↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第十二章 堕天アルスメード

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/95

№91. 極限凍結

「はぁっ、はぁっ……」


(メルナ……!)


 ボクは立っていた。心臓が止まったと思ったが、むしろ今は活発に拍動している。なぜかを推測できるほどの頭はない。けれど確かに、一度止まった命がまた吹き返していた。


「思った通り、やはり死ななんだか」


「……あぁ、生きてるな」


 相変わらず、身体の熱さも痛みもある。ある気がする。実際、左手の指はないままだし、裂かれた右頬もそのままだ。つまり夢だったというわけでも、治ったというわけではない。——蘇った、とでも言うべきか。


(適応じゃよ。剣聖の加護の成長、それが適応したんじゃ)


(……適応って、何にさ?)


(『死』にじゃ。そなたがこの世に転生したのが一度目の死。そこから度重なる戦闘での瀕死状態を学習し、数多の人死にをも学習した。その末の成長というところかの)


 死への適応、そう来たか。やけに冷静なのはそれこそ一度死んだ——死にかけたからか。熱い頭も妙に冷えている。ボクが見てきた死……恐らく心に深く刺さった命。


(十七秒じゃ。そなたの死んでいた時間は。気を抜くなよ。たとえ死に適応したからと、二度も三度も乗り越えられるものではない)


「ふぅーっ……」


 複雑な気分だ。生きていたのは良し、けれど人の死を超えての生。まさに繋がれた命だ。無駄にはできない。負けも許されない。許す気もない。


「おいで、アマテラス」


「おう、行くぞ、メルナ!!」


 すっかり元気を取り戻した声に呼応し、魔力が底から溢れ出す。姿が変わり、残された右手で刀を掴む。しかし……うん。悪くはない。元より刀を片手で振ることは容易い。魔力も体力もかなり回復した今、さっきのような醜態を晒すこともない。


「行くぞ、ロード……」


「来い、メビウス! ここで世界の決着をつけるぞ!」


 魔力を纏いながら突進、魔力は氷点下よりぐんぐんと下げていく。熱も風も静止し、ただボク達だけが突き進む。刃を光らせ、振り上げ——一閃。


「『氷結月燈(ファルナ)』!」


「くっ……ははっ! 良いぞ、良いぞ!」


 全霊の魔力と腕力、そして鋭さを叩き込む。ロードの燃える聖剣が受け止めるが、止まるのは刃のみ。そこから溢れる『月の焔』が全身を包み込み、大地ごと燃やし始めた。


「ふふっ……この冷気、我の魔力をゼロにしてしまうとは……。死に瀕してまた格段と成長したらしい」


「高音の焔は無駄だろうな、お前には……!」


 そのまま目一杯の力で叩き込み、大地に沈めていく。メキメキと音を立て、崩れた地面がさらに沈んでいった。その地面を次々に凍らせ、また砕き。ボクのフィールドが完成していく。


「何を、企んで……ッ!」


「お前に勝つ計画だよ!」


 一瞬、刃の接触箇所を氷で固め、不意を突く。その硬直の最中に身体を捻り、横に回転。勢いを加速させて地下深くへと蹴り飛ばした。頬からは血を飛ばしながら、痛みも忘れて下降する。


「ぐっ……くくっ!『天翼(サンタルーツ)』!」


「熱《あづ》ッ……!!」


 地中を砕いて落下しながら、振った剣が見えない刃を飛ばした。一つ一つは小さな、けれど霧雨のような斬撃。加えて太陽の熱を纏ったそれは、掠めただけで皮膚も何もを溶かした。


「っ……。ははっ、落ちてきたな」


「互いにな……!」


 キン、と高い音が鳴る。洞窟の更に下。地上からは何十、何百メートルも地下深く。剣が交わり、火花を散らす。圧倒的な熱と冷気がせめぎ合い、空気がバチバチと激しく揺らいだ。


「ふはっ、一太刀ごとに剣筋に磨きがかかっているな。良いぞ! メビウス!」


「良かねぇよ……っ!」


「ッ……!?」


 刀を掴む右手に力を込め、そして交わる聖剣を押さえつける。ロードのガラ空きの右半身、そこに指を失った左手を打ち込み、魔力を爆発させた。


「『火炎氷結』……」


「くっ、ぐぁっ……!」


 腹の底から湧き上がる『月の焔』の魔力が左腕の魔力神経を通り、外界へと放出された。太陽の熱を吸収し、その全てを冷気に変換。彼の身体を氷に呑ませ、一瞬の停止時間を作る。すかさず剣を弾き、もう一つの魔力を刀に込めた。


「『御光陽炎《ごこうかげろう》』!」


 青白い炎が周囲を凍てつかせながら一閃、斬り開く。シアが負わせた傷を上書きするように、肩から袈裟斬りに、地下空間ごと斬り裂いた。


「はぁっ、はぁっ……化け物が。……っ!」


「己を……棚に上げるのか……? ふふ……」


 左手で顔を押さえながら片膝をつく。決壊したように、鼻から溢れる赤黒い液体。——限界、か? そろそろ……確かに一度死んだ肉体だ。元より動けるものじゃない。


「楽しかったぞ、メビウス。……死の危機を感じた」


「げほっ、げほっ……。はっ、ボクはメルナだ……」


 聖剣アルスメードが首に当てられると同時に目から熱い液体が伝い落ちた。視界が赤に滲み、鉄の匂いでいっぱいになる。成長する剣、なかなか良かったが……届く前に限界が来たか。見上げてもここは地下空間。確かな光は見えないが、ロードの太陽は消え失せたか。


「さらばだ。……メルナ」


「……言っただろうがよ、お前に勝つ計画だって」


「なに……!?」


 ボクの首を刈り取るだけの力が剣に伝わるより早く。垂れ流しにしていた魔力を集め始めた。キラリと、一帯が輝いた。——小さな氷塊。落下しながら作っていた氷のフィールドが牙を向く。


「まだまだァ……戦えるってんだよ、こっちはさァ!!」


「はっ、良い目だ……!」


「『極限凍結《クリスタル》』!」


 氷の破片が嵐のように渦巻き、突風を巻き起こした。熱を剥ぎ取り、岩を削り。ボクの魔力に従って下から氷を張っていく。視界が白み、揺れる黒髪も白くなる。ふと一息、空気を染めると瞬きの次。目の前には高い高い——天まで穿つ巨大な氷の柱がロードの姿を呑んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。