表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『死んだ俺が1977年に転生して、君へ繋がる人生をやり直す』  作者: れいじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/28

第20話 胸騒ぎの正体

未来を知っている。


 それは万能ではない。


 むしろ知っているからこそ、怖くなることもある。


 変わらないと思っていたものが変わり。


 変わってほしくないものが変わる。


 それが未来なら。


 俺は何を信じればいいのだろう。

長かった夏休みも終わり、新学期が始まった。


 久しぶりの教室は、相変わらず騒がしかった。


 夏休み中も部活では顔を合わせていたが、クラスメイトたちと会うのは久しぶりだ。


「長浜!」


 後ろから声が飛んでくる。


 振り返ると春子だった。


 教室が違うのに、わざわざ来たらしい。


「生きてた?」


「どういう確認だ」


「宿題終わってないとか」


「終わってる」


「つまんない」


「なんでだ」


 春子は笑う。


 相変わらずだった。


 達也も廊下から顔を出す。


「桐谷ー、先生来るぞー」


「やば」


 そう言って慌てて戻っていく。


 その後ろ姿を見ながら、少しだけ笑ってしまった。


 平和だった。


 だからこそ。


 その日の夕方の電話は、少し意外だった。



「由香里さんいますか?」


 電話の向こうで、少し慌てた声が聞こえた。


 母が受話器を取る。


「えっ?」


 表情が変わる。


「そうですか……」


 数分後。


 由香里が俺たち家族へ話した。


「石丸のおじいちゃんが倒れたの」


 一瞬、空気が止まった。


「大丈夫なの?」


 優子が聞く。


「命に別状はないみたい」


 由香里は少し安心したように言った。


「今入院してるって」


 俺は黙っていた。


 石丸家。


 その名前を聞くだけで胸がざわつく。


 脳の病気。


 不思議な能力。


 競馬場で感じた違和感。


 全部が繋がっているような気がしていた。



 数日後。


 休日。


 俺は由香里と一緒に病院へ向かった。


 病室へ入る。


 石丸のおじいちゃんは思っていたより元気そうだった。


「おお、徹か」


「こんにちは」


「大げさなんだよ病院の連中は」


 そう言いながら笑っている。


 顔色も悪くない。


 由香里もほっとしていた。


「本当に大丈夫なの?」


「大丈夫だ」


 おじいちゃんは頷く。


「脳じゃない」


 その言葉に俺は反応した。


 おじいちゃんがこちらを見る。


 そして少しだけ笑った。


「気にしてるな」


「何を?」


「石丸の話だ」


 図星だった。


 俺は黙る。


 おじいちゃんは少し窓の外を見る。


「確かにな」


「昔からいるんだ」


「頭の病気になる人間が」


 病室が静かになる。


「でも全員じゃない」


「ほんの一部の者だ」


「それに妙な力を持つ人間もな」


 競馬場。


 三連続的中。


 あの感覚。


 頭に浮かぶ。


「本当なの?」


 思わず聞いていた。


 おじいちゃんは笑った。


「信じるかは自由だ」


「ただな」


「説明できないことはある」


 それ以上は言わなかった。



 病室を出ると、親戚たちが集まっていた。


 石丸家。


 長浜家。


 そして。


 黒沢家。


 恒一も来ていた。


「おう」


 恒一が手を上げる。


「久しぶりだな」


「夏休み終わったばっかだろ」


「確かに」


 二人で笑う。


 だが。


 その後ろに立っている人を見た瞬間、俺は少し言葉を失った。


 恒一の父だった。


 黒沢弘明。


 無口で厳しくて。


 あまり子供に干渉しない人。


 恒一だった頃の父親。


 未来の俺は知っている。


 この人はあと十六年後。


 病気で亡くなる。


 まだ若い。


 まだ元気だ。


 なのに。


 未来を知っているせいで、その姿が妙に切なく見えた。


「どうした?」


 恒一が聞く。


「いや」


「なんでもない」


 そう答えるしかなかった。


 正直なところ。


 恒一だった頃の父との思い出は、そこまで多くない。


 仲が悪かったわけじゃない。


 でも特別仲が良かったわけでもなかった。


 今思うと。


 もっと話しておけばよかったのかもしれない。


 そんなことを考えていた。



 ふと疑問が浮かぶ。


 俺は前の人生で。


 このお見舞いに来ただろうか。


 記憶を探る。


 思い出せない。


 忘れているだけなのか。


 それとも。


 来ていないのか。


 もし来ていないなら。


 それだけでも未来は変わっていることになる。


 そして何より。


 恒一が違う。


 前の人生の恒一とは明らかに違う。


 幼稚園。


 小学校。


 中学校。


 俺が関わったことで、少しずつ変わっている。


 未来は固定されていない。


 そう考える方が自然だった。


「徹」


 恒一が言う。


「今度さ」


「ん?」


「また部活見に行っていい?」


「別にいいぞ」


「よし」


 嬉しそうだった。


 やっぱり前の人生とは違う。


 そう思った。



 帰り道。


 由香里も少し安心した様子だった。


「元気そうでよかった」


「そうだな」


「びっくりしたわ」


 笑顔だった。


 いつもの母だった。



 その日の夕食も普通だった。


 泰造は仕事の話。


 優子は友達の話。


 由香里は笑っている。


 何も変わらない。


 いつもの長浜家。


 それなのに。


 夜になってからだった。


 妙な胸騒ぎがした。


 理由は分からない。


 競馬場で感じた違和感に似ている。


 でももっと嫌だった。


 もっと重い。


 胸の奥がざわざわする。


「……なんだ」


 天井を見つめる。


 眠れない。


 嫌な予感だけが膨らんでいく。


 結局、その日は寝付くのに時間がかかった。



 翌日。


 由香里は普通だった。


 朝食も作っていた。


 元気そうだった。


 気のせいか。


 そう思った。



 二日後。


 やはり普通だった。


 俺は安心し始めていた。


 胸騒ぎなんて、ただの思い込みだと。



 三日後。


 授業中だった。


 数学の時間。


 先生が教室へ入ってくる。


 だが様子がおかしい。


「長浜」


 名前を呼ばれた。


「はい」


「職員室へ来なさい」


 教室がざわつく。


 俺の心臓が嫌な音を立てた。


 あの胸騒ぎ。


 あれだ。


 職員室へ向かう。


 足が重い。


 先生は何も言わない。


 職員室へ入る。


 そこにいたのは。


 泰造だった。


 顔色が悪い。


 見たことがないほど。


「父さん……?」


 泰造は数秒黙った。


 そして言った。


「母さんが倒れた」


 世界が止まる。


「病院へ行くぞ」


 俺は何も言えなかった。


 病院。


 検査。


 説明。


 頭の中が真っ白になる。


 ただ一つだけ。


 聞こえてきた言葉があった。


「脳腫瘍です」


 その瞬間。


 俺は理解した。


 あの胸騒ぎの正体を。

第20話を読んでいただきありがとうございます。


 今回は石丸家の話と、徹が感じる未来の変化を中心に描きました。


 そして物語は大きく動きます。


 由香里の脳腫瘍。


 未来を知る徹が、初めて本当の意味で向き合う試練になるかもしれません。


 次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