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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第十一章 真世界

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№73. 大地の下

 昼になるよりも前、日はまだ傾いている。そんな時間にボク達は揃って城を出た。肩にはゼルを乗せて、馬に跨り。向かっているのは天魔の樹海だ。当然のように、ボクはアルさんと同じ馬に乗らせてもらっている。


「その、真世界というのを知ってるんですか? アルさんは」


「あぁ、何度か行ったこともあるよ」


「行ったこともあるんですか!?」


 正直意外だった。ただのイメージではあったが、真世界というともっと入るのも難しいものだとばかり。しかし思えば入り口自体はちゃんとあるのだし、それさえ分かっているのなら行き来はそう難しくないのか。


「じゃあ真世界ってどんなところなのか、少し聞いてもいいですか?」


「そうだなぁ。まず一つ、この世界よりも魔力が濃いんだ。だから疲労が溜まりにくいな」


「それはまた……良い場所ですね」


「そしてもう一つ、大地の下ではあるが明かりがあるから明るいな。高い天井があるんだが、それがところどころ発光しているんだ」


 夜空みたいなイメージなのかな。明るいと言うくらいだからもう少し……昼か夕方くらいの明るさはあるのか。いずれにしても自然に生活はできるのだろう。となると広がっているのは比較的普通な世界なのかな。


「あとは人が特殊とも言えるかな。あそこの住民は食事を必要としない。娯楽としてはあるが」


「それは……質の良い魔力があるからですか?」


「そんなところだ。あとは竜が空を飛んでいるな」


「竜……そんな話でしたね」


 竜王ゼノヴィオもそんなことを言っていたか。つまり真世界には独自の生態系やら何やらがあるというわけだ。食事が要らないならそれも特殊なのか。あるいは竜のような巨大な存在になると食事が必要なのか。話を聞く分には面白そうな世界だな。


「メルナ様は何か、向こうでしたいことがあるのですか?」


「まぁ、ほら。スサノオのことは調べたいけどさ。その辺は希望かなぁ。たぶん簡単には見つからないだろうしさ」


「なるほど。ではあまり、思い詰めることはなさそうですね」


 馬に揺られながら、そんな話をして何時間だろうか。そろそろ日の光は直上の位置になり、樹海の入り口に差し掛かっていた。つい一昨日——それからもう少しだけ前だったか。ひび割れた大地に木が埋まり、異様な場所に変わっていた。


「……おっ、ほら。見えてきたぞ。アレが真世界の入り口だよ」


「おぉ! 一体どんな——」


 指された方向に目線を向ける。何か遺跡でもあるのか、そう思ったボクの目に映ったのはあまりに意外なものだった。確かに入り口、けれどそれは洞窟の入り口だった。それだけなら構わないのだが——


「アルお姉様、ボクの記憶が正しかったらここは……」


「ふふ、あぁ。久しいな。啓示を受けて十番目の聖剣持ちを探しに来たんだったな。ここで悪魔との交戦があったのも記憶に新しい。……アレはどれほど前だったかな」


 大きな洞穴、奥には明かりの一つもない。岩肌ばかりの自然、そしてボクがこの世界に落とされた場所だ。新しく生まれ変わり、右も左も分からなかったとき。淡い光を頼りに外界に出て、アルさんに拾ってもらったんだ。


「ここが入り口だったんですか! ってことは上に上がらなかったらあの後真世界に行っちゃってたのかぁ」


「あれ、結局お前はなんでこんなところにいたんだっけ?」


「……えっと、あの、アレですよ。気づいたらいたって言いますか、まぁいいじゃないですか」


 そう、気づいたらいたんだ。その前にホルネィ様とのあれこれや転生前後のことはあるが、嘘ではない。何にせよ、細かく説明するような話でもない。


「メルナ様とアルナリュート殿下はここで出会ったんですか。その話は詳しくないので新鮮です」


「ははっ、別に話すほどのことでもないしね。……それで、お姉様。ここから馬はどうするんですか?」


「降りるが、連れて行くぞ。外に置いて襲われたら困るからな」


「なるほど、分かりました」


 ゼルを馬の背中に置いてから降り、その洞窟の入り口へと登った。そこからは下へと進んでいるが、今思えば階段のように歩きやすくなってるらしい。大きな馬も注意すれば踏み外すことはない。


「……なァ、小娘。俺様は腹が減ッたぞ。スルメをくれ」


「ほんと好きなんだな、お前。我慢しろ」


「いいじャねェかよ。くれよー」


 馬の背中でくつろいでいるバカ猫は無視しつつ、薄暗闇へと進んでいく。不安なのか、無意識に馬を撫でながら、けれどなかなか到着しなかった。距離で言うと相当……日光はほとんど届かないほどなのだが。


「ふふ、そう焦ることもない。地下ではなく、大地の下なのだ。そう簡単に届く世界ではないのだよ」


「……そうなんですか。それでも、暗いのは怖いですよ。ねぇ、ナナ」


「え? いや……あ、はい。怖いです」


「はっはっ、大丈夫だと言っているだろう。光も上下から差しているのだ。確かに明るくはないが、真っ暗にはならないよ」


 そうは言われても、言い得ない不安が湧くんだよなぁ。なんか……お化けとか出そうで。お化けは嫌だなぁ。呪い殺されたりしそうだもんなぁ。斬れないだろうし。


「ほら、そろそろ到着だ。ほら、見てみろ」


「……わっ、わぁああ!」


 ボク達が歩いていたら岩肌の洞窟は、いつしか大きな木の根の内側に移り変わっていた。目線の先、広がっていた空間に目を輝かせる。見下ろすと人が歩いており、見上げると空を埋め尽くす謎の光。巨大な木——真樹の根に包まれつつも、その隙間から無限に広がる大地。


 発展した都市はどこか近代的……いや、近未来的なものを感じさせた。数十メートルに及ぶ高さの建物、それが連なり、蜘蛛の巣のような橋を掛けている。言うなればそれは、夜の東京を眺めているようだった。


「スゴい……ですよ、お姉様! これが真世界ですか!」


「本当に、幻想的ですね……!」


「ふふ、それは良かった。聞くよりよっぽど美しいところだろう」


 返事をすることも忘れ、ただその風景に見惚れていた。外の混乱も忘れるほどに、ただひたすらに壮大。ただただ悠然に構えていた。

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