第2章 21話 ベルの面接
グレートランド歴1772年9月15日 AM10:00
イルブは、地上に行くゲートの前でベルを待っていた。魔鉱山の休鉱日に2人は待ち合わせをしていた。
イルブが少し待っていると、
「ごめんなさい。待ちました?」
ベルが、スラム街の中では小綺麗でガーリーな姿で現れた。
「ベルさん、そのカッコ、ちょっとかわいすぎじゃない?」
とイルブが言った。ベルは嬉しそうに、
「だってこれから面接ですよ。少しでも綺麗にしていかないと」
とイルブに軽く反発した。イルブは、
「じゃー行こうか」
と事前に用意してもらった通行許可証をベルに差し出した。
「ありがと、でも簡単に通行許可証なんて用意出来るの?」
とベルがイルブに質問する。
「ああ、ちょっとしたツテがあってね」
とサッと答えた。
(……あまり触れられたくないのかな?)
とベルは少し疑問に思った。が一緒にイルブと面接出来る事に胸を踊らせた。
ゲートをくぐり、地上に出た。ベルの第一声は、
「眩しっ」
だった。ベルは、地上に出た事が初めてだった。その圧倒的な自然の広大さに、眩しい以外の言葉が出なかった。イルブは、そんなベルの様子を見て、ニコニコと優しい笑顔を向けている。
「ベルさん、こっちだよ」
とやさしくイルブがエスコートしてくれる。ベルは、これから面接だというのを忘れて、ただただテンションが上がっていた。
ゲートからドレン邸までの道のりは、歩いて約20分程の道のりだった。草原に、人々や馬車が踏みならしただけの、土だけで出来た道を2人で歩いていく。
道の左右に広がる景色は、田畑と偶に果樹園、酪農家で飼われている牛がのんびり草を食べているという牧歌的な風景に、ベルはスラムとは随分雰囲気が違うなと道中ずっと周りをキョロキョロとしていた。
そうしてイルブは、遠くにドレン邸の屋敷が見えようかといった所で歩を止めた。
そこには、小さな小屋がある。ドレン邸の小屋だろうか?とベルは思った。イルブがその小屋のドアをノックすると、
「はい」
と返事があり、ドアの中から、ベルと似たような年の女の子が出てきた。
その女の子が、
「こちらがベルさん?」
とイルブに聞いている。
「そうだよ。こちらがベル=スターリングさん」
とイルブが答えた。慌てて、ベルも、
「ベル=スターリングです」
と挨拶をした。
「はじめまして。テス=ハウルです」
とドアから出てきた女性は挨拶してくれた。
「ここからは、私がドレン邸の屋敷まで案内しますわ」
とテスはベルに言った。
同日 AM11:00
テスとベルは、2人でドレン邸に向かった。
ベルは、人見知りをしない方ではあったが、これから面接という事と、イルブとテスの関係が気になって緊張した。でも初対面で、2人の関係性を聞ける程ベルの神経は太くなかった。
テスは、そんなベルを見て、なんとなく察したのか、
「イルブ君とは、昔の職場仲間です。といっても一緒に働いたのは1日だけ」
と笑った。
「1日だけ?」
「そう。私がメイドとして雇われた日に、辞めたの。それが逆に記憶に残ったのかな?」
「そうですか」
と少しベルは安堵した。そんな簡単なテスの自己紹介が終わった頃、ドレン邸に到着した。
「ベルさん、緊張しなくていいわよ。今、ドレン様いやドレン邸は人手不足が深刻だから、余程の事が無い限り、不採用になるなんて事はないわ」
と最後に付け加えて、応接間に通された。ベルは、
(余計ハードル上がったよ)
と更に一瞬緊張したが、持ち前のポジティブ思考をここで発動した。
(なるようになるわ。不採用なら魔鉱夫の生活が続くだけ!)
と開き直り、面接に備えた。
テスは、ベルを応接間まで送るとイルブの待つ小屋へ向かった。
「テス、ありがとう」
とイルブは礼を言った。
「礼を言うのは、こっちの方よ。こないだの私の話を聞いたからよね?」
「まぁ、それもあるけど、ベルさんも別の働き口を探してたからね。でもちゃんとドレンは最悪だって忠告したよ」
とイルブは笑って見せた。
「その話を聞いて、面接に来たんだ……」
とテスは悪戯っぽく笑った。イルブは、
「うん。何か変?」
とテスに聞いた。
「ううん、何でもないよ」
とテスは答えて、心の中でこう思った。
(ベルちゃん頑張って)
と。
そうして、テスとイルブが合流して30分ぐらいの時間が過ぎた頃、ベルがテスとイルブが待機していた小屋に戻ってきた。
ベルは、ニコニコしている。
「即採用貰ったよ。スラムからの1日通行許可証も用意してくれるって、その後は住み込みになると思う」
とベルは喜んで言った。
そしてベルは、
「明日から、よろしくお願いします」
とテスに挨拶した。
テスは、
「ベルさんは、私の後釜よ。ベルさん頑張ってね」
と2人に向って言って、その後、ベルに近づき耳元で、
(イルブ君の事、好きなんでしょ?頑張ってね)
と囁いた。
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十条 閃




