第2章 19話 ラプラスの悪魔・レイブン登場
第2章 19話 ラプラスの悪魔・レイブン登場
グレートランド歴1772年8月28日 AM2:00頃
「いやっ、離して、いやっ、父さん……助けて……お兄ちゃん……」
ブロンドヘアの美しい少女が自分に助けを求めていた。
「ソラーーーー!!」
と思わずガルドは、ベッドから飛び起きた。その横で、リアが目を覚ました。
「貴方?」
「ああ、スマン、起こしてしまったな」
「夢ですか?」
「ああ、"ラプラスの悪魔"かもしれん……」
「どういった夢だったんですか?」
とリアは、ガルドに寄り添いながら聞いた。
「ソラが、どこかに連れ去られる夢だ……」
「そんな……」
「とりあえず、今日から暫くは、ソラに細心の注意をしないとな……」
「いつ起きるかは、分からなかったのですか?」
「夢の鮮明さでいえば、連れ去られるのは2ヶ月以内に60%ってトコだ」
と言うとガルドは、ベッドの脇のサイドテーブルに置かれた水を一気に飲み干した。黙って聞いているリアに、
「とりあえずリア、10月下旬まで注意してくれ」
「分かりました」
「こんな時に……」
とガルドは、両手で頭を抱えた。
同日 AM8:00頃
「おはよう、パパ」
とソラは、いつものように元気に朝食が用意されたテーブルについた。
「おはよう、ソラ」
とガルドとリアも挨拶をした。
ガルドは、改めてソラを見た。いつもと変わらない様子で朝食を頬張るソラだ。
「ソラ、夏休みはいつまでだ?」
とガルドは聞いた。
「8月31日までだよ?知ってるでしょ?なんで?」
とソラは不思議そうな顔でガルドを見る。ガルドは、ソラにもジョルカにも、あまりプライベートな事も学業の事についても深く踏み込む事がない父親だったからだ。
「ソラ、今日から夏休みの間は、家にいなさい」
とここでリアが口を開いた。
「どうして?私、明日、友達と遊びに行くから、無理だよ」
とソラが返事をした。
「ソラ!母さんの言う事を聞きなさい!!」
とガルドが少し強い口調で言った。
「……どうしてか教えてくれないの?」
とソラは、ガルドを見た。
ガルドは、厳格な父だった。が、ソラに対して怒る事はほぼなかった。その両親が揃って厳しい顔をしている。ソラは、そんな2人の顔を見て、落盤事故があった日のガルドの話を思い出した。
「何か見たの?」
とソラが聞く。
「……」
返事がないのが答えだった。
「ジョルカがいてくれれば……」
とガルドは、言っても仕方ない事を言った。ジョルカに相談すれば、ソラが危険だと伝えたら、ソラを守ってくれるだろう。がジョルカは、今後の計画にどうしても必要な人間だ。それにジョルカが強くなる事が計画の達成に絶対の必要事項だった。
(ジョルカを鍛錬の最中から離れさせる事は、出来ない)
とガルドは考えた。ガルドは、自分の能力を恨めしく思った。
("ラプラスの悪魔"の精度が100%なら……)
ソラは、ガルドが苦悩している様子を見て、不安がっている。それを察して、
「ソラ、父さんも私も付いてるから、とりあえず夏休みの間は家にいなさい。そうしたら安全だから」
とソラを落ち着かせようとした。ガルドも最後に、
「ソラ、儂の能力は、今回に限っては当たる確率50%だ」
と少しサバを読み、
「仕事に行ってくる」
と言って家を出た。
ソラが怯える様子を見て、リアが、
「ソラ、気にしないで、父さんが何とかしてくれるわ」
とソラを慰めた。
同日 正午過ぎ
「おい!エゼル、お前の担当の第3部署の採掘量が最近芳しくないぞ!」
「ヴォルフ、お前のトコもだ!」
と檄を飛ばしている男がいた。エドガーだ。
エドガーは、昼休憩中に珍しく魔鉱エレベーターから男が降りてくるのを見た。
「ガルドさん!どうしたんですか?」
「すまん。ちょっといいか?」
ガルドの顔を見て、エドガーは、
「エゼル、ヴォルフ!昼から気合いれろよ!!俺は、ちょっと用事が出来たから離れる」
と檄を飛ばし、返事があったのを確認して、ガルドを現場事務所に案内した。エドガーは現場事務所に入るなり、
「ガルドさん、こんなトコにどうされたんですか?」
と聞いた。
「すまん。極めて私用なんだが、ギヤリベリオンから腕の立つ能力者を貸してくれんか?」
「どうされたんですか?何かあったんですか?」
とエドガーは、ガルドの沈痛な面持ちを見て心配になり聞いた。
「ソラに、危険が近づいてるかもしれん……」
「ソラちゃんが!!"ラプラスの悪魔"ですか?」
ガルドは、黙って頷いた。
「分かりました。最近ウチで頭角を表し始めたレイブンって男がいます。その男をソラちゃんの護衛に回しましょう」
「すまん、恩に着る」
「ガルドさん。そういうのは、止めにしましょう。俺とジグルは、一生かかっても返せない恩があるんだ」
ガルドは、「ありがとう」と一言礼を言い、エドガーの手を握った。
同日 PM6:00
「忙しいのに、スマンな」
「ガルドさん。何度も言うようだけど、やめましょうや」
とガルドとエドガーは、昼間の話の続きをしていた。が場所が変わっていた。
会談の続きをしたのは、ガルド邸の客室だった。
「で、そのレイブン君というのは、何時頃来てくれるんだ?」
とガルドが聞いた。
「もう10分ぐらいで来ると思うんですが……」
「そうか、なら、もう少し待つか……」
と少し待ったところでエドガーが、
「ところでリアさんは?」
と聞いた。
「リアなら、護衛をしてくれる人に心当たりがあると言って出かけたよ。リアも心配なんだろう」
「そうですか……まぁレイブンの奴が着いていれば大丈夫と思いますが……」
といったところで玄関のベルが鳴った。いつもはリアが接客するところだが、外出しているためにガルドが玄関まで迎えに行く。
ガルドが玄関を開けると、逆立った茶色い髪の毛をした青年が玄関前に立っていた。
「レイブン君かね?」
「はい。レイブン=アローです」
と青年は返事をした。
ではこちらに、とガルドはレイブンと名乗る青年を客室に案内した。するとエドガーが、
「おう、レイブン、ここに座れ」
とレイブンを自分の隣のソファーに座るよう指示した。レイブンは、エドガーの隣に座った。
「話の内容は、聞いてくれたかな?」
とガルドは切り出す。
「はい。ソラお嬢さんの護衛と伺いました」
「うむ。といっても、四六時中護衛しなくてもいいんだ。学校が始まる9月1日から登下校の時だけでいい。よろしく頼む」
とガルドは、頭を下げた。
「身命を賭して」
とレイブンも頭を下げる。これを見てガルドも頷き、
「ソラーーーー」
と大きい声でソラを呼んだ。
ややあって、ノックの音がする。
「父様、ソラです」
とドアの向こうから声がして、ソラが部屋に入るよう促した。
ソラが客室に入り、ガルドの横に立った。ガルドも立ち上がり、隣のソラを見てから、
「儂の娘のソラだ。この子の護衛を頼む」
とレイブンを見た。
「分かりました。9月1日からソラお嬢さんの護衛に着きます。お任せ下さい」
とレイブンは返事をした。
毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。
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ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。
十条 閃




