↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/47

第2章 34話 束の間の休息

グレートランド歴1772年11月1日 17:00


ジョルカは、剣にマナを宿す鍛錬をしていた。


"弐式"の鍛錬を始めた頃には、腕にマナを集中させる事しか出来なかったが、今や剣に宿す事は訳なく出来ている。ただその時間が、まだ今は10分程度だという事だ。


ジグル曰く、最終決戦は長丁場になるだろうから、せめて3時間、いや5時間はマナを剣に宿す持続時間を伸ばせとの事であった。


一方イルブは、その頃、また本を読んでいた。そしてまた、何かを閃いた顔をしている。


「ジグルさん、この辺りに水源はありますか?」


とイルブはジグルに聞いた。


「水なら、少し離れたトコに池があるが、どうかしたのか?」


という答えに、


「すこし試したい事があります」


とイルブは笑顔を作った。


イルブが鍛錬に復帰して以来、こういったやり取りが何度かあった。それをジョルカやジグルが「何してんだ?」とか「何企んでるんだ?」と聞いても、イルブは「内緒です」と悪戯っぽく笑うだけだった。


そしてイルブが、


「ちょっと池に行ってきます」


と行こうとした時、


「イルブ、ちょっと待て、今日は、ここまでだ」


とイルブを制した。イルブは虚を突かれた顔になり、


「ジグルさん、まだ17:00ですよ?」


とジグルに聞き直す。


「親方、へばったのか?」


とジョルカも茶化した。


「俺が、この程度でへばるかよ」


とジョルカに返事をし、


「2人は、よくやってる。だがもう1ヶ月以上も鍛錬漬けだ。もう既にオーバーワークだが、これからは、2週間に1度ぐらいは休みを取り、心身のリラックスを図る」


「大丈夫なのか?間に合うのか?」


とジョルカは心配そうにジグルに聞いた。イルブもジョルカと同じ表情をしている。


「大丈夫といいたいところだが、それは分からねぇ。ただこのまま鍛錬漬けの日々を続けるより、偶に休んで、家族と会うなりして時間を使え。まぁ俺もたまには休みたいってのもある」


と言ってジグルは場を和ませ、2人が遠慮せず休暇を取れるように取り計らった。


2人は、ジグルの言葉に甘え、


「じゃー俺、久しぶりに家に帰るよ」


とジョルカが言った。


「じゃー僕も帰ろうかな」


と言った時、


「イルブ、よかったら、今日、俺んちに来ないか?」


とジョルカがイルブを誘った。


「えっ、いいんですか?」


とイルブが聞く。


「急に家に帰る事になったから、飯もいいもの出ないかもしれねぇけど、偶には一緒に遊ぼうぜ」


と言うと、


(また、ソラちゃんに会えるかな?)


とイルブは期待をし、


「じゃーお言葉に甘えます」


と言って、ジョルカとイルブはカーティス家に向かった。


同日18:00頃


ジョルカが家に帰ると、ガルド、リア、ソラは既に夕ご飯を食べ始めていた時だった。


「ジョルカ、今日帰りだったの?何もないわよ」


とリアが第一声を驚きながら言った。


「何か簡単な物でもないかな?」


とジョルカが聞き直すと、リアはキッチンへと向かった。ガルドとソラも食事の手を止めて、ジョルカとイルブを見た。


「どうだ?鍛錬の調子は?」


とガルドが聞いてくる。


(相変わらず固い親父だな)


とジョルカは思ったが、


「2人とも順調だよ」


「イルブ君はどうだね?」


とガルドはイルブに目を向けた。


「はい。先輩の手助けは出来ると思います」


とイルブは、お手本のような返事をした。


ガルドはイルブに、


「ドレンは、君にとっては最終目標かもしれん。そして君の因縁の相手だ。勝てる確率を1%でも上げるよう鍛錬に励んでくれ」


と静かに言った。


「はい」


とイルブは、決意を新たにしたかのように一言だけ返した。


ジョルカは、一連の2人の流れを見た後、ソラに目をやった。ソラはソワソワしていたが、


「お兄ちゃん、お帰り」


とだけ言って、また食事を続けた。


そうしてジョルカとイルブの2人がテーブルにつくと、リアが2人分の宣言どおり、簡単な食事を持ってきてくれた。ものの2、3分ぐらいしか経っていない。


どうやら残り物のシチューに、缶詰の肉を入れただけの物のようだ。それにバターロールを2個ずつ皿に乗せてある。


(これなら、たしかに直ぐ出来るな)


