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『死んだ俺が1977年に転生して、君へ繋がる人生をやり直す』  作者: れいじ


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第51話「『好き』の意味は、花火のあとで」

いつも読んでいただき、ありがとうございます。


今回は、DIGITAL FANTASYの五人で花火大会へ。


いつもとは少し違う浴衣姿の春子に、思わず目を奪われる徹。


そして人混みの中、二人だけみんなとはぐれてしまいます。


中学二年の夏。


花火の下で、二人の距離がほんの少しだけ変わります。

八月に入り、約束していた花火大会の日がやってきた。


 夕方。


 徹が待ち合わせ場所へ着くと、達也と春樹がすでに来ていた。


「遅いぞ」


「まだ時間前だろ」


「俺たちが早いのか」


 達也はいつも通りだったが、春樹はどこか落ち着かない様子で周囲を見回している。


「後藤くん、どうしたの?」


「別に」


「なんか緊張してない?」


「し、してないよ」


「今日は女子が浴衣だから?」


「なんでそうなるんだよ」


 図星だったらしい。


 春樹が少しだけ顔を赤くしたところで、向こうから声が聞こえた。


「お待たせ!」


 春子だった。


 その隣には、こずえもいる。


「ごめん、ちょっと時間かかっちゃった」


 春子が小走りで近づいてくる。


 淡い色の浴衣に、髪もいつもより少しだけ整えていた。


 徹は一瞬、言葉を失った。


 いつも見ている春子とは違う。


 学校では制服。


 軽音部ではギターを抱えて、動きやすい服を着ていることが多い。


 だからなのか。


 浴衣姿の春子は、急に別の女の子のように見えた。


「徹?」


「……ん?」


「何?」


「何が?」


「さっきから見てるから」


「見てないよ」


「見てた」


 春子が少しだけ口元を緩める。


「浴衣、変かな?」


「いや」


 徹は一度視線を逸らした。


「似合ってるよ」


 言ってから、自分でも妙に恥ずかしくなる。


 春子も少しだけ目を丸くした。


「……ありがと」


 いつもなら、もっと何か返してくる。


 それなのに今日は、それだけだった。


 その短い返事が、逆に妙に残った。


(何やってるんだ、俺)


