第2章 8話 師匠との出会い
グレートランド歴1772年7月16日
ジョルカがガルドから衝撃的な内容を聞いてから、数日経った。
ジョルカとイルブは、ガルドからドレンの討伐を見据え、能力の向上を目的とした肉体と精神の鍛錬をするよう命じられた。ガルド曰く、ドレンも能力者。今、戦っても返り討ちに合うと。
イルブは尋ねた。
「でも、どうやって鍛えるのですか?」
するとガルドはニッと笑い、
「能力向上の為に、とびきりの能力者の師匠を用意した。2人とも当日を楽しみに待ってなさい」
そう言われて、肩の痛みがまだだいぶ残るジョルカとイルブは、ガルド邸から1kmは離れた、この地下スラムでは珍しい、地下とは思えない緑に囲まれた広場に出た。
「地下スラムに、こんな場所があったんだな……」
とジョルカが言うと、
「地下スラムでは、珍しいんですか?」
とイルブが問い直す。
「ああ、地下は日光が届かないからな……こんな草や木が生い茂った場所を今まで見たことがなかったよ」
と木の根本にジョルカは視線を移した。そこには金属配管から温水がチョロチョロと染み出し、上を見上げると魔鉱石を動力にした日光代わりの「擬似太陽」フィラメントの光が木々たちに生命を与えていた。それを見ているとイルブが、
「地上は、こんなところばかりですからね。僕は、金属と機械が並んだスラムの方が衝撃でした」
と意見を交わし、2人はしばらく無言でその緑を眺めていた。
「しかし俺たちに、能力の向上の仕方を教えるって誰だ?」
とジョルカが言うと、
「ジョルカさん分かりませんか?」
とイルブは、少し笑みをもらした。
「?まぁ俺は、自分が最近能力者って事を知ったばかり。親父も母さんも、ソラも能力者って知らなかったんだぜ。他に能力者なんて心当たりないぜ」
とジョルカは腕を組み考える。それを見てイルブが、
「僕も能力者が誰なんて分かりませんけど……消去法です。ガルドさんは忙しい。リアさんも家事がある。ソラちゃんは能力をそんなに使った事がない」
うんうん、とイルブの予想を黙ってジョルカが頷く。
「で、2人とも知っている人間で且つ死んだことになっている人間……ってなると」
と言ってイルブがジョルカを見る。
「もしかして親方?」
とジョルカがイルブの目を見る。
「10中8、9」
とイルブは答えた。
(親方が能力者なんて聞いた事ないがな……まぁさらけ出すもんでも無いけど……)
と2人で喋っていると、そこに聞き覚えのある野太い声が聞こえた。
「おうっ、ジョルカ肩の調子はどうだ?イルブは、ウチのわけぇのが世話になったな。ありがとよ」
ジョルカが聞いたことのないジグルの明るい声を聞いた。
「どうだ驚いたか?」
と聞くジグルに、2人は顔を合わせ、
「いえ全然」
と答えた。
フンと鼻を鳴らし、ジグルは言った。
「話はガルドの旦那から聞いてる。俺は、ガルドの旦那に昔、世話になった。だから、お前たちにも力を貸すぜ!」
2人はジグルに、
「よろしくお願いします」
と挨拶をした。
ここでジグルは、顔を引き締めた。
「俺は、ガルドの旦那に世話になった。恩人と言っても過言ではねぇ」
と前置きをし、
「そのガルドの旦那の息子、そしてイルブ……お前は、魔鉱夫の、俺の命の恩人だ」
「その2人を中途半端な鍛錬をして、死地に送り出す事は、出来ねぇ」
一拍おいて、ジグルは言った。そして、
「命が惜しかったら、死ぬ気で着いてこい!!」
そのジグルの真剣な目、声、言葉に2人の気持ちはより一層覚悟が決まり、改めて、
「よろしくお願いします」
と返事した。
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十条 閃




