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『死んだ俺が1977年に転生して、君へ繋がる人生をやり直す』  作者: れいじ


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第31話 希望の光

長い手術の時間。


 家族にできることは、ただ信じて待つことだけでした。


 願いを込めたお守り。


 交わした約束。


 それぞれの想いを胸に、徹たちは手術室の扉が開く瞬間を待ち続けます。


 そして、運命の時が訪れます。

 待合室には、重い沈黙が流れていた。


 時計の針は午後を回っている。


 手術が始まってから、すでに何時間が過ぎただろう。


 誰も正確な時間を気にしなくなっていた。


 泰造は腕を組んだまま動かない。


 優子は何度もハンカチで目元を押さえている。


 徹は手術室の赤いランプだけを見つめていた。


 葵は隣に座ったまま、静かに祈るように両手を組んでいる。


 その時だった。


 赤いランプが消えた。


 全員が一斉に立ち上がる。


 手術室の扉がゆっくりと開いた。


 最初に姿を見せたのは日下部明だった。


 帽子を外し、深く息を吐く。


 その表情を見ても、結果は読み取れない。


 泰造が一歩前へ出る。


「先生……」


 声が震えていた。


 日下部は静かに全員を見渡した。


「お待たせしました」


 その一言だけで、待合室はさらに静かになる。


 徹は自分の心臓の音しか聞こえなかった。


 そして日下部は、ゆっくりと口を開いた。


「手術は、無事に終了しました」


 一瞬、誰も動かなかった。


 言葉の意味を理解するまで、数秒かかった。


「成功……したんですか?」


 泰造が震える声で聞く。


 日下部は力強く頷いた。


「腫瘍は予定通り摘出できました」


 その瞬間だった。


 優子がその場にしゃがみ込み、声を上げて泣いた。


「よかった……」


「お母さん……」


 泰造は大きく息を吐き、両手で顔を覆う。


 肩が小さく震えていた。


 父が泣く姿を、徹は初めて見た。


 徹自身も足の力が抜け、その場の椅子へ腰を下ろした。


 助かった。


 その言葉だけが頭の中を何度も繰り返していた。


 その時、小さく肩を叩かれる。


 葵だった。


「ほら」


 にこっと笑う。


「言ったでしょ」


 徹は涙を拭きながら笑う。


「ああ」


「ありがとう」


 葵は少し照れくさそうに頭をかいた。


「まだ終わりじゃないよ」


 その言葉に、日下部も頷いた。


「その通りです」


 待合室の空気が少し引き締まる。


「手術は成功しました」


「ですが、安心するにはまだ早い」


 徹たちは日下部へ視線を向ける。


「麻酔はまだ覚めていません」


「脳への負担も大きかった」


「後遺症が残るかどうかは、目を覚ましてから確認することになります」


 再び静かな空気が流れた。


 助かった。


 でも、まだ終わっていない。


 由香里は今も、懸命に闘っている。


「今日は集中治療室で経過を見ます」


「短時間ならお会いできます」


 徹たちは案内され、集中治療室へ向かった。


 ガラス越しに見えた由香里は、静かに眠っていた。


 口には呼吸を助ける管。


 腕には点滴。


 いくつもの機械につながれている。


 眠っているだけ。


 そう分かっていても、その姿を見るのは辛かった。


「母さん……」


 徹は小さく呟く。


 返事はない。


 規則正しい電子音だけが静かに響いている。


 優子はまた涙を流していた。


 泰造はガラスへ手を添える。


「よく頑張ったな」


 その声は、誰よりも優しかった。


 その時だった。


「あっ」


 葵が小さく声を上げた。


 みんなが振り向く。


 葵は由香里の胸元を見つめていた。


 そこには、小さなお守りが見えていた。


 昨日、徹から渡されたものだった。


 由香里は手術室へ入る直前まで、それを胸元へしまっていた。


 葵は少しだけ目を細め、安心したように笑う。


「ちゃんと持っててくれたんだ」


 その一言に、徹も胸が熱くなる。


 母さんは、お守りをずっと持っていてくれた。


 神様を信じたのか。


 葵の気持ちを信じたのか。


 それとも、その両方だったのか。


 答えは分からない。


 でも、その小さなお守りは、確かに由香里と一緒に手術室へ入った。


 葵はガラス越しに小さく手を振る。


「おばさん」


「約束だからね」


「ちゃんと元気になって、お守り返してね」


 その言葉は眠る由香里には届かなかったかもしれない。


 それでも、誰も止めなかった。


 しばらくして面会時間が終わり、徹たちは病室の外へ出た。


 廊下を歩きながら、徹は深く息を吐く。


 長かった。


 本当に長い一日だった。


「徹くん」


 葵が隣へ並ぶ。


「今日は少し安心していい日だよ」


 徹は頷く。


「そうだな」


「でも、母さんが目を覚ますまでは安心しきれない」


「うん」


 葵も静かに頷いた。


 夕暮れの光が病院の窓から差し込む。


 その光は、朝よりも少しだけ暖かく見えた。


 希望は繋がった。


 あとは、由香里がもう一度目を開けるだけ。


 徹はそう信じて、静かに病院の空を見上げた。

第31話を読んでいただきありがとうございます。


 今回は、由香里の手術結果を描きました。


 長い時間をかけて積み重ねてきた由香里編の、大きな山場の一つです。


 手術は無事に成功しましたが、本当の意味で安心できるのは、由香里が目を覚ましてからです。


 また、葵が贈ったお守りを由香里が手術中も大切に身につけていたことは、小さな場面ですが、想いの繋がりを感じられるシーンとして描きました。


 次回はいよいよ、由香里が目を覚ます時。


 長浜家にとって、本当の意味で希望の朝が訪れることを願いながら書いていきます。


 次回もよろしくお願いいたします。

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