 中身は五十を過ぎたおじさんだ。


 それが中学二年の女の子の浴衣姿を見て、普通にドキッとしている。


 冷静になれ。


 そう思ったところで、さっき一瞬見とれた事実までは消えてくれなかった。


「こずえも似合ってるじゃん」


 達也が言う。


「……ありがと」


 こずえが恥ずかしそうに視線を落とす。


 春樹はというと、女子二人をまともに見られず、視線があちこちへ逃げていた。


「後藤くん」


 春子が声をかける。


「な、何?」


「今日は静かだね」


「ふ、普通だよ」


 徹と達也が同時に笑った。


「なんだよ」


「いや、分かりやすいなと思って」


「長浜くんまで言うなよ」


 五人で会場へ向かう。


 商店街を抜けると、祭りの灯りが見えてきた。


 屋台から焼きそばや焼きとうもろこしの匂いが漂い、人の声と祭囃子が入り混じっている。


「まず食べるぞ!」


 達也が真っ先に屋台へ向かった。


「まだ来たばっかりじゃん」


「来たから食うんだよ」


「意味分かんない」


 春子が笑いながら追いかける。


 こずえは綿菓子の屋台の前で足を止め、春樹は射的を見つけると少し興味を示した。


 気づけば徹も、自然とみんなに混じっていた。


 金魚すくいを覗き、かき氷を食べ、達也が射的で全く当てられないのを笑う。


「絶対あれ、銃が悪いって」


「さっき子どもが当ててたよ」


「こずえさん、それは言わないで」


 そんなことをしているうちに、花火の時間が近づいてきた。


 会場の奥へ進むにつれて、人の数が一気に増える。


「それにしてもすごい人だな」


 春樹が言う。


「はぐれそう」


 こずえが周囲を見回す。


「大丈夫だろ。固まって歩けば」


 達也がそう言った直後だった。


 前方で人の流れが急に詰まり、横から別の集団が入り込んできた。


「うわっ」


「ちょっと!」


 五人の間に人の壁ができる。


 徹は避けようと横へずれた。


 その時、浴衣の袖を誰かに掴まれた。


「徹」


 春子だった。


「こっち」


 二人で人の少ない方へ抜ける。


 ようやく立ち止まった時には、達也たちの姿は見えなくなっていた。


「……みんないないね」


 春子が背伸びをして周囲を見る。


「完全にはぐれたな」


「探す?」


 徹も辺りを見回した。


 その瞬間。


 ドン。


 腹に響くような音がして、夜空に最初の花火が開いた。


「あっ、始まった」


 春子が顔を上げる。


 赤い光が夜空いっぱいに広がり、遅れて歓声が上がった。


「どうする?」


「今から探すのも大変そうだね」


 春子は少し考えたあと、近くの空いている場所を指した。


「ここで見ない?」


「二人で?」


 思わず聞いてしまった。


 春子がこちらを見る。


「嫌なの?」


「いや、そういう意味じゃないよ」


「じゃあ決まり」


 春子はさっさと場所を取る。


 徹もその隣へ並んだ。


 次の花火が上がる。


 青。


 黄色。


 白。


 夜空に光が広がるたび、春子の横顔も明るく照らされた。


 さっきまで五人で騒いでいた時とは、空気が違う。


 会場には大勢の人がいる。


 なのに、妙に二人だけになったような感覚があった。


「きれいだね」


 春子が言う。


「うん」


「徹、こういうの久しぶり?」


「ちゃんと見るのは久しぶりかな」


「私も」


 それから少し会話が途切れた。


 花火の音だけが続く。


 春子の肩がすぐ近くにある。


 少し動けば触れそうな距離だった。


 そのことを意識した途端、徹は夜空へ視線を固定した。


(何意識してるんだよ)


 自分に言い聞かせる。


 その時だった。


「私、好きなんだ」


「……何が?」


 反射的に春子を見た。


 春子は答えない。


 ただ夜空を見上げている。


 数秒。


 それだけのはずなのに、妙に長かった。


 胸の奥で、心臓が大きく鳴る。


 ドン、と花火が開いた。


 その光に照らされながら、春子がようやく口を開く。


「……花火」


「は、花火か。お、俺も好きだよ」


 自分でも分かるくらい、声が上ずった。


 春子がゆっくりこちらを見る。


 その目が少し楽しそうに細くなる。


「今、ドキッとしたでしょ?」


「してない」


「したんだ」


「してないって」


「ふーん」


 春子はそれ以上追及せず、また花火へ視線を戻した。


 でも。


 口元が笑っている。


(……絶対わざとだろ)


 徹は小さく息を吐いた。


 しかし、春子に遊ばれたことよりも気になることがあった。


 自分は一瞬、何を期待したのか。


 春子が「好き」と言った瞬間。


 なぜ、自分のことだと思った?


 答えは出なかった。


 ただ、そのあと花火を見ていても、さっきより春子の存在が近く感じられた。


 やがて最後の大きな花火が夜空を埋め尽くした。


 歓声と拍手。


「終わっちゃったね」


 春子が少し残念そうに言う。


「みんなを探そうか」


「そうだね」


 二人で人の流れに乗って歩き始める。


 しばらくして、


「いた!」


 達也の声が聞こえた。


 向こうから達也、春樹、こずえが歩いてくる。


「お前ら、どこ行ってたんだよ!」


「人に流されて、あっち」


 徹が指差す。


 達也が徹と春子を交互に見た。


「……二人で?」


「はぐれたんだから仕方ないでしょ」


 春子は平然としている。


 春樹が少しだけ首を傾げる。


「怪しいですね」


「何が?」


「長浜くんと桐谷さんが二人きりで花火を見ていた。それ以上のことは言ってません」


「その言い方がもう怪しいんだよ」


 達也の顔がニヤッとする。


「で? 何かあった?」


「何もないよ」


 徹が即答する。


 すると春子が横から口を挟んだ。


「徹はドキッとはしてたけどね」


「春子!」


「えっ?」


 達也の目が輝いた。


「何それ! 詳しく!」


「やっぱり怪しいですね」


「後藤くんまで乗るなよ!」


 こずえだけは静かに徹たちを見ていた。


「……楽しそうでよかったね」


「こずえまで!」


 四人の笑い声が夜の道に広がる。


 徹はため息をつきながら、少し前を歩く春子の背中を見た。


『私、好きなんだ』


 また頭の中で、その言葉が流れる。


 花火。


 春子が好きだと言ったのは、花火だ。


 分かっている。


 それなのに。


(……俺は何を期待してるんだ?)


 答えはまだ、出そうになかった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


「私、好きなんだ」


春子、ちょっと仕掛けました。


そして見事に、


「は、花火か。お、俺も好きだよ」


と引っかかった徹。


中身は五十過ぎのおじさんのはずなのに、すっかり中学生男子になっています。


まだ徹自身も、春子への気持ちが何なのか分かっていません。


ただ、「好き」と言われた瞬間にドキッとして、ほんの少し期待してしまった。


それだけでも、二人の関係は以前とは少し違ってきたのかもしれません。


そしてせっかくの二人だけの時間も、最後は達也と春樹にしっかり嗅ぎつけられました。


徹が答えを見つけるのは、もう少し先になりそうです。


次回もよろしくお願いします。

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