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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第十二章 堕天アルスメード

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№86. 五人の覇王

「お姉様ー? ただいま参りましたー」


「おぉ、メルナ。こっちだこっち」


 庭の奥、木陰の下のベンチに座っていた。いつもの騎士服とは違う、フランクな服装が目に映る。高貴さは醸し出しつつ、どこか柔らかな雰囲気だ。


「何、そう重要な話というわけでもない。新聞の類は読まぬか?」


「えぇ、恥ずかしながら。文字は苦手で」


「強要はしないが、情報は大事だぞ」


 アルさんがポンポンと隣を叩き、軽い会釈をしながら促されるままに腰を下ろす。爽やかな良い香りが漂うが、今は落ち着いて、うん。余計なことは考えないでいよう。


「しかし、新聞に何が……」


 新聞を広げ、見出しから順番に読んでいった。最初はよく分からなかったが、なるほど。書かれている内容は例の件か。大層な話ではあるが、当人からしてみればすでに知っている話。


『先日起こった天変地異、その原因を討ち滅ぼした三名について、聖議会が——』


 何かと長ったるく書いてあるが、要はボクらがロード・アルスメードを滅ぼしたという旨の記事だ。これといって目新しい情報もなく、ボクらの活躍が書かれているだけ。そう思って視線をズラした先。思いもよらぬ文面が目に入った。


『今回の件を受け、聖議会はバラムランデ王国の第二王女(アルナリュート・バラムランデ殿下)を正式に聖議会に迎える他、議席順位と旧七大覇王《セダレクト》を調整したことを発表』


 新議員『アルナリュート・バラムランデ』。議席順位第十二位。加えて旧議席順位五〇位『メルナ・アマテラス』。議席順位第三位、新しい覇王にその名を追加。


「へ……っ!? ボ、ボクが——」


「メルナが覇王じゃと!? よもやそこまで認められたとは!! 流石じゃ、やったな!」


「あ、う、うん」


 クソっ、先を越された……! 本当はもっと叫びたい気分だったが、ツクヨミにこうもリアクションをされては今さら「うわぁ!」とか言えないじゃないか。タイミングを見誤ってしまったか……。


「……ん? この間に落ちた七大覇王《セダレクト》ってロード、ジハーク、それからオルトレイだよな。そこにボクが加わって……?」


「ほれ、よく見てみろ」


 アルさんに指示された通り、また読み進めてみる。世間の期待やらなんなら書かれているが、今はそこじゃないな。調整と言うのだから、もっと色々と変わっているはずだ。


『以下に新しい五人の覇王を記す。これらは聖議会がその能力を保証し、世界最大の武力・脅威および抑止力と認定する。彼ら個人の持つ力は一国軍を凌駕するものであり、決して矛先を向けてはならない』


『龍狩の聖卿』アナスタシア・ドラグメイデン

『竜王』ゼノヴィオ・ジアス=パファルヴェーテ

『古龍』ヴァース・ディカオス

『世界樹の王』ノアス・トラムレン

『剣聖の聖卿』メルナ・アマテラス


——以上五名、新しく五大覇王《クインレクト》とす。


「カッコいい……!!」


 まさかまさかだ。ボクのしたことといえばジハークとロードとの戦いに貢献した程度。まさかここまで評価されてしまうとは。議席順位はテンヤの一つ下のようだし、彼が推薦でもしてくれたのか。いずれにしても、いやぁ……まさかだ。


「……でも、少し複雑でもありますよ。だって、オルトレイとアルさん、ジハークのときはベルアルド兄さんとテンヤ君もいましたから。嬉しいけど、釣り合ってないんじゃないですかね……」


「私は納得だと思うがな。お前は確かに経験は浅いが、アマテラスの剣聖の加護、あの成長速度は目を見張るものがある。今ほどの腕があれば大抵の相手には喰らいつけるし、誰の首も取れる可能性があるというのは大きい」


「そうですよ、メルナ様! メルナ様は私の主。誰よりも強くて無敵なんです!」


 そこまで正面から言われると気恥ずかしいが。二人の言う通りかもしれない。誰かから与えられたもの、それでも良いか。オルトレイからの贈り物とでも思っておけば、あの人も喜んでくれるだろう。


「しかしメルナよ。満足しちゃあいかんぞ。目指すはテッペン、世界一じゃ。筆頭聖卿であるシアは引きずり下ろさなくてはな!」


「誰を引きずり下ろすと?」


「うわぁっ!?」


 いつからいたのか、いつの間にか背後にいたシアの姿に思わず転倒してしまった。びっくりした。昼寝してるというから部屋にいるものとばかり。いやぁ、今日一の大声だったかもな。


「んふふ、楽しみにしとるけん、強くなってよ。うちももっと強くなって待っとるばい」


「……あ、え、それだけ?」


 特に会話をするでもなく、彼女は身を翻してまた部屋へと戻っていった。なんだったんだ、一体。たぶん驚かすために遊びに来たんだろうけど、まさかそれだけなのか。可愛いかよ。


「さて、まぁ何にしてもだな。当分は安静だし、そらそろ私達も戻ろうか。あまり外で談笑していては医者の婆さんに襲われかねん」


「あ、はは……冗談じゃ済まなそうですね」


 ナナの手を借りながら、ゆっくりと立ち上がった。王宮専属の、ヨウコという名の老婆。あの人は腕は確かだが、それに比例するような過激さも持ち併せている。噂ではあるが、怪我人が無茶をしたせいで新しく骨を折られたとかなんとか。嘘とは言い切れないのが恐ろしいところだ。


「また何かあったらお前の部屋にでも行くよ。メルナも、何かあったら遠慮なく私の部屋に来てくれ」


「えぇ、ありがたくそうさせてもらいます。——?」


「……どうかしたのか、メルナ?」


「あ、いえ。何でもありません」


 ほんの刹那、南風がやけに暑い——いや、熱い気がしたが気のせいだろう。こんな寒い季節なんだ。そんな熱が漂うわけもない。しっかりしないと、と頬を締める。そしてまた笑顔を浮かべながらアルさん達と話し、何事もなく部屋に戻った。

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