第2章 2話 ジョルカのアルカナ
ガルドは、重く口を開いた。
「ジョルカ、お前の能力は——類まれ。貴族でもレアなアルカナを持っている」
俺は、その言葉に息を飲んだ。
(俺自身が気づかなかった能力が、しかも複数?)
ガルドは一拍置き、続けて言う。
「まず1つ目は、肉体強化だ」
「マナが近くにあれば、オートで——まぁオートというのは、能力者の中では、意識しなくても、という意味なんだが」
「体力が続き、肉体の筋力が増加され、敏捷性、腕力が通常より強化される」
(……だからなのか?人並みの体力の俺が、魔鉱山では人並み以上——いや、人より3倍は働けたのは?)
思い返せば、不思議だった。
小休止も、昼の休憩も、仕事が終わった後も。他の魔鉱夫が汗をかき、身を粉にして働いているのに、ジョルカだけは、いつも涼しい顔をしていた。
複雑な思いもあった。
(A級魔鉱夫という称号も、努力で勝ち取ったものだと思っていたけど……)
ガルドが、ジョルカのそんな浮かない表情を察したように言った。
「ジョルカ。魔鉱夫の仕事は、単に肉体が強ければA級になれるものじゃないそんなことは、5年近く働いたお前が1番分かってるだろ」
「ああ」
ジョルカは返事をした。少し晴れない気持ちはあったが、気持ちを入れ替える。
「で、複数あるって言ったよな?親父」
「そうだ。お前は、少なくても2つアルカナを持っている」
「少なくても?」
「そうだ。確定で2つだ。貴族の血を受け継ぐ者は、全員アルカナが2つある」
「だがジョルカ、お前は——おそらく3つある」
「そんな事、どうして分かるんだ?」
「それは、まだ言えん。すまないが、言えないんだ。だが、確信はある」
(……ここまで頑なだと、問いただしても言ってくれないだろうな)
ジョルカは、一旦気を取り直した。
「で、後の2つの能力は、何なんだよ?」
詰め寄るように聞く。
「1つは、分からん。まだ覚醒してないのかもしれない」
「だが、もう一つは——分かっている」
(……)
固唾を呑み、ジョルカはガルドの言葉を待った。
「その1つは——アルカナの無効化だ!!」
ガルドは、これまで以上に低い声で言った。
「アルカナの無効化?」
ジョルカは反復し、頭の中で反芻する。
意味が分からず、問い直した。
「そのアルカナの無効化ってのは——そんなに凄い能力なのか?」
ガルドは、低い声に加え、これまで見たことのない真剣な眼差しで、ジョルカの目を見て言った。
「アルカナの無効化……それは、このヨーク——いや、もしかすると、この国の根幹を変えてしまう」
一度間を置く。
「それほどの能力だ」
リアは、いつか来ると思っていたその日が、今日だったと覚悟していた。
ソラは、言葉の意味は分かる。だが、事態の大きさが理解できていない。
ジョルカも、ソラと同じだった。
……
静かに、時間が過ぎていく。
―――――――――――――――――――――
ガルドが、少しして口を開く。
「口で言うより、目で見た方が早いな」
そう言って、テーブルにあったポークステーキ用のナイフを、右手に取った。
「親父?」
ジョルカが言った瞬間——ガルドは、そのナイフで自らの左手の人差し指に、数ミリの傷をつけた。
その傷から、ジワッと血が滲み出す。
ジョルカとソラは、その様子を黙って見ている。
「ソラ、こっちに来なさい」
ガルドが、隣に来るようソラを促した。リアがソラを見て、軽く頷く。
リアは、そのままジョルカの隣に座った。
ソラは、リアがいた席に座り、ガルドを見る。
ガルドが、優しくソラに視線を向けた。
左手の人差し指をソラに差し出す。
「ソラ、この傷を直せるか?」
「やってみる」
ソラが両手をガルドの人差し指にかざそうとしたとき——ガルドは、一旦それを制止した。
「ジョルカ、こっちに来なさい」
ジョルカが、ガルドに近づく。
「ソラ、やってみなさい」
ソラは軽く頷き、先程の続きを始めた。
手をかざし——さらに目を閉じ、集中する。
1分ほど経っただろうか。
ソラが、目を開けた。
ガルドの人差し指からは——何の変化もない。
「これが、ジョルカ。お前の能力、アルカナの無効化だ」
ジョルカは、黙っていた。
「ジョルカ、少し離れなさい。そうだな——3mほどでいいか」
ジョルカは、それに従う。
「ソラ、もう一度やってごらん」
ガルドが、優しく言った。
ソラは、再びガルドの人差し指に手をかざす。今度は最初から目をつむり、集中した。
すると——
ジョルカは、目を見張った。
ガルドの人差し指から、血が止まる。1分も経たないうちに、傷が塞がった。
「これが、ソラの能力。そして——ジョルカのアルカナの無効化だ」
……
ジョルカは思った。
(俺の能力って——役に立たないじゃないかよ)
それを打ち消すように、ガルドが言った。
「ジョルカ。アルカナの無効化は、最強の切り札になる!!」
「しかし——今のままでは、両刃の剣だ」
ジョルカは、黙って聞いている。
「ジョルカ。お前がアルカナを使いこなせれば、味方の能力を最大限に引き出し、敵の能力を最小限——いや、ゼロに出来る」
ジョルカは、慌てて言った。
「っておいおい、敵ってなんだよ。味方ってなんだよ」
ガルドが言った。
「それを、今から説明する」
また、重苦しい空気が——4人を包み込んだ。
毎週 月曜 木曜 18時投稿予定です。
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ジョルカたちの行く末を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。
十条 閃




