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召喚された脳みそ  作者: 花束 ねる


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21/31

第21話 改善対象は局長本人です



「局長、先日の見学内容を整理しました」

『おお。早いね』

「はい」

『何があった?』

「食事、睡眠、入浴、外出、温度管理、植物型身体の維持です」

『……結構あるね』

「はい」

『じゃあ、順番に確認しよう』


クルトは記録板を開いた。


「第一項目。食事」

『うん』

「現在、局長に食事は必要ありません」

『……そうだね』

「口、食道、胃などの器官が存在しません」

『……うん』

「経口摂取は不可能です」

『……わかってる』


「第二項目。睡眠」

『うん』

「現在の状態では、通常の睡眠を必要としていません」

『そうだね』

「睡眠時間の確保は不要です」

『……便利だよね』

「はい」


「第三項目。入浴」

『……お風呂か』

「はい」

『入れないよね』

「入浴する身体がありません」

『……そうだね』

「容器の管理は、担当者が実施しています」

『うん』

「局長ご本人による作業は不要です」

『……うん』


クルトは次の項目に移った。


「第四項目。外出」

『これは検討中だね』

「はい。運搬計画を作成しています」

『うん』


「第五項目。温度管理」

『うん』

「現在の管理方法で問題は確認されていません」

『そうなんだ』

「はい」


「第六項目。植物型身体の維持」

『これは研究中だね』

「はい。歩行中の水分補給について、追加検討します」

『ルーチェちゃんの案?』

「はい」

『……本当に採用するんだ』

「合理性があります」

『……そうだね』


クルトは記録板を閉じた。


「以上です」

『……終わり?』

「はい」

『……そっか』


食事は不要。

睡眠も不要。

入浴も不要。


外出だけが、検討事項として残った。


『……クルト』

「はい」

『私って、生活するのに何が必要なんだろう』

「現在の状態を維持するための管理です」

『……それだけ?』

「はい」

『……そうなんだ』


ルメは少し考えた。


『……じゃあ、私が何もしなくても大丈夫なんだね』

「生命維持という意味では、その通りです」

『……仕事もしなくても?』

「生命維持には影響しません」

『……そうなんだ』


仕事は、できる。


むしろ、仕事をするためには都合がいい。


食事の時間を取る必要もない。

眠るために仕事を中断する必要もない。

身体が疲れることもない。


『……クルト』

「はい」

『私、ずいぶん効率のいい身体だね』

「身体はありません」

『……そうだった』


少し間が空いた。


『……何か欲しいものって、あったかな』

「これまで、特にご要望はありませんでした」

『……そうだよね』

「現在、何かご希望がありますか?」

『……それを考えてるんだ』


クルトは返答を待った。


ルメは考えた。


おなかがすかない。

眠くならない。

寒さも暑さも、管理された容器の中では問題にならない。


困らない。


だから、何かを変えてほしいとも思わなかった。


『……クルト』

「はい」

『不便がないって、便利なことだよね』

「はい」

『でもさ』

「はい」

『不便を感じないのと、不便がないのって、同じなのかな』

「……異なります」

『そうだよね』


クルトは記録板を開いた。


「局長、改善項目を追加しますか?」

『……何を?』

「本人の要望を確認する機会です」

『……私の?』

「はい」

『それ、今までなかったんだ』

「定期的な確認は実施していませんでした」

『……そっか』


ルメは少し考えた。


『じゃあ、それも追加しよう』

「承知しました」

『ほかの人にも、同じことがあるかもしれないしね』

「行政改革局の調査対象としますか?」

『……まずは私からかな』

「承知しました」


クルトは記録板に書き込んだ。


「本人の希望を定期的に確認する」

『……それだけ?』

「はい」

『……ずいぶん簡単だね』

「実施するだけなら、難しくありません」

『……今までやってなかったけどね』

「はい」


ルメは少し考えた。


『……ところで、クルト』

「はい」

『これ、誰が改善を提案したことになるの?』

「娘です」

『……やっぱり?』

「はい」

『行政改革局長なのに、七歳の子に改善されちゃったね』

「はい」


クルトは記録板を確認した。


「なお、改善対象も局長です」

『……そこは言わなくていいよ』





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