とジョルカは思いながら、食事を口に運んだ。


「美味しい!!」


とイルブは、大きめの声と同時に破顔した。確かに簡単に作ったという割には美味しかった。それは元のシチューのベースがいいのが大きな要因だろう。


5人での食事が再開し、近々決戦がある、とは思えないような和気あいあいとした会話だった。


それは、まるでその事実を忘れたいかのように……


同日19:00頃


ジョルカは食事が終わり、


「じゃー俺は、少しイルブと話があるから……」


と言って、ジョルカはイルブと2人でジョルカの部屋に戻った。


「あっ、お兄ちゃん」


とソラが声をかけて来た。


「ん?ソラ、何か用か?」


とソラに返事をする。


「えっと、何でもない」


とソラはそっぽを向いた。


(ソラ、今日は、なんか素っ気ないな)


とジョルカは思ったが、部屋に赴いた。


ジョルカとイルブは、これまでの鍛錬漬けの日々でお互い話せなかった、これからの事について2人で話し合った。それは、主にドレンを倒した後の事であった。(2人は、ドレンについては負ける気がしなかった)


「イルブ、ドレンを倒した後、お前はどうするんだ?」


「正直、僕は怖いです。がドレンは許せません」


「……」


ジョルカは、イルブの次の言葉を待っている。


「ここからは、僕の予想ですが」


と前置きをし、


「ドレンは小物です。あの落盤事故を直接指示したのはニクス伯爵とヴェイン王です。ですが、あのニクス伯爵という人……チラッと見ただけですが恐ろしい人……底知れない怖さを感じました」


「そういう先輩こそどうなんですか?ヴェインを倒した後の夢とか目標はあるんですか?」


逆にイルブがジョルカに聞いてきた。


「俺自身の夢なんてもんはねぇよ。まぁ強いて言うなら親方のようなS級魔鉱夫になる事と」


とジョルカはここで一拍置いた。


「そしてソラの夢を叶えてやる事かな?」


とジョルカは言った。


「へー、ソラちゃんってまだ13歳でしょ。そんなにしっかりした夢があるんですか?」


「ああ、ソラの夢は魔鉱医学士になる事だ」


とジョルカが答えると、そこにコンコンっとノックの音がした。


「お兄ちゃん。ちょっといい?」


とドア越しにソラの声が聞こえた。ジョルカはドアを開けると、ソラが立っていた。ジョルカは、部屋に招き入れた。


ソラは、中に入ると、


「イルブさん、少し見ない間に男らしくなったね」


とイルブに声をかけた。


イルブは、先程まで深刻な顔をしていたのに、急に赤面しだした。


(何?赤くなってんだコイツ)


とジョルカは思いながらも、


「ソラ、どうした?」


とソラに向き直った。するとソラは、手に持っていた可愛くリボンで装飾された箱をジョルカの前に差し出した。


「これ、お兄ちゃんに」


と手渡してきた。


ジョルカは、やっと気がついた。


「ソラ、ありがとうな」


とソラの頭を軽く叩く。


「お兄ちゃん、家に全然帰って来ないんだもん。1ヶ月遅れの誕生日プレゼントになっちゃったよ」


と少しむくれた。ジョルカは、


「ソラ、ありがとうな」


とソラに優しく微笑み、


「俺もソラの誕生日は、何かしないとな」


と答えると、ソラは、


「お兄ちゃんだから、期待しないで待ってる」


と舌を出し、可愛い仕草で可愛くない答えをした。


そうするとソラは、名残惜しそうにしていたが、2人の邪魔をすまいと気にしたのか、


「じゃーお兄ちゃん、頑張ってね」


と一言を残して部屋から出た。


そうして、またヴェインとニクスの話題に戻り、ただ解決策が決まらないまま時間が過ぎた。


同日23:00頃


ジョルカは、眠りについていた。


イルブは、ジョルカの隣で急遽用意された布団にくるまり、天井を見上げ考え事をしていた。


考え事の内容は、ヴェインでもニクスの事でもなかった。


イルブの頭の中にあるのは、ソラの事だった。

毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

「続きが気になる」「また読みに来てもいい」と思っていただけましたら、ブックマークしていただけると励みになります。

ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。

十条 閃

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。