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『死んだ俺が1977年に転生して、君へ繋がる人生をやり直す』  作者: れいじ


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第22話 絵の中の少女

由香里の病気という重い現実の中で、少しずつ繋がり始める不思議な出来事。


 石丸家の蔵にあった少女の絵。


 恒一が何度も描いていた少女。


 そして由香里の夢に現れる少女。


 偶然では片付けられない何かが、少しずつ姿を見せ始めます。


 今回は物語の大きな転機となる出会いの回です。


由香里の病気が分かってから、長浜家の日常は大きく変わっていた。


学校が終われば病院へ向かう。


家に帰れば病気のことを考える。


成功率一割。


その数字は今も頭から離れない。


それでも由香里は笑っていた。


病室へ行けばいつも通りの母だった。


だから余計に辛かった。


本当に重い病気を抱えているようには見えないのだ。


その日も病院へ顔を出していた。


病室には由香里と石丸のおじいちゃんがいた。


おじいちゃんはすっかり元気になっている。


退院してまだ日も浅いはずだが、相変わらず声は大きかった。


「徹か」


「こんにちは」


「学校はどうじゃ」


「普通」


「つまらん返事じゃな」


そんなやり取りをしているうちに、ふと思い出した。


石丸家の蔵のこと。


あの少女の絵だ。


恒一の描く少女とよく似ていた。


そしてこの間、由香里から聞いた夢に出てくる少女というのも引っかかる。


「そういえば、おじいちゃん」


「なんじゃ」


「蔵にあった女の子の絵、まだある?」


おじいちゃんは少し驚いた顔をした。


「急じゃな」


「ちょっと気になって」


「あると思うぞ」


「見せてもらえない?」


おじいちゃんは少し考えた。


「そんなもんでいいなら構わんが」


「本当?」


「今度持ってきてやる」


由香里が苦笑する。


「無理しないでよ」


「わしは元気じゃ」


「退院したばかりでしょう」


「大丈夫じゃ」


そう言って笑っていた。


その時は、それで話が終わった。


だが俺の中では妙に引っかかっていた。


あの少女は何者なのだろう。


なぜ恒一は何度も描いていたのか。


なぜ由香里は夢で見るのか。


偶然だけでは説明できない気がしていた。


数日後。


学校が終わり病院へ向かう。


病室へ入ると、おじいちゃんも来ていた。


そして壁際には大きな額縁が置かれている。


「持ってきたぞ」


おじいちゃんが得意げに言った。


「ありがとう」


俺は思わず近寄った。


由香里も興味深そうに見ている。


額縁の布を外す。


そこには少女が描かれていた。


長い黒髪。


優しそうな目。


どこか儚げな雰囲気。


昔見た時と同じだ。


いや。


今見ると以前より気になる。


「綺麗な子ね」


由香里が呟く。


「誰なの?」


「分からん」


おじいちゃんが肩をすくめる。


「わしが子供の頃からあったものじゃ」


「誰を描いたのかも伝わっとらん」


不思議な話だった。


その時だった。


俺は鞄を開いた。


実は今日、別の絵も持ってきていた。


恒一からもらった絵だ。


もしかしたらと思ったからだ。


「実は見てほしいものがある」


俺はファイルを取り出した。


中から数枚の絵を出す。


恒一が描いた少女。


何度も何度も描いていた少女。


テーブルへ並べる。


病室が静かになった。


由香里。


おじいちゃん。


そして俺。


三人とも絵を見比べる。


数秒。


誰も喋らない。


最初に口を開いたのは由香里だった。


「似てる……」


おじいちゃんも頷く。


「似とるな」


似ている。


いや。


同じ人にしか見えない。


年齢は違う。


服も違う。


描き方も違う。


それなのに。


目元。


表情。


雰囲気。


全部が同じだった。


俺は背筋が少し寒くなる。


「やっぱりそう思う?」


由香里は頷いた。


「うん」


そして恒一の絵を一枚手に取る。


少女が歌っている絵だった。


マイクもない。


