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第2章 25話 弐式・剣の鍛錬

グレートランド歴1772年9月21日 PM8:15


ジョルカとジグルは、いつもより鍛錬を始める時間が遅くなった。


それは、言わずもがな、イルブを待っていたからである。ジョルカは7月16日から鍛錬を始めて、イルブが鍛錬の開始時間に遅れてきた事が無かった事を覚えている。覚えてはいたが、それでも寝坊したのかも、来る途中で事故にあったかも、とあまり想定出来ない事を想像していた。


が更に5分経った頃、


「"弐式"、鍛錬始めるぞ」


とジグルは口を開いた。


「いや、まだイルブが……」


「ジョルカ……気持ちは分かるが、昨日イルブにも言ったとおり、今日8:00が"弐式"の鍛錬を開始予定時間だ」


「……」


「ジョルカ、イルブは普通の商人の倅だ。だが、今はドレンへの憎しみで動いている……」


「……」


ジョルカは、俯いたまま黙って聞いていた。


「イルブの原動力は、ドレンを倒す事だ。ヴェインを倒す事じゃない。イルブも落盤事故で死者が出なかった事で、ある意味目的が達成出来ていたのかもしれん……」


「ああ、そうだな」


とようやくジョルカが重たい口を開いた。


「そうだ。これ以上イルブに協力を求めるのは、俺達のエゴだ。諦めろ」


ジグルは、本来なら「俺達のエゴだ!諦めろ!!!」と怒声を上げたかったが、そうはしなかった。それは、ジグルの想像以上にジョルカが落ち込んでいたからだ。


(知り合って2ヶ月足らず、まぁ年が近い友人って事もあるが、思った以上に、ジョルカの奴はイルブを信頼してたのかもしれんな……)


とジグルは、少しジョルカに同情をした。


「ジョルカ、今の腑抜けたお前に"弐式"の鍛錬をしても、何も習得出来ねぇし、俺も教えるつもりもない。だから今日は、ここで1日イルブを待つ」


「すまねぇ親方」


「だけどな。ジョルカ、今日1日だ!今日来なかったら、イルブの事はすっぱり諦めろ!!そして明日からは、きっちり"弐式"の鍛錬をするからな!」


「ああ、分かった」


とジョルカは、力なく返事した。


2時間、3時間が経ち、途中昼ごはんの事も忘れ、ジョルカは待ち続けた……


が、結局イルブは、1日待っても来なかった。


グレートランド歴1772年9月22日 PM8:00


ジョルカは、1日を費やしイルブの事を吹っ切った。いや正確には、吹っ切るように心がけた。


「ジョルカ!気合いれろよ!お前は素質がある!がそれでも鍛錬に当てられる期間は長くて3ヶ月だ。状況によっては、もっと短くなる。圧倒的に時間がない。その時間を昨日1日無駄にした。今日からは、集中して鍛錬するからな」


「おう」


80%の力で返事するジョルカを、ジグルは何も咎めず次に進んだ。


「ジョルカ、まず"壱式"の鍛錬の成果を見せてみろ!!」


と言われ、ジョルカはジグルに剣を手渡された。


ジョルカは、度肝を抜かれた。それもその筈だ。ジョルカは、剣はおろか刃物、いや刃物といった括りではない。人を殺める事を目的に製造されたものを手にした事は、人生で一度もなかったからだ。


改めて、剣を見る。両手剣だ。刃渡り60cmといったところか。


「ジョルカ、強化系のお前なら、武器は両手剣がぴったりだ。それは業物でも何でもないが、鍛錬にはちょうど良い。それを持って……そうだな……」


とジグルは、辺りを見渡す。そして、


「あの木を一太刀で、一刀両断してみろ」


とある1本の木を指さした。


その木は、高さ20m、直径1mはあろうかという中々の大木だ。


(一太刀で切れる訳ない……)


とジョルカは思った。


「見たところ、マナの指向性は出来てきたが、それはまだ未完成だ。まだ腕にマナを集中させる事が出来てきたってトコだ。それを腕にではなく、その延長つまりマナの力を剣に宿してみろ。そうすれば、その大木も一太刀で切れるようになる」


「分かった、やってみる」


とジョルカは返事し、マナが剣に宿るように集中した。が上手くいかない。


「それでは、ダメだ。今やっても木の皮が数枚傷つく程度だ」


とジグルの言葉を無視して、ジョルカはそのまま力任せに大木に切りかかった。


ガっと音を立て、ジグルが言ったとおり、木の皮が数枚傷ついただけだった。


「静心流転流の奥義は、武器にマナを宿す事で発動する。強化系は、まずその大木をマナで一刀両断する事、それが第一関門だ」


「3ヶ月……で出来るのか?俺に……親方?」


とジョルカは問うた。


「3ヶ月じゃない。1ヶ月だ。言っただろう。木が一刀両断出来るようになるのは第1段階、その後ジョルカ、お前には、旦那に言われたとっておきの技、そう残りの20%を埋める技として仕込まないといけないからな……」


「20%!そう言えば、親父に惜しい80点と言われた!その事か?親方?」


「そう。大木が切れて80点、更にとっておきの奥義がマスター出来れば100点になる。そうなれば、ヴェインを倒す事が出来るかもしれん。いや、出来る」


そう言ってジグルは、初日の鍛錬のアドバイスを終えた。

毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

「続きが気になる」「また読みに来てもいい」と思っていただけましたら、ブックマークしていただけると励みになります。

ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。

十条 閃

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