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第2章 10話 零式の習得

どれほど時間が過ぎただろう……

2人は、時を忘れた。更に時は過ぎ……

「……ル……ルブ……イル……イルブ……」

とそこそこ大きい声で呼ばれているのに気づき、イルブは我に戻った。ジグルは続いて、ジョルカにも同じように呼びかけている。そしてジョルカも我を戻した。

「イルブ……お前は、いい「無」だった。少なからず能力開発しただけはあるな」

とジグルは少し微笑んだ。

続いてジグルはジョルカに向って言った。

「ジョルカ。テメェ居眠りしてやがったな!!」

「寝てねぇよ!!」

とジョルカは、ヨダレを服の袖で拭きながら言った。

「フッ、お前は大したタマだよ」

とジグルは、イルブと同じように笑って言った。

「今日は、ここまでだ。今日は、零式の基礎「無」を作りやすい環境で鍛錬した」

「先にも言ったが、時間がねぇ。この環境で普通なら1つの季節を費やす鍛錬だが……明日は、また違う環境で行う」

「明日?」

ジョルカは、居眠りしてまだ「無」を感じられなかった事に、少し焦った。

「そう明日だ。明日は、場所を移す」

「何処ですか?」

とイルブは短く質問した。

「明日は、本来、我が流派、静心流転流アルカナ法(略称:"静心流")では、雨が降っている場所なんだが、地下じゃそういった場所もないからな。そこはすっとばす。明日、明後日の2日間は、地下の魔鉱山A地区に場所を借りて行う」

「魔鉱山……なるほど……魔鉱山ね!!」

とジョルカは、何かが閃いた顔をした。

「そうだ、魔鉱山だ」

とジグルは静かに言う。

(そんな出来っこない……)

とイルブは、急な難易度の上がり方に顔を曇らせる。

ジグルはそんな2人の表情の違いを見届け、最後に「今日は、ここまで」と締めた。


帰り道、イルブとジョルカは2人で相談しながら歩いて帰った。

魔鉱山の採掘現場みたいな場所で、どうしたら「無」を感じる事が出来るのか。

「ジョルカさん何か方法ありますか?」

「イルブ、お前何も思いつかないのかよ」

とジョルカは笑って答える。

「何か方法があるなら、教えてくださいよ」

「そうだな。明日上手く行けば、教えてやるよ」

とジョルカは、悪戯っぽく笑った。


グレートランド歴1772年7月17日

そして次の日、A地区魔鉱山での鍛錬が始まる。

イルブは、自分も予想していた通り苦戦していた。そして集中出来ずにチラっと横のジョルカを薄目で見て驚いた。「無」を体得しているかのようにイルブには映った。

ジグルも、そんなジョルカを見て、

(こいつ、本当に静心流転流アルカナ法を2ヶ月で体得できるかもしれねぇな……)

と2日目の鍛錬を終えたジョルカの底知れぬ能力とセンスを感じ舌を巻いた。が、隣でイルブが少し焦った顔をしたのをジグルが見て、

「イルブ、明日もある。気にするな。出来ないのが普通だ。通常の3、4ヶ月かかる鍛錬を1日でしたんだ、素質が無ければ半年以上かかる」

「イルブ、お前も十分センスがある。ジョルカが異常なだけだ」

と慰めた。

「いえ、明日、頑張ります」

と答えて、イルブは自分が自分に驚いた。自分が負けず嫌いとは思っていたが、ここまでだったとは思っていなかった。

過去、兄のホルブに負けじと、いや父に認められたくて、日々、勉学に勤しんでいた時もあったが、ここまで前向きでは無かった。その理由が年の少し離れた兄だったから、ここまで熱くなれなかったのか、今回は年が1つしか離れていないジョルカが相手だったからなのか、イルブには分からなかった。

そうして2日目の鍛錬が終わった帰り道。

「ジョルカさん、どうやったんですか?コツを教えてください」

とイルブは頼んだ。

「そうだな。口で言うのは難しいんだけどな……簡単に言うと、もの凄く集中するって事だ」

と笑ってジョルカは答えた。

「集中?ジグルさんは「無」って言ってましたよ?」

「「無」だろ。分かってるよそんな事。悪いな、俺が口下手で上手く説明してやれなくて……」

「いえ、そんな……でももう少し詳しく教えてください」

「そうだな……さっきも言ったが、とにかく集中する事なんだよ。俺は、魔鉱夫だからな。その時、一心不乱にツルハシを振ってる事があったんだ。その時って何も考えてなかったんだよ。というか何も考えてない時間があったんだよ。「無」ってそれの延長なんじゃないかって昨日思って、今日試しただけだよ」

とジョルカは、ジョルカなりに説明してくれた。続けてジョルカは言った。

「なぁイルブ、イルブもそういった時間があったと思うんだ。お前、落盤事故の時、親方と一緒に爆弾と逃げ道探してくれたんだろ?その時必死になってくれたんだろ?ただ、その時は必死だったけど、危険とか怖いとかそういった雑念がまじった。そんなトコだろ?」

イルブは、その時の気持ちを思い返した。確かにそうだったと思い返した。

「もし爆弾じゃなく、星金貨を探してたなら、上手くいってたと思うぜ!」

と意味が分からない説明をしてジョルカは笑った。

「星金貨なら、煩悩で集中出来ませんよ」

とイルブは笑って返した。

「明日も頑張ろうぜ!」

とジョルカがイルブを鼓舞する。

「はい」

といつか見たあの笑顔でイルブは返事した。


そうして3日目が過ぎ、4日目は、地下水脈の岩場から流れ落ちる冷水に打たれての「無」の習得……

そして5日目となった。

毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

「続きが気になる」「また読みに来てもいい」と思っていただけましたら、ブックマークしていただけると励みになります。

ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。

十条 閃

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