舞台もない。


それでも歌っていることだけは分かる。


由香里の表情が変わった。


「この子よ」


「え?」


「夢に出てきた子」


病室が静まり返る。


「本当に?」


「うん」


由香里は絵を見つめたまま言う。


「何回も出てくるの」


「楽しそうに歌ってるのよ」


俺は息を呑んだ。


恒一の絵も歌っている。


偶然とは思えなかった。


おじいちゃんも黙り込んでいる。


しばらくして。


「ああ」


突然声を出した。


「そういえば」


俺たちはおじいちゃんを見る。


「兄貴の孫がな」


「今度、歌手になるらしいぞ」


「歌手?」


思わず聞き返す。


「そうじゃ」


「今年デビューするそうじゃ」


由香里も驚いている。


「へえ」


「会ったことはないんだが」


おじいちゃんが言う。


「名前は?」


俺が聞く。


「たしか、如月葵じゃったかの」


その名前を聞いた瞬間だった。


胸がざわつく。


如月。


どこかで聞いた名前。


記憶を探る。


そして思い出した。


レイナ。


未来で活躍するレイナ。


芸名は確か。


如月レイナ。


偶然なのか。


それとも。


「会えないかな」


気づけば口に出していた。


おじいちゃんが笑う。


「気になるのか」


「うん」


「この絵の子と関係ある気がするんだ」


おじいちゃんは少し考えた。


「分かった」


「兄貴に聞いてみる」


その日はそれで終わった。


だが俺は落ち着かなかった。


夢の少女。


蔵の少女。


恒一の描く少女。


そして如月葵。


何かが繋がろうとしている。


そんな気がした。


それから一週間ほどが過ぎた。


病院へ行くと、おじいちゃんが先に来ていた。


俺を見るなり手を振る。


「徹」


「どうした?」


「会ってくれるそうじゃぞ」


思わず立ち止まる。


「本当に?」


「うむ」


「今度東京へ来るらしい」


「少しだけ時間を作ってくれるそうじゃ」


由香里も笑った。


「よかったじゃない」


俺は頷く。


楽しみだった。


でも少し怖かった。


もし本当に同じ顔だったら。


今までの偶然が全部繋がってしまう。


そんな気がした。


そして当日。


待ち合わせは病院近くの喫茶店だった。


俺は少し早めに着いていた。


落ち着かない。


コーヒーの匂い。


静かな店内。


時計の針の音。


全部がやけに大きく聞こえる。


本当に来るのだろうか。


そんなことを考えていると。


店の扉が開いた。


俺は顔を上げる。


そして息を呑んだ。


少女が立っていた。


長い黒髪。


透き通るような肌。


どこか儚げな雰囲気。


まだ十五歳。


絵より少し幼い。


それでも。


分かった。


蔵の少女だった。


恒一の絵だった。


由香里の夢だった。


全部そこにいた。


少女もこちらを見る。


そして足を止めた。


驚いたような顔になる。


まるで向こうも何かを感じたように。


「……あれ?」


小さく呟く。


俺の心臓が大きく鳴る。


少女は少し困ったように笑った。


「ごめんなさい」


「初めて会うはずなのに」


「なんだか初めてな気がしなくて」


俺も同じだった。


理由は分からない。


でも同じだった。


「俺もです」


そう答えるのが精一杯だった。


少女は微笑む。


そして軽く頭を下げた。


「はじめまして」


「如月葵です」


その瞬間。


俺は確信した。


この出会いは偶然じゃない。


きっと。


ここから何かが始まるのだと。


第22話を読んでいただきありがとうございます。


 ついに登場した如月葵。


 絵の少女、夢の少女と同じ姿を持つ不思議な少女です。


 まだ徹も葵も、自分たちがどんな運命で結ばれているのか知りません。


 ですが、この出会いが長浜徹の人生を大きく変えていくことになります。


 そして由香里の病気にも、少しずつ希望の光が見え始めるかもしれません。


 次回は如月葵との会話を通して、さらに物語の核心へ近づいていきます。


 引き続き応援よろしくお願いいたします。

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