第2章 1話 カーティス家の真実
何分かの時間が経った。いや、実際はそれほど経っていない。正確には、数秒だったろう。
ガルドが重く口を開いた。
「リア」
母を呼ぶ。リアがガルドの横に座った。
まだ食器が並ぶテーブル。俺の正面に親父が、ソラの正面にリアが座る。
「儂達家族は、能力者——いや、元貴族だ」
ガルドが言った。
「俺の父の爵位は、元侯爵だ。今は男爵だがな。リアの父も……ソラ、お前達のおじいちゃんも、元伯爵だった。今は子爵だ」
「今は、まだスラムに来た理由は言えないが——約20年前まで、儂とリアは地上で生活していた」
ガルドは続ける。
「お前達の知っての通り、貴族は地上でアルカナを持ち、自由に生活している。当然、元貴族だった俺も、リアも……」
ここでガルドは、俺とソラを見つめ直した。少し間を空けて——
「当然、貴族の血を引くジョルカ、ソラ。2人共だ」
ジョルカは、慌てて言った。
「いや、俺、何の能力もないぜ!!体力だって人並みだし、空も飛べねぇし……それに——そうだ、火も起こせない!!」
ソラは、黙って聞いている。
「ほらソラからも何か言えよ」
俺は、突然のことに、いつもより饒舌になっていた。
ガルドがソラを見て言った。
「心当たりがあるんだな?」
ソラは黙ってうつむいている。
「あるのね?」
リアが言う。ソラが、黙って頷いた。
「悪かったなソラ」
ガルドが謝った。
「薄々は、ソラの能力が医療、治癒、回復系だと思っていたんだ。お前が覚醒すれば、お前の身に危険が及ぶかもしれない。そう思って、魔鉱医学からは遠ざけようとしていた」
「いずれ、打ち明けないとは思っていたんだが……」
ジョルカは、ソラを見つめた。
「ソラ、本当なのか?」
ソラは、まっすぐジョルカを見て頷いた。
(だから、ソラは魔鉱医学を志し、親父は法学科の進学を進めたのか……)
「でもね。でもね」
ソラは、泣きそうな顔をした。
「お兄ちゃん、直せないの……」
ガルドとリアは、顔を見合わせた。
「ソラ、いいのよ」
リアがソラのもとへ行き、優しく抱き寄せた。
俺は、落ち着いた。気持ちだけは。
だが、どこか心ここにあらずといった感じだ。
ソラも、少しずつ落ち着き始めている。
それを見て、ガルドが言った。
「儂は、月に1回程度、予知夢を見る。まぁ当たる確率は、70%ぐらいだけどな……」
「……まだあるんだが」
言葉を詰まらせるガルドを見て、今度はリアが口を開いた。
「私はね。人の嘘が分かるの」
「なんて言ったらいいか——共感覚っていうのかしら。人が嘘をついたり、心にやましい事があると、その人からオーラのような感じで……その人が、赤く見えるの」
「赤く見えたら100%。ピンクなら50%。白なら0%——そんな感じかしら」
ガルドが、また口を開いた。
「ソラは、治癒系。回復とも呼ばれる能力を持っている」
少し落ち着いたソラが言った。
「わたし、昔は分からなかったんだけど、人とか動物が怪我してるの見てると、気になっちゃって……」
ソラが続ける。
「ある時、怪我をした猫の傷をさすってあげたら——傷が、直って」
「そこから……」
「でもやっぱり、お兄ちゃんだけ直せないの!!」
「他の人も直せたし、動物も直した事あるの!!」
「でも——お兄ちゃんだけ、直せないの!!」
ソラが、また泣き出しそうになった。
今度は、リアが口を開く。
「ソラ、いいのよ」
「お兄ちゃんはね。今のソラには——直せないの」
俺は、もちろん意味が分からない。
(俺だって、人間だよ)
そう思う程度だった。
リアとガルドは、顔を見合わせた。
そして、ガルドが言った。
「ジョルカ。お前の能力はな……」
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十条 閃




