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『死んだ俺が1977年に転生して、君へ繋がる人生をやり直す』  作者: れいじ


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19/28

■第19話 夏の帰り道

夏祭りが終わり、DIGITAL FANTASYは次の目標を探しながら活動を続けています。


 未来を知る男、長浜徹。


 ですが今回は競馬でも未来知識でもありません。


 ただの中学生らしい夏休みのお話です。


 本人は気付いていませんが、少しずつ青春の足音が近づいているのかもしれません。


夏休みも後半に入っていた。


DIGITAL FANTASYは相変わらず活動を続けている。


夏祭りが終わった時は、正直そこで一区切りだと思っていた。


目標がなくなれば自然と集まらなくなる。


そんなものだろうと。


だが予想は外れた。


気づけば俺たちは毎日のように学校へ集まり、音を合わせていた。


夏休み中の部活は自由参加だ。


来ても来なくてもいい。


それなのに四人ともほとんど休まない。


不思議なものだった。


校門をくぐりながら、俺はそんなことを考えていた。


「長浜!」


後ろから声が飛んでくる。


振り返ると春子だった。


ギターケースを背負いながら走ってくる。


「おはよう」


「おはようじゃない」


「なんだよ」


「今何時だと思ってんの」


「九時五分」


「集合九時」


「五分しか遅れてないし」


「五分も遅れてる」


朝から元気だった。


夏休みだというのに。


俺なんて前世だったら絶対寝ている。


「あれ達也は?」


「もう来てる」


「珍しい」


「今日は三分前に来てた」


「熱でもあるのか」


「私もそう思った」


二人で笑いながら部室へ向かう。


扉を開ける。


すると達也がドラムを組み立てていた。


「おう遅刻魔」


「誰がだ」


「長浜だろ」


「五分だぞ」


「社会人ならアウトだぜ」


「お前中学生だろ」


「確かに」


達也はあっさり認めた。


その横では、こずえがベースを調整している。


以前なら挨拶も小さかったのに、最近は違う。


「おはよう」


「おはよう」


小さな声だったが、ちゃんと返ってきた。


夏祭り以降、こずえは少し変わった。


自信がついたのだろう。


春子がこずえの肩を叩く。


「こずえ、おはよー」


「顔近い」


「ひどい」


「暑い」


「さらにひどい」


部室が少し笑いに包まれる。


こういう時間が増えた。


前世の俺なら信じられなかったかもしれない。


友達と笑う。


ただそれだけのことが、こんなに楽しいなんて。


「よし」


春子がギターを持つ。


「今日は未完成のメロディを完成させる」


「名前負けしてるな」


達也が言う。


「タイトル未完成のメロディなのに曲も未完成」


「深い」


「深くない」


こずえが呟く。


達也が吹き出した。


「こずえ、それ面白い」


「別に面白くない」


「いや面白い」


「違う」


「今のは面白い」


「うるさい」


真っ赤になっている。


最近分かったことがある。


こずえは無口なだけで、結構面白い。


本人に自覚がないだけだった。


練習は昼過ぎまで続いた。


途中で春子と口論になったり、達也がリズムを間違えたり、こずえが冷静に修正したり。


それでも少しずつ曲は形になっていく。


夏祭りの頃より、確実に上手くなっていた。


音がまとまってきている。


俺たち自身も。


「今日はこんなもんか」


達也が言う。


「俺午後から友達と遊ぶから」


「彼女?」


春子が聞く。


「違う」


「怪しいな」


「男だ」


「さらに怪しい」


「なんでだよ」


達也が騒いでいる横で、こずえも帰る準備を始めた。


「じゃあまた明日」


「うん」


「またね」


二人が帰っていく。


部室に残ったのは俺と春子だけだった。


静かになる。


少しだけ変な感じだった。


「ねえ」


春子が言う。


「なんだ」


「このあと暇?」


「暇だけど」


「楽器屋行こうよ」


即答だった。


やっぱりなと思った。


春子らしい。


「行くの決定なのか」


「決定」


「俺に拒否権は」


「ない」


「そうか」


「そうだ」


結局二人で学校を出ることになった。


夏の午後。


空は青く、蝉の声が響いている。


「ねえ長浜」


「なんだ」


「夏祭り終わったあとさ」


「うん」


「なんか寂しくなかった?」


俺は少し考えた。


「たしかに」


