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第2章 18話 指向性・閃き

グレートランド歴1772年8月26日 AM10:00頃 地下スラム街


ジョルカは、前日聞いた指向性の意味を考えていたが、日々の疲れからか早々と寝てしまった。


そして目を覚まして、昨日聞いた親父の言葉を思い出した。


「"壱式"のトレーニングは、今のまま魔鉱山で続けていればいい。お前が意識しないといけないのは、指向性だ」


「指向性ね……」


とジョルカは呟いた。もっと集中しろって事か?と自問自答してみる。ツルハシを振るっていた自分を思い返す。指向性の言葉の意味が分かっても、それをどう鍛錬に活かすのか分からず、ジョルカはキッチンに出向き、


「母さん、お腹すいたから何か食べたい」


とリアに朝食をお願いした。


「おそよう、今何時と思ってるの?」


といいながらもリアは、トーストと目玉焼きという簡単な朝食を用意してくれた。


トーストを食べていると、続いてソラが、


「おそよう、お兄ちゃん」


と笑いながら挨拶をしてきた。ジョルカは、たまの休みぐらい寝過ごしてもいいだろ、と思いつつも、


「おはようソラ」


と挨拶をした。


朝食を食べ終わり、ジョルカはソラが飲んでいる水を見た。


いや、水を見ているのではない。窓から入ってくる擬似太陽フィラメントの光が、ソラが置いたグラスに当たっていた。その光は、グラスの水を通す事で一点に集中していた。昔聞いた事がある。水レンズ、いや収束レンズだ。


「!!!」


ジョルカは、ひらめいた。


そうか、俺は今まで力を分散させていたのかも知れない!


それをもっと力の集中、そうだ!全身の強化ではなく腕に集中、いやこの水レンズのように、少し先まで意識的に集中できたら?ツルハシの先端を強化する事が出来るかも知れない。そう思うと、ジョルカはいてもたってもいられずにいた。


同刻 地上


地上に戻り、また自然の太陽を浴びると、


(自然の太陽光は、いいな)


と改めて思った。擬似太陽フィラメントでは植物は育つかもしれないが、人が生きるという事は光合成をするという事ではないと改めて思った。


どうすればいいのか……とさんさんと照りしきる太陽を見上げる。


すると空で、鳶がピーヒョロロと鳴きながら、自由に空を旋回している。それを見てイルブは「!」と閃いた。


気体化。気体。風だ!!


鳶が空を自由に飛び回っているのも「上昇気流」という風を利用しているんだ!!


イルブは思った。こんなところで幼い頃、本を読んで勉強していた知識が役立つとは……と。


そう思い立つと居ても立ってもいられず、イルブは商業地区に駆け足で戻り、メインストリートに入った。


「雑貨 コールマン商店」


ここなら、置いてるだろうと思い、店内に入る。


店番をしているのは、ホルブだった。


「イルブどうしたんだ?」


「兄貴、純魔鉱石をくれ」


とイルブはまくし立てた。


「ダメだ」


とホルブは言う。


「純魔鉱石は、貴重品だ。貴族様にしか売れない」


「頼むよ、売ってくれ」


「ダメだ!!」


と問答を繰り返していると、


「ホルブ、売ってやれ!」


と裏から声がした。その声の主は、コルブだった。裏で伝票整理か商談でもしていたのだろう。急に店が騒がしくなったので、様子を見に来たのだろう。


「でも父さん……」


とホルブが言いかけた時、コルブがホルブを一睨みする。とホルブは消沈した。


「イルブ、金はまけんからな」


「ああ」


と返事するとコルブから、純魔鉱石を2日分回復出来る分だけ購入した。


「イルブ、何をしてるか詮索はせんが、道を踏み外すなよ」


とコルブが言う。


「大丈夫です、父さん」


と返事をして、イルブは立ち去った。そのイルブの後ろ姿を見て、フッとコルブは笑った。


そうして、また鳶が飛んでいる空き地にイルブは戻った。イルブは周りに人がいない事を確認した。そして、


【エアノーラ】


と唱えた。


今までの"エアノーラ"は、気体化した後、移動するのは人が歩く程度の速さか、その時ある風まかせだった。


イルブは意識する。


(俺が風になるんだ)


と頭でイメージする。


"風"……"気流"……"対流"……"渦"……"凪"……あらゆる思いつく空気の流れ……それが何故、発生するのかイメージしてみる……


するとスッと自分の体が軽くなるのを感じる……少し体の体積が大きくなった気がした。そのまま意識を集中する。さらに軽くなるのを感じる。


そうか……膨張した事で、僕自身の気圧が下がったのか……


風……気圧差が生み出す事象……更に意識を深める。そうか、今までの"エアノーラ"は、普通の空気と一緒だったんだな。


イルブは、明後日から始める鍛錬のヒントを掴んだ気がした。


グレートランド歴1772年8月26日 PM6:00頃 地下スラム街


ジョルカは、ガルドの帰りをいまかいまかと待ちわびていた。


そうして、ガルドが帰ってくるとジョルカは、


「親父、能力の指向性とは……」


と熱く自分の考えた事をガルドに伝えた。


するとガルドは、


「ジョルカ、儂は腹が減ってるんだ。先に飯を食わせてくれ」


と言われた。


ジョルカは、とんだ肩透かしをくらったが、少し待つ事にした。


夕食をジョルカが食べていると、おもむろにガルドが口を開いた。


「ジョルカ、さっきの話、80点だ。いい線はいってる。だが80点だ。その答えでは、王の討伐は出来ん」


そうガルドは、答えた。

毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

「続きが気になる」「また読みに来てもいい」と思っていただけましたら、ブックマークしていただけると励みになります。

ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。

十条 閃

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