第2章 16話 伸び悩み・能力の指向性
グレートランド歴1772年8月25日
「はぁはぁ」……
「はぁはぁ」……
ジグルと別れてジョルカとイルブで鍛錬を始めて、そろそろ1ヶ月の時間が過ぎようとしていた。
2人とも最初の2週間程は、順調に成長しているという自信と自覚があった。しかし、その頃から徐々に成長スピードが落ちているのを2人とも自覚していた。
「イルブ、少し休憩しよう」
ジョルカが言った。
「はい。そうしましょう……先輩」
と息を切らせながらイルブは返事した。
2人は、魔鉱山の土にまみれた地面に腰をかけ、2人並んで岩場を背もたれに休憩する。
「なぁ、俺達ちょっと足踏みしてないか?」
とジョルカが言った。
「はい。そう思います」
「鍛錬、鍛錬っていうけど、なんていうか親方も鍛錬のヒントが少ないよな……」
「はい。そう思います」
「なぁ、このまま同じような事をルーティンでやってていいと思うか?」
「はい。そう思います」
「……」
「イルブ……俺ってイケメンだと思うか?」
「はい。そう思います」
「……」
ジョルカは、何を聞いても同じ返答のイルブに、
(こいつ、心ここにあらずだな……)
と少し危機感を感じた。
ジョルカは場所を少し移動し、イルブの正面に向かって言った。
「イルブ、お前少し、鍛錬休め!!」
とイルブに提案した。
イルブは今やっと我に返り、
「そんな、ダメですよ。"壱式"の鍛錬の期間は、ジグルさんに2ヶ月って言われてるんです。休んでる時間は、ありません」
とイルブらしい真面目な返答をした。
「イルブ、俺は、何も長期間休めとは言ってない。それに、俺も、お前も今少し伸び悩んでる。このまま同じルーティン、単調な作業をやってても、多分2ヶ月後も今のままだ。それなら、少し、そうだな2日間ほど、2人とも休んで家に帰って、現状打破の手がかりを探そう!!」
「そうしますか?」
「そうしようぜ!ってゆうか、俺が偶には羽を伸ばしたいってのもある」
とジョルカは悪戯っぽく笑う。
「いいですね。僕も久しぶりに地上に戻れば、何かヒントを得られるかも知れませんし……」
「決まりだな」
と2人は合意し、休憩を終わらせ、残り時間はいつものように魔鉱夫としての時間を過ごした。
そうして定刻のチャイムが鳴り、2人は居住区まで一緒に上がると、そこからは別々になり、それぞれの家路についた。
帰り道、ジョルカが歩いていると、
「アッシュさーーん」
と後ろから声をかけられた。振り返るとベルだった。
「先日は、お世話になりました」
とベルはかしこまって挨拶をした。
「そんなにかしこまらなくてもいいよ」
とジョルカが言うと、
「ホントですか?」
と急にくだけた感じになり、
「私も敬語とかガラじゃないんですよねぇ」
とカラカラとベルは笑った。
「ところでイルブさんは?」
「イルブなら家に帰ったぞ。明日から俺もイルブも少し休むからな」
「え?2人ともどこか悪いんですか?」
「どこか悪いように見えるか?」
「ですよねぇ」
とまたベルはカラカラと笑った。
「で、仕事はどうなんだ?あれから体調は?」
とジョルカが聞くとベルは少し顔を赤くし、
「べ、別になんともありませんよ」
と答えた。
その様子を見て、
(なんで俺に赤くなるんだ?)
とジョルカは首を傾げた。
「でも、なんていうのかな?漠然と、もっと別の仕事をしてみたいとか……そういった思いはありますね」
……とベルは言い、少し間が空いた後、
「なぁんて。ちょっとセンチなベルちゃんでした」
とまたいつものベルに戻る。
(掴みどころが無い子だな)
とジョルカが思った時、また後ろから
「お兄ちゃん」
と声がかかった。振り返るとソラがいた。ソラは、ジョルカに追いつくなり、
「お兄ちゃん、今日はうちに帰るの?」
と聞いてきた。
「ああ、ちょっと親父に相談があってな」
と話していると、ソラがベルを少し不審そうに見ている。
「お兄ちゃん、この人は?」
「ああ、最近知り合ったベルさんだ。ソラ挨拶して」
と言うと、
「ソラ=カーティスです。アッシュの妹です」
と顔を引き攣らせながら、満面の笑みを作って挨拶した。
「ベル=スターリングです。よろしくね」
と簡単にベルは挨拶した。
「じゃー私は、この辺で」
と別れの挨拶をし、ベルは自分の家路についた。
家に帰ると突然の帰宅だったので夕食は用意されていなかったが、リアが簡単な物を作ってくれた。
その食事を食べながら、ソラが本格的に魔鉱医学の進学を考え始めた事をソラから聞いた。ソラは、将来の夢を楽しそうに話していた。
そうしているとガルドが帰ってきた。
「帰ってたのか?大方、鍛錬が行き詰まったから相談に来たってトコか?」
と鋭く聞いてきた。
「まぁそんなトコだ。よく分かったな」
と返事をする。
「俺も昔、静心流の鍛錬を受けたからな。みんながだいたい何処で行き詰まるかは察しがつくわ」
とガルドが言った。
「なぁ親父、なんかヒントか何か教えてくれよ。親方が何も教えてくれないんだ」
「何も教えてくれんだろうな……それは、アルカナが人それぞれ違うように、鍛錬の仕方も人それぞれ違う。でもなジョルカ、1つだけ言っておく」
「1つだけ?何だそれは?」
「それは能力の指向性だ!!」
毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。
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ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。
十条 閃




