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召喚された脳みそ  作者: 花束 ねる


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12/32

第12話 設置準備は順調です



庭園管理部門から、回答が届いた。


「局長、鉢植えの管理について回答がありました」

『ロアンさんから?』

「はい」

『どうだった?』

「引き受けていただけるそうです」

『よかった』

「ただし、毎日の管理は難しいとのことです」

『……そうだよね』

「必要に応じて、こちらで水やりを行うことになります」

『クルト、できる?』

「作業方法を教えていただければ可能です」

『ありがとう』

「ただし、通常業務の合間になります」

『もちろん』


ルメは少し安心した。


これで鉢植えを置ける。


自分では水やりもできないが、世話をしてくれる人がいる。


それだけで十分だった。


「では、設置の準備を進めます」

『お願いします』


クルトは記録板を確認した。


「まず、鉢の大きさを決める必要があります」

『普通のでいいよ』

「普通、とは?」

『……ケイトウが育つくらい』

「承知しました。ロアンに適切な大きさを確認します」

『うん』

「次に、土壌です」

『うん』

「こちらも庭園管理部門に準備を依頼します」

『うん』

「栽培する久留米ケイトウについては、苗と種子のどちらを希望されますか?」

『……苗がいいかな』

「理由は?」

『早く花が見られるから』

「承知しました」


クルトは記録板に書き込んだ。


「鉢、土壌、久留米ケイトウの苗。それぞれ調達を依頼します」

『うん』


ルメは考えた。


鉢が届く。


土が入る。


ケイトウが植えられる。


局長室に、植物が一つ増える。


たったそれだけのことが、少し楽しみだった。


「局長」

『何?』

「設置場所はどちらにしますか?」

『……私の近く』

「生命維持装置の近くですね」

『うん』

「日照条件を確認する必要があります」

『……日が当たらないとダメだもんね』

「はい」

『じゃあ、窓の近く』

「窓際ですね」

『うん』

「局長の生命維持装置からは離れますが」

『…………』


ルメは考えた。


近くに置きたい。


だが、ケイトウには日光が必要だった。


自分が植物の身体だったときも、日差しは大切だった。


『……ケイトウが育つ場所にして』

「承知しました」


クルトは記録板に書き込んだ。


「設置場所、窓際。日照条件を優先」

『うん』


しばらくして、庭園管理部門から追加の連絡があった。


「局長、ロアンから確認事項です」

『何?』

「鉢の色に希望はあるか、とのことです」

『……色?』

「はい」

『何色があるの?』

「確認します」

『……いや、ロアンさんに任せる』

「承知しました」


クルトは記録板に書き込んだ。


「鉢の色、庭師に一任」

『うん』


さらに連絡があった。


「局長、土壌についてです」

『うん』

「庭園で使用しているものを分けていただけるそうです」

『よかった』

「ただし、局長室までの運搬方法を確認する必要があります」

『……持ってきてもらえない?』

「庭園管理部門に確認します」

『お願い』


クルトは記録板に書き込んだ。


「土壌の運搬、庭園管理部門に確認中」

『うん』


その後も、連絡は続いた。


鉢の大きさ。


土の量。


苗の入手時期。


設置場所。


水やりの方法。


クルトは一つずつ確認し、記録していった。


『……クルト』

「はい」

『鉢植え一つって、こんなに決めることあるんだね』

「必要な準備を整理しています」

『……そうだね』


ルメは少し考えた。


庭園にいたときは、土があった。


水があった。


日差しがあった。


ロアンが世話をしてくれた。


そのすべてが、最初からそこにあるように感じていた。


だが、実際には誰かが準備していたのだ。


『……ロアンさんって、すごいね』

「庭園管理の専門職ですので」

『うん』


数日後。


ロアンが局長室を訪れた。


「ルメ、鉢植えの話だが」

『はい』

「クルトからいろいろ聞かれたぞ」

『……すみません』

「鉢の大きさから土の量まで、ずいぶん細かくな」

『……はい』


ロアンは机の上に置かれた書類を見た。


「……何だ、この量は」

「鉢植え設置に関する確認記録です」

「鉢植え一つに?」

「はい」


ロアンは書類を一枚手に取った。


「鉢の色まで書いてあるぞ」

「庭師に一任することが決定しています」

「……そんな大げさな話だったか?」

「その旨を記録しました」


ロアンはしばらく黙った。


「……で、鉢はどこだ?」

『……まだありません』

「土は?」

『……まだです』

「ケイトウは?」

『……これからです』


ロアンは黙った。


「……ルメ」

『はい』

「お前ら、何を育ててるんだ?」

『…………』


クルトが答えた。


「現在、設置準備を進めています」


ロアンは書類の束を見た。


「……書類はよく育ってるな」





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