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第2章 17話 イルブとテスの再会

第2章 17話 イルブとテスの再会


グレートランド歴1772年8月25日 PM6:00頃


イルブは、ジョルカと別れた後、気分転換と鍛錬のヒントを探しに地上に戻る事にした。


通常、地下スラムと地上の行き来には通行許可証が必要になる。イルブは最初、地上からスラムに行く時は"エアノーラ"を使い地下へ脱出したが、前回、コルブとの再会以来、通行許可証をコルブに発行してもらっていた。イルブは、門番に通行許可証を見せ、ゲートをくぐった。


今回、イルブは家に帰るつもりはなかった。地上に戻った目的は、鍛錬が行き詰まっているその現状打破が主な理由で、1ヶ月程前にコルブとの再会を果たしたばかりという事もあった。


ジョルカとの約束の期限は、2日しかない。それまでに鍛錬のヒントを探さなくては、と思いながらも、


(2日いるのだから、宿屋と食事の手配は探さないとな)


と思い、イルブはとりあえず居住区の中の商業地区に向かった。


地上の商業地区は、簡単に言えば商店街の様相をしている。八百屋、肉屋をはじめとした食料品や服、帽子、靴を揃えた衣料品店がメインストリートに軒を連ねている。イルブの父親コルブが経営しているコールマン商店もメインストリートにあった。イルブは、頻繁に会うのもおかしいという思いと、イルブの目的となるレストランと宿屋が裏通りにある事もあり、メインストリートからすぐに外れ裏通りへ真っ直ぐに歩いていった。


イルブはポケットの中から財布を取り出し、中身を確認する。ドレン邸から脱出した時よりだいぶ増えている。これは、ガルドとジグルがジョルカと魔鉱夫の仲間を助けてくれたという礼金と今後の生活費という事で与えられた給金だ。少しぐらいなら贅沢できる程の金額はあったが、商人の息子が原因かどうかは分からないがイルブに贅沢をするといった習慣はあまりなく、手頃な料金で食事が出来る場所はないかと裏通りを散策した。


裏通りを端から端まで歩き、最終的に「キッチン ドレイク」という名前の店にしようと引き返したところで、見た事がある顔を見つけた。


ドレン邸でメイドをしていたテスだった。


「テス」と声をかけたかったが、殆ど面識がない事を思い出し、見て見ぬふりをして行き過ぎようとした時、


「イルブ?」


とテスの方から声をかけられた。イルブは、覚えてくれていたのか……と思い、少しの間とはいえ異性として惹かれた女性が自分の事を覚えていてくれた事を嬉しく思った。そして、


「テス」


と返事をする。


「よかった、私の名前覚えてくれてたんだ」


と前と変わらず表情豊かに笑った。


「勿論、覚えてるよ」


とイルブも笑顔で返す。と、


「んーー、なら、なんで声かけてこなかった?私の事、無視しようとしてなかった?」


と訝しげな顔をイルブに向けた。イルブは慌てて、


「ごめん。テスが僕の事、覚えてくれてる訳ないと思って……」


と返事をした。


「覚えてるよぉ。だって私がメイドで入ってすぐやめちゃったんだもん」


とテスは事もなげに笑った。そして、


「今、何してるの?」


とテスはイルブに聞いた。


「そこのキッチン ドレイクでご飯でも食べようかと思って」


「あらいいわね。なら私も一緒にいい?」


「勿論だよ」


とイルブは答えた。


イルブは改めてテスを見た。ショートボブに独特のヘーゼルの瞳、そしてよく人見知りもせず人によく話しかけてくれる。以前女性として惹かれた同じ年の女性が、目の前に座って一緒に食事を楽しんでいる。


がイルブは、ソラに一目惚れをしてしまってから、ソラ以外の女性に興味があまり持てなくなってしまった。それがイルブの緊張の糸を無くした。


「どう?最近のドレン邸は?」


と気軽にテスに話しかけられた。意識していた頃なら、緊張で話しかけられなかったかもしれない。


「どうって、逃げた人がそんな事聞く?」


とジト目でテスがイルブを見てくる。続けて、


「イルブ、貴方もドレンが嫌になって辞めたんでしょ?」


とストレートに聞いてきた。


「まぁそんなトコだよ」


とイルブは答えた。


「違うの?」


とテスが聞き直してきた。


「勿論、そうだよ。その通りさ」


と慌ててイルブが返答し、


(鋭い子なんだな)


と少しテスに感心した。


(魔鉱山に爆弾を仕掛けさせられたから辞めたなんて言える訳ない)


とイルブは考え、


「ドレン様ってセコいんだよね」


と一般論を語るようにテスに返事した。


「そうなの!人間の器が小さいっていうかさぁ……」


とそこからイルブとテスは、ドレンの悪口に盛り上がった。そして急にテスが、


「もうね。メイド辞めたいと思ってるんだ……」


と急にしんみりとした顔をして言った。


「辞めるの?」


「辞めたい……でも、新しく働くトコも見つけないといけないし、次のメイドが見つからないと辞めさせてもらえないかも……」


「そうなんだね。僕は、逃げ出したけど、簡単には辞めれないよね……」


とイルブはテスに同情した。


そうして昔話に花を咲かせ、楽しい夕食が終わり、イルブはテスがドレン邸にいる事が何かの役に立つかもしれないと思い、最後にこう言った。


「いつかドレン邸に行くから、テスに会いに行ってもいい?」


「会いに来れるならいいわよ」


とテスは簡単に返事をした。


イルブがドレン邸に会いに行くという言葉を、テスは話し半分に聞いて本気にしていなかった。


そうして、イルブの楽しい食事が終わると同時に現実に戻った。


楽しい時間だったけど、本来の目的は鍛錬のヒントを得る事だった。が今日はもう遅いので「キッチン ドレイク」から近くにある安宿屋で朝まで過ごす事にした。

毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

「続きが気になる」「また読みに来てもいい」と思っていただけましたら、ブックマークしていただけると励みになります。

ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。

十条 閃

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