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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第九章 聖議会

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№60. 聖紋の耳飾り

「全員、静かにしなさい。これでは何も進まないではありませんか」


「おっと、これは失礼。どうぞ進めてくださいな」


 教皇様の言葉に、やっと部屋は秩序を取り戻した。まったく、なんの時間だったのか。呆れたくもなるが、今は話を聞くとしよう。


「さて……今更ではあるが、改めて自己紹介を頼むよ」


「あ、はい! えと、メルナです。メルナ・アマテラス。『剣聖の聖剣』アマテラスの……聖卿です」


 突然の振りに慌てて立ち上がった。突然だったが、良い挨拶だったんじゃないか? まぁ、うん。良いって言えるほどじゃなかったかもしれないけど。普通だったろう。


「メルナよ。我々聖議会は君の実力を認め、その力を世間に保証する。我々の仲間となり、その力を人類のために使ってくれるかい?」


「は、はいっ。人類の……はいっ!」


「はっはっ! そう気負わなくてもいいぞ、メルナちゃん。要は影響力を与えるってだけの話さ」


「……言ってしまえばそういうことだ。我々が求めるのは大それたことではない。万が一、混沌に呑み込まれたときに希望の象徴になればいいだけだ」


 それも随分と重くないか、とも思うが。実際ベルアルド殿下も大層なものじゃないとは言ってたし、苦労することは少ないだろう。……と思う。いずれにしても、深く考える必要はないってわけだ。


「よし。ではメルナ・アマテラス。晴れて君も聖議員だ。議席順位は五〇。……では君に最初の任務を言い渡そう」


「あ、あるんですね。そういうのもちゃんと」


「何、難しいことではないさ。バラムランデの近くには天魔の樹海があるだろう? そこの奥にいる大魔公に何やら動きがあるようでな。注意してもらいたい」


「大魔公……ですか」


 とんでもなくビッグな話じゃないか。最高位の悪魔が天魔の樹海に……その向こう側にいたのか? いや、そもそもそっちは悪魔の領域、そりゃあいるのは当然だろうが。


「大丈夫さ。近々、そちらに一人向かわせるからな。もちろん危険がないとは言い切れないが、対抗するには十分な戦力だ。ベルアルド君もいるしな」


「お兄様もいてくれるんですか。聖議員が三人、なら確かに安心ですが。……その一人とは誰なんですか?」


「それは会ってからのお楽しみというやつだ」


 この爺さん……もとい教皇様も、厳格そうな見た目の割にだいぶお茶目だな。お茶目で許されるのはボクみたいな美少女だけだぞ。……仕方ない。今はこの人のお茶目に振り回されてやろう。


「不安と言うなら俺が行こうか、メルナちゃん?」


「オルトレイ、君には君の役があったろう。その話はどうだ?」


「いやぁ、残念ながら何も」


 二人の会話に誰も口を挟まない。オルトレイの役、とは一体。みんなは知ってるみたいだ。ボクだけか、知らないのは。そんな風に首を傾げているのをチラと見て、彼は優しい笑みを向けてきた。


「気になるか、メルナちゃん。何、大した話ではないんだがな。真世界のとある兵器を探していてね」


「真世界……兵器?」


「世界をぶっ壊すって、物騒なものがあるらしいんだ。ただどこにも見当たらなくてね。誰の手に渡る前に封印したいんだが……」


 真世界か。イマイチよく分からないからな。ボクもいつか行こうと思ってるが……兵器か。世界を壊す……彼の様子から、おおよその噂しか知らないようだ。


「それこそ悪魔の手に渡っちゃあ堪ったもんじゃないからな。話が終わったんなら帰らせてもらいますよ。氷娘と一緒にいたくないんでね」


「えぇ、私からもお願いします。ぜひ帰ってください」


「やれやれ、君達と来たら……。だが確かに、話は終わりだ。お疲れ様、メルナさん」


「あ、いえ、お構いなく」


 そう言うと、彼らは次々と部屋を出ていった。オルガリアとルミナス、それぞれ挨拶はしてくれたが……短かったな、本当に。何のために呼ばれたんだ。まぁなんかオモロかったし良しとするか。


「さて、俺達も帰るとするか。……と、その前に。メルナ、右の耳を貸してくれ」


「えっ……癖《フェチ》?」


「君は俺をなんだと思ってるんだ。いいから、ちょっとしたプレゼントだよ」


 警戒しつつも、そっと頭を傾けた。何をするのか、恐怖はないが、この人のことだ。ロクでもないことかもしれない。……でも紳士だもんな。変なことはしないか。


「よしっ、これでオーケー。ほら、似合ってるだろう?」


「……これは?」


 差し出された鏡を覗き込むと、そこにあったのは相変わらず可愛らしいボクの顔。……に、金色のイヤリングだった。それも何か、綺麗なのは間違いないが、不思議な形の。


「刻まれているのは聖紋と呼ばれるものでね、教皇様から連絡を頂けるんだ。俺は指輪だけど、メルナには耳飾りが似合うと思ってね」


「へぇ、ありがとうございます! あれ、でもなんでお兄様が持ってたんですか?」


「特に意味はないんだけど。せっかくメルナの柔らかい耳に触れる機会だと思ってね」


「癖《フェチ》じゃないですか」


 なんだかんだと言いつつも、なかなか綺麗なものだ。無意識に口角が上がってしまうのも仕方ない。連絡ということは通信機ともまた違うようだし、かなり快適なんじゃないか?


「……あ、メルナ様にベルアルド殿下。お疲れ様です」


「あれ、本当に迎えに……ていうか早かったでしょ。よくタイミング合ったね」


「はい。殿下からこの時間には終わると言われましたので」


 ボクからしたら相当早く終わったのだが、これが普通の早さなのか? もはや何も話してないんだけどな。まぁ長話をされても面倒なだけか。じゃあ良いことなのかも。


「お似合いですよ、耳飾り」


「本当? 良かった。じゃあ宿に帰ろうか。どっかでおやつも欲しいな」


「えぇ、では買っていきましょうか」


「メルナの祝いだ。俺が奢ってあげよう」


 日暮れよりもずっと早く、まだ昼過ぎくらいか。歩きだすと「もう終わったか?」とツクヨミが飛び出し、特等席だと言うようにボクの首に巻き付いた。時計塔を後ろに、ボク達は聖都の白い街に戻った。

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