第2章 20話 鍛錬再開・ベルへの提案
グレートランド歴1772年8月28日
ジョルカとイルブは、8月28日に再会し、お互い自分なりの現状打破になり得るヒントを見つけた事を、2人で意見交換したのだった。
「僕は、これからの時間を空気の流れや"エアノーラ"を発動した時の、体の使い方に意識した鍛錬をしたいと思います」
とイルブが言った。
「そうか、イルブも打開案を見つけたんだな。俺は自力でのヒントじゃないが、親父に「指向性」って言葉のヒントをもらったよ」
「指向性……」
イルブは、相槌を打ちながら思案した。
「そう、指向性……で、今までの俺は、強化の力を何も考えてなかったけど、これからは、腕に、状況によっては足に、更に最終的に道具を強化できないかと思ってる」
「……」
と熱っぽく語るジョルカを他所に、イルブは手を顎に当て考え込んでいた。
「イルブ……聞いてんのかよ?」
「あっ、すみません。指向性……面白いですね。僕の"エアノーラ"にも使えないかなって思って……」
「"エアノーラ"にか……俺は難しい事はよく分かんねぇけどよ。俺の場合は、1点に力を集中させる事を思いついたぜ」
「……」
イルブは、また集中する。
(何か聞いた事があるな……気体に圧をかけ続けると液体になると……使えるかもな……)
もの思いにふけているイルブに、ジョルカは、
「イルブ?」
とイルブの意識を2人の元に戻した。
「で、聞いてくれよイルブ。俺が親父に集中する、力を1点に集約させる事を言ったら、『惜しい80点』って言うんだ。イルブ、意味分かるか?」
とジョルカはイルブに質問した。またも顎に手を当て、イルブは考えたが、答えは出なかった。
「じゃー一旦保留だな。イルブも残り20点、どうしたら100点になるか考えといてくれ」
とジョルカは言い、また2人は3日ぶりの鍛錬に戻った。
グレートランド歴1772年9月10日
そうして鍛錬を再開し、早2週間という時間が経とうとしていた。
ジョルカは、アルカナを全身から腕に集中させる事に成功し、イルブは魔鉱石の採掘を繰り返し、基礎体力の向上を図りながらも時折"エアノーラ"を発動させ、アルカナの使用頻度とアルカナを使い慣れるよう訓練していた。
2人がまた、例によって昼の休憩をしようとすると、そこに久しぶりにベルがやってきた。
「やぁお2人さん、精が出ますねぇ。かわいいベルちゃんが、お弁当を持ってきましたよ」
と軽いノリで挨拶してきた。
「おっいいな。ありがと」
とジョルカは挨拶をした。
「わぁベルさん。ありがとう。3人分あるの?」
とイルブが返事する。
「勿論3人分あるわよ」
とニッコリ、ベルは笑った。
「じゃー、一緒に座って休憩しよう」
とイルブが言い、3人で休憩する事になった。
ベルが持ってきたお弁当は、さながらこれからピクニックにでも行こうかというようなお弁当で、オシャレなバスケットにサンドイッチが詰め込んであった。が過酷な鍛錬をしている2人には物足りない量であったが、味は申し分なく、3人でぺろりと平らげた。
食事が終わると、軽い談笑と世間話をすると、ベルが急に、
「2人は、いつまでここにいるの?」
と聞いてきた。
ジョルカが、
「なんでそんな事聞くんだ?」
と質問を質問で返す。ベルが人差し指を顎に当て、あざとい雰囲気を出しながら、
「なんか、私の勘なんだけど、2人は他の魔鉱夫と違うんだよねぇ」
と言った。
確かに違った。ジョルカとイルブは、魔鉱夫として魔鉱石を採掘しているが、A地区の魔鉱夫とは別の隔離されたエリアで魔鉱石を採掘している。しかも2人はアルカナを使っては魔鉱石からマナを吸収しているので、採掘された魔鉱石は光を失った出がらしのようなものだった。
ベルが特別鋭いのではなく、2人と接触していれば、ごく自然に出てくる疑問であった。
2人は顔を見合わせて、どう答えるか考えてイルブが答えた。
「いつまでって正確には決まってないけど、まぁそんなに長くはいないかな……」
とお茶を濁すように答えた。
その答えにベルはショックを受けた。ベルは、少なからずだがイルブに惹かれ始めていた。イルブはスラム街には珍しく線が細くインテリな雰囲気を感じた、まさにベルの理想のような男の子だったからだ。
ベルは、残念そうに、
「そっか」
と露骨に寂しそうに返事をした。とそれを見ていたジョルカが、
「俺達も長くいないけどさ。ベルさんも魔鉱夫辞めたいって言ってなかった?」
と空気を読まずに話題に入った。
「辞めたいなんて言ってませんよ!別の仕事もしてみたいって言っただけです!!」
とジョルカの意見を否定した。
その時、イルブはテスとの会話を思い出していた。
(テスさんも仕事辞めたいって言ってたな……ベルさんに紹介してみるか……)
とイルブは少し考えた。がやはりイルブの良心が、少し仕事の紹介を咎める。ドレンの元で働かせるなんて……とイルブは悩んだ。イルブにしろテスにしろ、2人のドレンへの人間の評価は最悪だったからだ。が一応提案してみる。
「ベルさん。地上の男爵で、ドレンっていう人がいるんだけど、そこのメイドに空きが出そうなんだ。正直あまりオススメは出来ないけど、一応応募してみる?」
とイルブはベルに声をかけた。
「そのドレンって人とイルブさんは、知り合いなんですか?」
「まぁ知り合いっていうか、昔そこで働いてたよ」
ベルは、このままここにいてもイルブとの繋がりが切れると思い、なら少しでも可能性がある方がいいと思い、
「一度、話を聞かせて貰えませんか?」
と返事した。
毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。
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ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。
十条 閃




