第2章 9話 零式
2人の覚悟の決まった目を見て、ジグルは唸った。
ジョルカの目を見て「こいつのこんな目を見た事なかった」と息を巻いた。
というのも、ジグルのジョルカ評は、「一応S級魔鉱夫を目指してるが熱意は無く、言われた事を淡々とこなす男」ってトコだった。
イルブはイルブで、ガルドに預けられた時から真剣に爆弾の場所や逃げ道を探していた。だがそれは、自分が仕掛けた爆弾のせいで怪我人を出したくないという、言わば動機がネガティブなものだった。それが今は、「悪を淘汰する」という強い気持ちが目に、表情に出ていた。
この2人に、俺、旦那、後、何人か協力者がいれば、念願の革命が成功する事が出来るかもしれん。
とジグルも2人に釣られて、熱いものが込み上げた。
まずは、座学から入った。
ジグルは芝生の上に座り、2人も座るよう言った。
「まずは、基本中の基本「零式」からだ。これは、完全に能力の発動をストップする事に特化した鍛錬だ」
と聞くとイルブは、
「僕は、意識しないと能力が発動しないですよ」
と質問した。するとジグルは、
「イルブ、能力の発動時間は、どれぐらいだ?」
「1時間ちょいってトコです」
と聞くと、ジグルは、
「それは短いな。「零式」を覚えると、マナの許容量が増える。またマナの吸収スピードも上がる」
「でも僕、能力の発動時間を1時間にするのに、5年かかりました」
とイルブは答えた。
2人の会話を聞いてもジョルカはピンと来ず、割って入って質問をした。
「俺は?」
と慌ててジグルに質問する。
「この「零式」が大事なのは、ジョルカお前だ。「零式」は、さっき言った通り、能力者のマナの許容量を増やし、能力者の発動時間または使用回数が増やせる。これは、イルブに当てはまる。ジョルカお前の場合は……」
「俺の場合は?」
とジョルカはジグルの言葉に反応する。
「旦那に聞いた話だが、お前の能力はオートで発動している。俺も薄々は感じていたが、旦那に聞いて、やっぱりと思ったもんだ」
続いてジグルがジョルカに説明する。
「ジョルカお前の能力は、周りの人間を無効化する。しかもそれはオートでだ。それを「零式」を覚える事で、オート発動を止める事が第一目標だ」
今度は、イルブが割って入る。
「ジョルカさんが「零式」を極めれば……ジョルカさんが近くにいても、"エアノーラ"が使えるんですね!」
「そうだ。そして、ソラちゃんもお前に能力を使って、その肩の骨折も「零式」を使えば、立ちどころに治せるだろう」
「!!」
ジョルカは、「零式」の重要性を理解した。
「まずは、「零式」を覚えろ!時間が無い。7月20日、つまり5日間でクリアしろ!!」
「……」
「どうした返事は?」
とジグルが言うと、
ジョルカ「おっ、おう」
イルブ「はっ、はい」
と2人は返事する。
返事をする2人ではあったが、返事の意味は全く違った。
ジョルカは、能力の鍛錬などした事がなかったので、ピンと来ない返事。
イルブは、能力の開発に5年費やした。それぐらい本来、能力の開発には時間がかかるのだ。5日は短すぎると思いながらの返事だった。
「よし。早速だ。時間がねぇ」
と言い、すぐに芝生から立ち上がり、少し小高い丘の上に立った。2人も同時に立ち上がり、ジグルについて行き、ジグルの前に向かい合う。
「まずは、「無」の練習からだ!!」
ジグルは言った。
「まず、何事をするにも、人を模倣する事から始まる。これは能力開発に限った事じゃねぇ。料理人も魔鉱夫も小間使いも一緒だ」
ジグルが胸の前で両手を合わせ、
「2人は、俺に倣え」
と言い、静かに目を閉じた。2人は、それに倣う。
「心を静かにしろ。何も考えるな。雑念、煩悩、全てを捨てろ」
2人は、必死に言われた通りにしようとする。がつい余計な事を考えてしまう。
「無だ!真っ暗な世界ではない。暗闇で見えないんじゃない。無がある訳でも無い。「無」だ」
ジョルカは目を閉じ、真っ暗な世界を思い浮かべていた。だがそれを見透かしたかのようなジグルの一言だった。
時が静かに過ぎていく。
毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。
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ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。
十条 閃




