↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第十章 天魔の樹海

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/95

№71. 夜の休み

 白い湯気に包まれて、ボク達は大浴場でお湯を浴びていた。ナナに背中を流してもらい、そのまま湯船へ。できるだけ視線は彷徨わせずに空か天井に向けている。


「ふぁ〜。気持ち良い〜」


「色々あったからな、無理はない」


 アルさんは銀色の髪を揺らしながら、そっとボクの近くに身を沈める。心臓がドキリと跳ねるが、そんな様子は見せないように。顔が赤いのはお湯が気持ち良いからだ。


「……メルナ様、この左腕は?」


「ん、あぁ。ジハークとの戦いで色々あってね。えーっと……貰ったって言うのかな」


「腕を? 珍しいこともあるんですね」


 ナナの疑問はもっともだが、珍しいで片付けられるものなのか。こんなことないだろ、普通。大物なのかなんなのか。心配させないに越したことはないけど。


「はぁ。いやぁ、久しぶりだな、こうして一緒に休むのは。お前はどうも、一人で入りたがるから」


「はは……まぁ、はい。緊張しちゃいますんで」


 中身が健康的な男子だからな、綺麗な女の人と入るのを躊躇うのも当然だ。まぁ、たまには一緒に入りたくもなるけどね。こうやって誘われなければ自重はしてるし。うん、何も問題なし。


「何にしても、私としては心配でたまりません。近頃は悪魔だアルスメードだ。皆様には平和に過ごしていただきたいものです」


「それはみんな一緒だよ。私も兄上も、メルナだってそうさ。誰も災いを求めてなんかいない」


「そうなのでしょうが——」


 瞬間、無機質な音が響いた。——カン、カン。金属を叩くような高い音。王宮に誰が。敵だとして、こちらは丸腰だ。どうすれば……。思考もまとまらないうちに、ソレが入ってきた。


「……あ、なんだ。ヨミちゃ——」


「メルナー! 余を置いて行くでない! 寂しいではないかぁ〜!」


「わっぷ!」


 アマテラスが鞘に収められたまま浴場に入ってきた。そしてそのまま壁に立て掛け、ツクヨミがボクに飛びつく。錆びないのかとも思ったが、思えば聖剣。そんなことにはならないか。


「ちょっとちょっと、和服は脱いで……お湯には濡れないのか。ボクに触れてるだけだね」


「当然じゃ。余は濡れたくないでな」


「それにしても、随分と自由に動き回るじゃない。そんなに動けるなんて、ボク初耳なんだけど」


「少しずつじゃよ。自由が効くようになってな。元より多少は動けたものの、パパ様と触れたせいかの。思ったより自立しておるぞ」


 ツクヨミはいつものようにボクの首に巻き付き、鼻歌を歌いながら右に左に揺れていた。重さがないから良いものの、湯に浸かりながら服着た少女を肩車するのはなんとも違和感だ。


「そうじゃ、メルナ。そなた、解放中の尻尾や角も洗ってもらったらどうじゃ?」


「え、アレって洗うものなの?」


「そりゃあ、毎度新しいものとして生えてるわけじゃないからのう」


 これもまた初耳だ。アレってツクヨミの身体のパーツが生えてるんだよな。ツクヨミって洗わなかったら汚れる存在なのか? じゃあ自分で洗ってくれとも思うが、濡れたくないからボクに洗ってくれと……。


「ヨミちゃん、部屋に戻ったら拭いてあげるから。解放ってめちゃめちゃ疲れるんだよ。使いすぎると血吐くし」


「安心せい。魔力を使わなければ疲れることもない。気になるなら力の大半は余が預かっておこう」


「そ、そんなこと言ってもさぁ、アレってスゴい——」


「ほれ、そなただけだぞ。洗いたくないって言っとるのは」


 ツクヨミが尻尾で指し示した先、アルさんとナナが獲物を見るような目を向けていた。マズい。何がマズいって、あの角はめちゃめちゃに敏感なんだよ。たぶん尻尾もだろう。だからマズい。オモチャにされることなんて目に見えてるんだ。


