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33話 コルブとの再会

グレートランド歴1772年10月22日 8:00


イルブが鍛錬に復帰し、3週間の時間が過ぎようとしていた。


その頃、ジョルカはジグルとマナをキャッチボールするような鍛錬をしていた。そして、そこにジグルの檄が飛ぶ。


「遅い!受け取ったら直ぐ投げ返せ!受け取って投げるまでに5秒かかってる。そんなんじゃ戦えないぞ!!」


「おうっ、分かってらい」


とジョルカは負けじと返事し、マナの量の増減を意識しながらマナをジグルに投げ返す。


ジョルカは今、マナのキャッチボール、マナを剣に宿す鍛錬、またその剣に宿したマナの持続時間を長くする鍛錬。この3つの鍛錬を1日15時間、長い時は18時間鍛錬に当てていた。


ジグルもオーバーワークなのは理解していたが、少しでも時間が惜しいと感じていた。


せめて後1年あれば、もっと質の高い良い鍛錬が出来たものを……


これでは、まるで突貫工事のような鍛錬ではないかと、複雑な気持ちでいた。しかしジグルは、ガルドからヴェインの暴挙、またヴェインの企むフラージャ公国との開戦の予知夢を聞いている。それが、この突貫工事のような鍛錬を受け入れなくてはならない事情である事も、ジグルは理解していた。


一方、イルブの方はというと、全く違ったアプローチをしている。


鍛錬の時間は同じなのだが、鍛錬の半分の時間を読書に当てていた。


数日に1回、何処からか持ってきた本(多分どこかの図書館から借りて来たのだろう。がジグルには何が書いてあるのか皆目見当もつかなかった)を読み漁って来たかと思えば、目を閉じイメージトレーニングをする。イメージトレーニングをしたかと思えば、実戦トレーニングをしている。


それをジグルは何も言わず見守っていた。


なぜなら、1つは、イルブの目が死んでいなかったからだ。イルブには相当の覚悟があったのか、何があったか分からないが、鍛錬に復帰してからのイルブの集中力には凄まじいものがあった。


そして、もう1つは、イルブの成長が目に見えて分かったからだ。


本を読み、目を閉じイメージトレーニング、目を開けたかと思えば、立ち上がり不思議な腕の動かし方をしている。がその所作は流麗で美しく、ジグルには意味が分からないが、その動きをしている間はイルブの回りの空気が激しく吹き荒れたり、突然つむじ風が起きたり、かと思えば突然の凪に入る。


ジグルは、


(この2人、底が知れねぇ)


と思いながら、2人の成長を見守っていた。


同日12:00


2人は、午前の激しい鍛錬を終わり、3人で休憩をしていた。


するとそこにエドガーと、もう1人別の男がやってきた。


その男は、しつらえのいい立派な服装をしていたが、何日間かは洗濯していなかったのか、薄汚れていた。顔も無精ひげが生えている。


エドガーは、


「どうだ鍛錬の調子は、見たところ順調そうだな」


と声をかけてきた。ジグルは、


「ああ、2人とも順調だ」


と答えた。そしてもう1人の顔を見た。


「こちらの方は?」


と言いかけた時、イルブが走ってやってきた。


「父さん、どうしたんですか?」


と言うと、エドガーが、


「この方は、コルブ=コールマンさん。イルブ君の父親だ」


とジグルとジョルカに説明した。


コルブは、


「探したぞイルブ。またちょっと見ない間に、また、いい顔になった」


と長旅のせいか少し疲れた顔で笑った。


3人は、しばし鍛錬の再開を延長した。


そしてこれまでの経緯をコルブに語った。そして、


「事情は、分かりました。そして、イルブが何故ニクス伯爵に捜索されてるかも……」


とコルブは返事した。


そしてコルブは頭を下げ、


「イルブ、すまなかった。俺がお前をドレンなどというクズに預けたばかりに……」


と声を震わせイルブに謝罪した。


「父さん、顔をあげてください。父さんはアルカナ隔離令を恐れての行動だったのは理解できます。それに」


とイルブはコルブに言った。


「父さん、僕は、ドレンのせいで確かに酷い事に巻き込まれたかもしれません。ですが、逆にドレンに使われたおかげで、この素晴らしい仲間と出会えました」


「イルブ」


とコルブはイルブの顔を見た。イルブの目には、コルブが涙がこぼれるのを必死にこらえている姿が映った。


「父さん、まだこれから先、僕にはすべき事があります。それまで父さんには、今日のように心配かけるかもしれませんが、どうか見守ってください」


イルブは、コルブに申し出た。


そしてコルブは、ジョルカ、ジグル、エドガーに向って頭を下げ、


「イルブは、私の自慢の息子です。足らないトコがあるかとは思いますが、力添えをお願いします」


と言うと、3人とがっしり握手をした。


「イルブ君は、立派な少年です」


とジグルが言う。


「ええ、イルブ君には、私たちも期待しています」


とエドガーも答える。そしてジョルカも、


「イルブは、俺の大切な友達です。任せてください」


と答えた。


コルブは、3人に黙礼をし、


「私は、私でなすべき事が出来ました」


と言い残し、その場を去った。

毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

「続きが気になる」「また読みに来てもいい」と思っていただけましたら、ブックマークしていただけると励みになります。

ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。

十条 閃

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