第2章 27話 イルブの帰還
グレートランド歴1772年9月29日 8:00
ガッガッと打撃音だけが、こだまする。
見かけは森があり、草原もあり、広いように見えるが、やはりここは地下空間なのだと改めてジョルカは、その打撃音を聞いた。
「ジョルカ、一打一打に集中しろ!数を打つのが鍛錬の目的じゃねぇ」
とジグルが喝を入れた。
1週間近く例の大木を一刀両断しようと剣を振るうが、一向に進歩がない事にジョルカは焦りを感じていた。
マナの集中を腕に集める事は出来る。がそこから先。マナを剣に移すイメージがどうも掴めない。
何かコツはないかとジグルに尋ねた事は何度かあったが、いつも答えは同じ。
「そんな物はない。集中とイメージだ」
の一点張りだ。
そうして、今日も1時間、2時間と剣を振るっていた。
「悪い親方、少し休憩」
とジョルカは言い、その場で寝転がった。
寝転がり、腕を上げ自分の手を見る。
どうして上手くいかない……とジョルカは考える。腕に集中させるだけなら、簡単に出来たのに……集中とイメージか、と考えジョルカはまた立ち上がった。
剣を握り、目を閉じる。目を開けているとイメージしにくいと思ったのだ。
マナが体を包んでいるイメージをする。ここで一旦"零式"をしてみる……体からマナの感じが消えた。ここまでは、何度も行っている。"零式"を解除してみる。また全身から、マナが体を包みだした。
そのマナを腕の方に集中させる。ここまでは、これまでも出来ていた。
発想を変えてみたら……と思いジョルカは目を開けた。そしてジョルカは聞いた。
「親方、自分の中にあるマナを人に上げる事って出来るのか?」
とジョルカは聞いた。するとジグルは、ニヤッと笑い、
「いい気づきだ。マナを人に預ける事は、可能だ」
「親方は、親方のマナを人に預けたり譲る事が出来るのか?」
「出来る!"弐式"が出来る者は、全員それが出来る。いや、出来る者が"弐式"を修めた者だ」
「親方、マナを俺に預けてくれないか?」
とジョルカがジグルに近づくと、
「ジョルカ、そこにいろ」
とジグルが言った。
今、ジョルカとジグルの距離は、5m程離れていた。
「ジョルカ行くぞっ。ふっとばされないように踏ん張れよ!!」
と言ったと同時に、ジグルの腕から淡い黄色の光がジョルカに向って飛んできた。それをジョルカは反射的に体の前で腕をクロスし、防御した。
が、何も起きなかったように見えた。
ジョルカは、クロスした腕を解き、自分の体を見た。すると体中が、マナで満ち溢れていた。そしてジグルが言った。
「マナを体から出したり、飛ばしたり出来れば、強化系のジョルカの場合、"弐式"もほぼ完成だ」
「俺の場合は?」
「ああ、もうここにはいねぇが、イルブみたいな"アルカナ"の場合は、他にアルカナを変形とか変質させたりするんだがな……」
「……」
「まぁイルブの事は、もういい。ジョルカ!お前は……」
とジグルは、ジョルカの呆けた顔を見て言葉を止めた。
「どうした?ジョルカ」
と言いながら、ジグルはジョルカの視線の方を見ようと振り向いた。
振り向いた先には、見慣れた笑顔があった。
「……イルブ、お前が遅刻なんて珍しいじゃねぇか?……」
とジョルカは言った。
「……すみません。遅刻しちゃいました……」
とイルブは答えた。
「イルブ、遅刻したんだ。これからみっちりしごくから、覚悟しろよ!」
と言葉の内容と合わない笑顔のジグルの顔が、そこにはあった。
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十条 閃