「メルナよ、メンテナンスは大事だ。私達で清めてやろう」


「あ、はは……いいえ! 拒否します! ボクが後でヨミちゃんを拭いてあげるので——」


「えいっ」


 ツクヨミが指を振ると首を包む柔らかさが消え去り、同時にボクの髪が伸びた。いや、それだけじゃない。腰から黒く太い尻尾が生え、水面に小さな角が揺れていた。


「……へっ? な、なんで?」


「余が強制的に解放してやったんじゃ」


「相変わらず美しいお姿ですね、メルナ様。では、隅々まで綺麗にして差し上げましょう」


「待っ……やぁー!」


 熱かったのは覚えている。尻尾や角を丁寧に洗われ、鱗の隙間なんかも細かく。のぼせたわけではないはずだが、浴場を出て着替えるまでボクの脚は上手く動かすこともできず。ただ担がれながら、元通りになった自室へと運ばれていた。


「メルナ様、お湯の準備できましたよ」


「はぁ、はぁ。……ヨミちゃん、身体拭いてあげるから出てきなさい」


「……はぁーい」


 まだ熱が引かないまま、実体化したツクヨミを膝に乗せた。そして湿った布をその肌に当てる。滑らかな尻尾、ボクのそれとは違い、感覚はさほど通っていないらしい。


「あぁ〜、気持ち良いのぉ」


「絵になるなぁ、メルナ」


「嬉しい言葉ですけど。ここ、ボクの部屋ですよ?」


「ふふ、まぁ良いではないか」


 良いのはそう。ボクだってアルさんと話していられるのは嬉しいものだ。とはいえ、こうも当たり前に居られると調子が狂う。嬉しいけど。


「聖議会まで三週間ですか。しばらく時間がありますね」


「ん? まぁそうだな」


「……ねぇ、アルお姉様。真世界に行きたいです」


 その一言に彼女は目を見開いたかと思えば、柔らかい笑みを浮かべた。ボクがそう言ったのに明確な理由があるわけではない。が、せっかくの時間。真世界に行くにはうってつけだと、そう思ったのだ。

第十章完結、ありがとうございます!

公開可能な知らなくてもいい設定を一部まとめてみました!


◇テンヤ・イガラシ・アークバスター——前世は五十嵐天夜、当時は中学1年生、病死によりこの世界へ。赤子に転生した直後に捨てられ、老いた魔導師に拾われた。彼が亡くなるまでずっと山奥で暮らしていたため割と常識に疎い。ピーマンが嫌い。何という話でもないがタケノコよりもキノコ派。

◇クリオラ・ガラングレイロード——齢140を超えるお爺さん。ガラングレイロードの初代保持者でもある。高齢ではあるが病の一つもなく、杖を使うこともない。かつては覇王の一人に数えられていたが、70年以上昔のことであり、覚えている者は多くない。最近の老人はよく「最近の若者は」と言うので嫌い。尖った若者が好き。ドーナツも好き。

◇ヴァース・ディカオス——悪魔の始祖であり不死身、神っぽい存在。彼自身は戦闘や殺戮が趣味というわけでもないが、悪魔という立場であるためなんとなく悪っぽい雰囲気を醸し出している。漏れ出る力が弱い龍(魔王〜大魔公級)を生み出してしまい、それらはよく人間と争っている。実はアナスタシアと仲が良く、たまにプリンを貰うことも。好きな食べ物はもちろんプリン。プリンをあげると大抵のお願いは聞いてくれる。迷ったらとにかくプリン。


 あらゆる種族が使っているエネルギーは魔力であるが、龍族は仙気と呼ばれる特殊なエネルギーも持っている。仙気自体が特殊な力を持っているわけではないが、魔力を流す際の潤滑剤となったり特殊な能力を引き出す際のエネルギー源である。これはメルナも持っており、解放状態の変身はこの仙気によるもの。普段はツクヨミがセーブしている。イタズラにも使える。


☆もしよろしければブックマーク・評価等も頂けると幸いです。第十一章以降も応援のほどよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。