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第2章 15話 酸素欠乏症

グレートランド歴1772年8月3日

ルネとベルは、職場の班長からこってり怒られた。当たり前だ。休憩時間を1時間近くオーバーしたのだから。

でもルネとベルは、2人して満足そうにしていた。ルネはA級魔鉱夫を、ベルはイルブと呼ばれていた少年を、それぞれ別の少年を気に入ったのだから。

そして、こってりしごかれたにもかかわらず、2人は明日も一緒に今日と同じ場所へ行く計画を立てた。


グレートランド歴1772年8月3日

ジョルカとイルブは、最後にジグルと別れて1週間近い時間が流れていた。

ジョルカもイルブも手探りながら、魔鉱夫として鍛錬を積んでいた。1週間の鍛錬と意識してアルカナと静心流"零式"を使う事により、ジョルカは以前より2倍以上の成果を出す事に成功している。

イルブも最初は、ジョルカの見様見真似で作業していたものの、今では人並みのA級魔鉱夫としては通用するぐらい鍛錬されていた。

2人で休憩していると、ジョルカが言った。

「イルブ、気づいてるか?」

「はい。勿論気づいてますよ。隠れてるつもりですかね」

とイルブは笑った。

「まぁ鍛錬の邪魔さえされなかったら、いいんだけどよ」

とジョルカは言った。

「同感です」

とイルブは返事をする。

「どうする?あの女の子達がいる場所、通気が悪いと思うんだよ。酸素欠乏症にならないか?」

「そうなんですか?僕は魔鉱山で働いた経験が浅いので……分かりません」

とイルブは返事した。

「まぁここにいてる間は、気にかけてやろう」

「分かりました、先輩」

とイルブは返した。


グレートランド歴1772年8月4日 PM1:00

また2人は、昼の休憩に落ち合った。今日は、2人して体調が悪いといい、早退の許可を貰ったのだ。そうして2人して例の場所に向かった。

昨日は探り探りだったが、今日は昨日より場所が分かっている分、早く目的地に到着した。

そして2人で2人の様子を見た。ベルの興味はイルブだったが、A級魔鉱夫の仕事ぶりには舌を巻いた。その姿は、同じA地区で働いている他のA級魔鉱夫より2倍、いや3倍のスピードで仕事をしている。それは素人目から見ても明らかだった。その姿にルネも呆気に取られている。ルネの視線は、A級魔鉱夫に釘付けだった。

ベルは、イルブと呼ばれている少年に目を向けた。色が白く線も細い。およそ筋肉と呼ばれるものは常人程度であった。がその仕事は、隣にいるA級魔鉱夫には遠く及ばないが、他のA級魔鉱夫と比べても遜色ないものだった。

そうして、イルブは休憩に入った。その様子を少し離れた場所から、ベルは様子を見ている。

ただ休憩をしていたイルブを見ているとベルは、少し眠くなってきた。ベルはせっかく早退したのに、ここで眠るわけにはいかないと目をこすろうとした瞬間、隣でドサっと音がした。

音がした方を見ようとするベルだったが、何故か意識が遠くなるのを感じた。そして意識が遠くなったベルが最後に見たのは、倒れたルネの姿だった。


グレートランド歴1772年8月4日 PM1:30

どれぐらい時間が経ったのか、ベルには分からなかった。気がつくと頬を軽く叩かれ、目の前にイルブと呼ばれていた少年がいた。

「私……どうしたの?」

とベルが言うと、

「よかった。意識戻ったんだね」

とイルブと呼ばれる少年は、ニコッと笑顔を見せた。

薄れゆく意識の中でも、イルブという少年の笑顔に少しベルは赤面した。

(笑顔初めて見たけど、かわいい……)

と顔をそらした瞬間、ビックリする景色がベルの視界に入ってきた。ルネが例のA級魔鉱夫とキスをしていたのだ。

「えっ、えっ!!」

とベルは声にならない声を上げた。が少し落ち着くと、キスではなく人工呼吸をしていたのだと気づいた。

ベルはルネに近づき、

「ルネ!ルネ!」

と声をかけると、

「う———ん」

とルネは目を覚ました。

(よかった……)

とベルは胸を撫で下ろした。が少しして、別の考えが頭をよぎった。

目を覚ました時、イルブの顔が近くにあった。という事は……

ベルは、イルブの顔を見て意を決して聞いた。

「あの……イルブさん」

と恐る恐る声をかける。

「あれ?なんで僕の名前を知ってるの?」

とイルブは、意地が悪い笑顔を作って、ベルを見ていた。

ベルは、

(恥の上塗りだ!!)

と顔を赤面させながらも、

「イルブさん、私、イルブさんに……」

と言い淀んでいると、

「ごめんね。えっと……」

「ベルです。ベル=スターリングです」

「じゃーごめんね、ベルさん。ベルさん、酸素欠乏症だったから、空気がいい場所に移動して人工呼吸を施したよ」

と言葉では謝っているがイルブは、笑って告白した。

その告白の後、ルネの意識もしっかりしてきたところで、ルネはベルと同様のリアクションを見せた。


少し時間が経ち意識がしっかりしたところで、ルネとベルは2人に見送られて居住区まで上がってきた。

ベルは、イルブを見て唇を指で触りながら言った。

「イルブさん、ありがとうございます」

「無事で良かったよ、ベルさん」

とまたしてもニコニコと笑顔で返すイルブに、ベルは若干の恨めしさを感じた。

隣を見るとルネが、A級魔鉱夫にお礼を伝えている。

ベルは最後に、

「また会いに行ってもいいですか?」

と聞いた。

「いいけど、次からは隠れず会いに来てね」

と笑って答えたイルブに、ベルの恨めしい感情は倍増した。

毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

「続きが気になる」「また読みに来てもいい」と思っていただけましたら、ブックマークしていただけると励みになります。

ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。

十条 閃

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