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第2章 14話 ベルとルネ

グレートランド歴1772年7月26日


来る日も来る日もつまらない。


とめどなく流れてくる魔鉱石を、右から左、左から右へ。使い古されたツルハシやシャベル、一輪車、手押し車、バケツ……その他の道具を片付けたり、魔鉱夫の元に届けたり……


ベルは、魔鉱山で3年弱程働いていたが、もう仕事に嫌気がさしていた。


5つ程先輩だったカトリーヌ先輩は、20歳になると同時に、B級魔鉱夫の男と結婚した。ベルは、結婚して退社するのに憧れる反面、先が見えている魔鉱夫との結婚にも失望していた。


しかし、毎日いつも朝が来て、仕事をこなし、家に帰り、寝て、また朝が来る。その生活から抜け出すには、結婚するのがベルにとって1番手っ取り早い気がしていた。


一緒に働いている魔鉱夫もベルに親切な人が多く、ベルに優しかった。というのも、ベルは基本的に陽気で明るく人懐っこい性格で、しかも見た目も目が大きくエメラルドグリーンの瞳は黒目がち、ピンクの髪を三つ編みのツインテールにし、15歳にしては女性らしい体つきをしており、男性魔鉱夫からは人気の的だった。


だが当のベルは、あまり魔鉱夫を結婚の対象として見る事が出来なかった。ベルは、スラム街で生まれ育ち、父も魔鉱夫でそういった男性に囲まれて育ったが、イマイチ、マッチョ、筋肉質の男性が好きになれなかった。


ベルの初恋の相手も、同じ初等学校に通うスラム街では珍しい商人の息子であった。周りの同じ女生徒は、運動が出来る男の子に熱を上げていたが、ベルは違った。休憩時間も寡黙に本を読み、決して運動が出来るタイプではなかったが、偶に見せる笑顔と、勉強が出来る知的な色白の商人の息子に惹かれた。


その事を周りの友達に話すと「変わってる」とか「趣味が悪い」など散々な事を言われ、次第にベルは女友達と男の子の会話をしなくなった。


そうしてやがて月日が流れ、ベルも初等学校を卒業し、他の女生徒と同じように13歳になる頃には、C級魔鉱夫として魔鉱山で働き出した。




グレートランド歴1772年7月30日


そうした鬱蒼とした気持ちで日々を過ごしていたベルだったが、同僚の女性魔鉱夫のルネからちょっとした噂話を小耳に挟んだ。


それは数日前から、A地区に新しいA級魔鉱夫が2人雇われたという噂だった。ベルは正直言うと、A級でもB級でも魔鉱夫自体に興味はなかった。だから噂を耳にしても全然興味が湧かず、ただ自分の仕事を黙々とこなす毎日だった。




グレートランド歴1772年8月2日


ベルは噂話を忘れかけた頃、同僚のルネが、休憩時間に新しく入ったA級魔鉱夫を見に行きたいと誘ってきた。


ルネの話では、新しく入ったA級魔鉱夫は年が近いらしく、まだ17歳という話だった。


(17歳でA級なんて余程仕事が出来るのね)


とベルは単純にそう思った。がそれ以上の興味はない。が、余りにルネが熱烈に新しく入ったA級魔鉱夫にご執心だったので、ベルは仕方なく同調した。そうして「次の休憩時間に、一緒に見に行こうよ」と熱心にルネに誘われ、ベルは仕方なくついて行く事にした。


ベルとルネは、休憩時間に魔鉱山の現場近くに到着した。が当のA級魔鉱夫の姿が見られなかった。


仕方がないから出直そうと提案したが、ルネは引っ込みがつかないらしい。周りの魔鉱夫たちに「新しく入った魔鉱夫は、何処にいますか?」と聞いている。ベルは、それを見て、


(ルネったら、もう!早く魔鉱夫と結婚したいのね。カトリーヌ先輩と一緒ね。まあ気持ちは分かるけどね)


とルネの心中を察した。


そうしているうちに、めぼしい情報が入った。その話では、そのA級魔鉱夫は現場の前線にはいないらしい。どうやら2人組で、独自の採掘現場で作業をしているらしいというものだった。ルネは元よりこの話を聞いて、さすがのベルも少し興味が湧いた。


A地区で新しく働く新人が人と違う場所で働いている?


ここまで聞いたが、さすがに休憩時間を超えての探索(男漁り)はダメだとルネを諌めて、明日一緒にそのA級魔鉱夫を探す事にした。




グレートランド歴1772年8月3日


当日、昼休憩、ルネとベルは昨日と同じ場所で落ち合うと、昨日聞いた場所の近くまで2人で向かった。


魔鉱夫は、だいたいの場所と道順を説明してくれたが、詳しい場所は他の魔鉱夫の間でも謎らしい。


その話を聞いて、ベルも俄然興味が出てルネに負けじと謎のA級魔鉱夫を探索した。


昼の休憩では時間が足りないかも……その短い時間で会えるかな?ルネとベルは探索を続けた。最後の魔鉱夫と別れてどれぐらい歩いただろうか……


20分?いや30分。もう引き返しても昼の休憩には戻れないなと少しルネとベルが後悔し始めた頃、小さく声が聞こえた。


「イルブ、少し休憩して"零式"に入ろう」


「そうしましょう先輩……」


と。


岩場の影から、ルネとベルはそっと頭を出し様子を伺う。いた!!2人いる。とルネとベルは、顔を見合わせた。


そしてベルは、会話で「イルブ」と声をかけられた少年を見て、胸が騒ぐのを感じた。

毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

「続きが気になる」「また読みに来てもいい」と思っていただけましたら、ブックマークしていただけると励みになります。

ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。

十条 閃

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