第2章 13話 壱式・エドガー登場
グレートランド歴1772年7月26日
ジョルカ達3人は、訓練の出発地点である小高い丘に向かった。
「じゃー親方、ばっちり指導頼むぜ!!まずは、「壱式」とかいうのを教えてくれるのか?」
とジョルカは、鼻息を荒くして言った。
ジグルは、「そうだな」と一言相槌を打ち、
「これから約2ヶ月は、"壱式"の鍛錬に時間を当てる」
ジョルカとイルブは、はやり立っていた。
「静心流転流アルカナ法は、主に3段階、"零式" "壱式" "弐式"に鍛錬が別れてる」
「"零式"は、心を「無」にし、マナの消費や、マナの獲得、吸収を促進する法」
「"壱式"は、アルカナそのものの質を高める法」
「"弐式"は、己のアルカナを加工、変形、変質させ……まぁ平たく言えば、戦闘用、諜報用、索敵、まぁ色々あるが、実戦の為の法だ」
イルブは、意味が分からず聞いた。
「"零式"は分かりました。でも"壱式"の質を高めるってどういう事ですか?例えば、僕の"エアノーラ"だとどうなりますか?」
「俺も分かんねぇ。魔鉱石をツルハシで振ってたのが強化されてるってのは聞いたけど、どう変わるんだ?」
と2人は、同時にジグルに質問した。すると、
「ジョルカは、お前のアルカナは単純だ。強化の場合は、同じ作業をするでも疲労が半分になったり、固くて掘れなかった岩が掘れるようになる」
「そして、イルブの"エアノーラ"つまり気体化だが、似た能力を持った奴がいねぇから正確な事は言えんが、全ての気体が持つ特徴ならなんでも体現出来ると思う。正確な事は言えん。それは、自分が自分で確かめろ」
2人は、それぞれ「壱式」を極める事で、
ジョルカ(なら、今までより多くの魔鉱石を採掘できるって事か?)
イルブ(使い方によっては、瞬時に移動したり、同時に広い空間を支配できる?)
とそれぞれ違う思惑を考えた。
ジグルは、
「今からA地区の魔鉱山に移動する」
と言った。
「魔鉱山?」
と2人は声を揃えて言った。
「そうだ。魔鉱山だ。魔鉱山ほど、"壱式"の鍛錬に優れた場所は、無い。この"壱式"の鍛錬で、一番大事なのは、アルカナの使用とマナの消費、そしてマナの回復だ」
察しのいいイルブは、
(そうか。魔鉱山なら、アルカナを使ってもその場で"零式"を使えば、魔鉱石からマナを吸収できるって事か……)
と理解した。
ジグルは、そんなイルブを見て、
「イルブは、分かったようだな。ジョルカお前は、今まで以上に魔鉱石を掘り続けろ。目標は、魔鉱夫として働いてた時の5倍の魔鉱石の採掘だ」
「5倍!!」
ジョルカは驚いた。ジョルカは今まで必死に仕事をこなしていたわけではないが、手を抜いたつもりも無かったからだ。
それを2ヶ月で5倍。と愕然としているジョルカを見てジグルは、
「ジョルカ。お前は、5倍と聞いて驚いてるかもしれんが、5倍なら十分可能だ。お前は、2週間前、いや落盤事故の前と言ったらいいか、その時と違う。お前は、アルカナ使いとして覚醒……いや自覚した。"零式"を覚えた。十分可能だ。後は、意識の問題だ。そしてイルブ」
とジグルは、そのままジョルカからイルブに視線を移す。
「イルブも魔鉱石を掘って基礎体力をつけてもらうが、お前は、魔鉱石の採掘より寧ろ、イメージトレーニングに力を入れろ」
「イメージトレーニング?」
流石のイルブもピンと来ない。イメージトレーニングと言っても、何をどうイメージすればいいのか分からなかった。
「これは、俺も教えてやりたいが、お前の能力は分かっても、訓練方法、本人が持つアルカナのイメージは人それぞれだから教えてやれないんだ」
ジグルは、2人を見据えた。
「何度も何度もアルカナを使い、自分の能力を時に高め、時に試し、時に思考する。そうしてアルカナの質を高めていく」
2人は黙って聞いていた。
「お前たちのセンスなら、2ヶ月経つ頃には、アルカナ使いとしての能力は、1段階、いや2段階は上がるだろう」
そう言ってジグルは、2人を残し立ち去ろうとした時、
「親方、何処行くんだよ?」
とジョルカが言った。
「暫く、俺はやる事があるからな。鍛錬サボるんじゃねぇぞっ!!」
と一言残し、ジグルは採掘場から離れ、A地区の炭鉱エレベーターに向かった。
残された2人は、お互い顔を見合わせた。
「やるしかねぇか」
ジョルカが言い、
「そうですね。でもイメージトレーニングってどうしたらいいか?」
とイルブは、困惑した顔を見せた。
「俺は今まで以上に魔鉱石を掘ればいいだけだけど、イルブは漠然として、分かんねぇな」
とジョルカも同調した。
「取り敢えず、僕もツルハシを持って、魔鉱石を掘ります。掘りながらイメージトレーニングする内容を考えます。基礎体力もいると言っていたので」
とイルブが答えると、ジョルカは相変わらずポジティブな奴だなとイルブを見た。
「じゃーやりますか!!先輩」
「おう、へばんなよ。魔鉱夫は、楽な仕事じゃねぇぞ」
とお互いがお互いを鼓舞した。
炭鉱エレベーターから降りたジグルは、A地区の現場事務所に向かった。
すると現場事務所には、魔鉱山A地区の担当者がいた。
「どうですか2人は?」
と男は聞いた。
「2人とも見どころあるぞ。なにしろ"零式"を10日足らず、ジョルカに至っては、5日でものにしたからな」
「そうですか……」
と男は頷いた。
「さすが、ガルドの旦那の息子って事だけはある」
「俺もエドガー、お前も"零式"をマスターするのに、1年はかかったからなぁ、ワハハ」
とジグルは笑った。
その話を、髪のサイドの部分だけ白く染まったスカーフェイスの男は、静かに言った。
「私たちの長年の夢が叶うのは、もうそこまで来てるかもしれませんね」
毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。
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ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。
十条 閃




