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第2章 11話 零式・最終試験

グレートランド歴1772年7月20日

ジグルを含め、3人は初日に集合した小高い丘に集合した。

「泣いても笑っても、静心流"零式"の鍛錬は、今日で終わりだ」

イルブは不安そうな顔をし、ジョルカはまだ眠そうな顔をしていた。

「「無」の体得が出来ても、出来なくても、この静心流"零式"の鍛錬は、今日で一旦区切る」

「もう少し時間を伸ばせないんですか?僕だけでも……」

とイルブは、自分が「無」の習得に時間がかかる事を理解し、そう聞いた。

「ダメだ。今日までだ。まぁそれにはいくつか理由があるんだが……」

「理由って」

と不安なイルブは続けて聞いた。

「まず、この"零式"は、アルカナを使う基礎体力の底上げをする技術であって、実戦向きじゃないって事だ」

とジグルは説明し続けて、

「細かい説明は省くが、これからドレンの奴を倒すのは、3ヶ月後の予定だ」

「ドレン……」

とドレンの名前を聞いたイルブの顔がキッと引き締まる。

「3ヶ月後だ。3ヶ月しかないんだ。頭のいいお前なら分かるなイルブ?残り3ヶ月弱……基礎体力をつけるより、より実戦的な静心流の「壱式」「弐式」を体得した方が、戦力になるんだ」

(3ヶ月……それに「壱式」「弐式」?)

イルブは、何故そこまで時間の制約があるのか理解出来なかったが、ドレン討伐に皆が協力してくれていると思い、その3ヶ月という制約の事は一旦飲み込んだ。

(今日の結果次第だが、ジョルカの奴は"零式"をマスター出来そうだしな。ジョルカの"零式"の体得が第1段階の最大のノルマだ。"零式"がマスター出来れば、ジョルカはアルカナ無効化が自分で制御出来る)

とジグルはチラッとジョルカを見て思った。そして言った。

「よし。これから場所を移す。着いてこい」

と言ってジグルは歩を進めた。2人は黙ってついて行く。

初日に見た森の中をどんどん進んでいき、やがて擬似太陽フィラメントの光も届きにくくなったところで歩を止めた。

「最終試験は、ここで行う」

とジグルは言った。

「ここで?」

ジョルカとイルブは、同時に声を発した。

「そうだ。"零式"最終試験の試験官は、ここにいる動物、昆虫、他全ての生き物だ!!」

「?」

2人は、意味が分からない。

「イルブ、あそこに見える切り株に座ってみろ」

とジグルは、20mほど先に見える切り株を指さした。

そうしてイルブが座ると、1分もしないうちに、最初は吸血の昆虫に、5分後には野生の山猫に襲われそうになった。

ジグルは山猫を追い払い、イルブと共にジョルカのいる場所に戻った。

「今、イルブには何も説明せず座ってもらった。今から行う試験は、「無」になり、切り株に座り自然と同化しろ」

と言い残し、1人切り株の方に向かいながら「まず見てろ!」と言い捨て、ジグルは切り株に座禅のような形で座った。目を閉じ、手を膝の上に置く。

その様子を2人は黙って見ていた。

がその2人にも、蚊やアブなどの昆虫が寄り付き、山猫も2人の方を見て様子を伺っている。山猫や野生の動物が気になりながらも、2人はジグルの様子をじっと見ていた。

2人は感嘆した。

ジグルが手を膝についたその瞬間から、「無」を発動……いや、発動という言葉は正しくない。「無」の境地にいた。完全に切り株と同化していたのだ。

それから30分ほど経っただろうか。ジグルはスッと目を開け、2人の元に近づいて言った。

「これが最終試験だ」

とジグルは、ニッと笑った。


「試験内容の詳細は、こうだ。イルブとジョルカ、30分で交代。30分間、ここにいる全ての生物に勘付かれなかったら、合格とする」

「……」

2人は黙って頷いた。

「まずは、イルブ、切り株に座って「無」になってみろ」

「はい」

と返事をし、切り株に向かう。と、ものの2分も経たないうちに虫という虫にたかられ始めた。それを感じ取ったイルブは、黙ってジグルの元に戻る。

「すみません。次頑張ります……」

とうつむくイルブの背中を軽く叩き、

「次、ジョルカ行ってこい」

とジグルは言った。

黙って頷き、ジョルカは切り株に座る……

5分……10分……30分が経った。

そしてジグルはジョルカの元に近づき、

「静心流"零式"合格だ」

と言った。

そしてジグルはイルブに言った。

「イルブ、行ってこい」

とイルブの2回目のチャレンジを促す。がイルブは先程と同様、また虫にたかられる。

落ち込むイルブに、

「イルブ、気にするな。前も言った通り、この"零式"の体得には、センスがある奴でも1年近くかかる。ましてや5日だ。こいつが異常なんだ!!」

とジョルカの頭をはたいた。

イルブは落ち込みながらも、3回目、4回目とチャレンジし、今日、時間が来るまでチャレンジを繰り返したが、最長で5分程度であった。

そして夕刻になり、ジグルが言った。

「イルブは、残念だったが、特別に後5日、"零式"の鍛錬をする」

「えっ」

とイルブは、悔しかったのか、後5日猶予が貰えた事に目を輝かせた。

「じゃー俺は、5日間何をするんだよ?」

とジョルカはジグルに問うた。

「何だよ。決まってるだろ」

とジグルは笑って答えた。

毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

「続きが気になる」「また読みに来てもいい」と思っていただけましたら、ブックマークしていただけると励みになります。

ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。

十条 閃

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