「やっぱり?」


春子が嬉しそうな顔をする。


「毎日あれのために練習してたじゃん」


「まあな」


「終わった瞬間、あれ?ってなった」


「燃え尽き症候群だ」


「また出た」


「何が」


「おじさんワード」


「普通だろ」


「中一は使わない」


「そうなのか」


「そうなの」


春子が笑う。


「長浜ってさ」


「なんだ」


「最初めっちゃ怖かったんだよ」


「は?」


「絶対友達いないと思ってた」


「余計なお世話だ」


「なんか話しかけるなオーラ出てたし」


「出してないから」


「出てたの」


断言された。


ひどい。


「でも今は違う」


春子が言う。


「そうか?」


「うん」


「どう違う」


「意外と普通」


「意外とってなんだ」


「たまに変だけど」


「どっちだ」


二人で笑う。


不思議だった。


春子と話していると時間があっという間に過ぎる。


楽器屋へ入る。


春子の目が一瞬で輝いた。


「うわぁ……」


本当に好きなんだなと思う。


ギターが。


音楽が。


一本一本見ている。


宝物を見るみたいに。


「見てこれ」


「まだ入って数秒だぞ」


「いいから」


値札を見る。


八万九千円。


「高い」


「高い」


「中学生に売る値段じゃないって」


「だから見てるだけ」


春子は笑う。


「いつか欲しいな」


少しだけ真面目な声だった。


夢を見る顔だった。


その横顔を見ながら思う。


綺麗だな。


自然に。


本当に自然に。


そして自分で焦る。


まただ。


最近おかしい。


春子のことを考える時間が増えている。


目で追ってしまう。


笑うと嬉しい。


落ち込んでいると気になる。


これはまずい。


いや、何がまずいんだ。


十三歳の男なら普通だ。


問題は俺の中身が五十過ぎだということだ。


でも最近は分からなくなってきた。


本当に俺は五十歳なのか。


それとも十三歳の長浜徹なのか。


どちらなのだろう。


「長浜?」


春子が顔を覗き込む。


「どうした?」


「いや」


「また変なこと考えてた?」


「考えてない」


「嘘だ」


鋭かった。


妙なところで。


店を出る頃には夕方になっていた。


別れ道が近づく。


春子が立ち止まる。


「なあ長浜」


「ん?」


「DIGITAL FANTASY作ってよかったな」


「そうだな」


「最初は絶対続かないと思ってた」


「ひどいな」


「だって長浜友達いなそうだったし」


「まだ言うか」


「達也はうるさいし」


「それはそう」


「こずえは喋らないし」


「それもそう」


春子が笑う。


そして少しだけ照れたような顔になった。


「でも今は好きだよ」


俺の思考が止まった。


「……は?」


春子がきょとんとする。


数秒後。


吹き出した。


「何その顔!」


「いや」


「勘違いしたでしょ?」


「してない」


「したな」


「してない」


「したなー」


完全に面白がっている。


「バンドの話だから」


「分かってる」


「絶対分かってない」


春子はしばらく笑っていた。


そして手を振る。


「また明日!」


走っていく。


俺はしばらくその背中を見ていた。


胸の奥が少しだけうるさい。


家に帰る。


机に向かう。


参考書を開く。


英語。


全然頭に入らない。


数学。


もっと入らない。


原因は分かっている。


春子だった。


ギターを見ていた顔。


笑った顔。


最後の言葉。


俺は天井を見上げた。


そして小さく呟く。


「……これ、まずいな」


恋なのかどうかは分からない。


でも。


春子と一緒にいる時間が好きなのは確かだった。


未来を変えるための人生だったはずなのに。


今は放課後でもない、夏休みの部活帰りのことばかり考えている。


人生というのは。


二度目でも予定通りにはいかないらしい。

第19話を読んでいただきありがとうございます。


 今回は大きな事件はありませんでしたが、徹と春子の距離が少し近づいた回でした。


 未来を変えるために生きている徹ですが、気付けばバンドや仲間たちとの時間を心から楽しむようになっています。


 そして春子の存在も、少しずつ特別なものになり始めているようです。


 次回は夏休みも終盤。


 DIGITAL FANTASYの新たな目標や、徹の将来に関わる出来事も描いていければと思います。


 引き続き応援よろしくお願いします。

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