


「ただの物理だよ、リオン。力任せに振るうのは、エネルギーの無駄だ」


僕は息を切らしながらも、不敵に笑ってみせた。

二歳児(人間換算で五歳)が放つ言葉ではない。


遠く、離宮の窓から僕たちの様子を見つめる母・メアリの姿が見えた。彼女は不安げに、けれど僕の成長に一筋の希望を見出すように、強く胸元で手を組んでいる。


「……ハハハ、生意気な。殿下、前言を撤回しましょう。『不憫な子供』だと思ったのは間違いでした」


リオンが木剣を握り直す。その口元には、狂気にも似た歓喜の笑みが浮かんでいた。


「殿下は、この国の腐った秩序を覆す『爆弾』だ。よろしい。地獄の果てまで付き合ってやる」


この日から、訓練はさらに過酷さを増した。

僕はリオンという最強の壁を相手に、前世の知識という刃を研ぎ澄ませていく。


(物理の理(ルール)があれば、魔法にだって届く。見ていろ、エリック。僕を捨てたことを、すぐに後悔させてやる)


離宮の庭に、再び木剣のぶつかり合う音が響く。

それは、世界を書き換えるための序曲だった。

本日もお読みいただきありがとうございます!

14年前に書いた思い入れのある作品を、今の全力で毎日リメイク投稿しております。

もし「面白い」「続きが気になる!」と思ってくださましたら、ページ下部にある**【ブックマークに追加】や、『☆☆☆☆☆』を★★★★★に**ポチッと染めて応援していただけると、執筆の物凄い励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。