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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第九章 聖議会

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№59. 四大聖王

「さぁ、行こうか、メルナ。準備はできてるかい?」


「はい、問題なく。……じゃあナナ。ボク達行ってくるから、待っててね」


「はい。終わる頃にはお迎えにあがりますね」


 ナナとは宿で別れ、剣を腰に差してベルアルド殿下の後を追った。聖都に着いてから早数日、これといって何をしたわけでもない。一応、近くの教会でお祈りはしたが、ホルネィ様から何か返事があったわけじゃないし。……寝てたのかな。


「緊張しますね。聖議会というのは……話にしか聞きませんでしたから」


「ははっ、そう堅くなることはない。どいつもこいつも不遜な奴らだ。合わせろとは言わないが、わざわざ下に出ることもないぞ。……あ、でも教皇様には礼儀正しくな」


「教皇様がいらっしゃるんですか? 参ったな。あんまり作法は習ってませんから……」


「いや、そこまで気にすることはない。あの方は優しいし、作法を求めてるわけじゃないよ。なんと言うか、敬意? 聖ハルノ教会のトップなわけだから」


 じゃあ特に気をつけることはないのかな。それこそ目上の人と思ってればいいか。敬語を喋ってれば大丈夫そうだ。


 宿を出て少し、やって来たのは時計塔。内から漏れ出る魔力は一や二じゃない。加えてどれも分かりやすくデカい。前に感じた異質な気配は……ここにはないが、向かって来てはいるな。やっぱり聖議員か。


「聖議会とは大層な名だが、実態は小さいものさ。強者の集まる中立組織、名前を借りた抑止力みたいなものだな。……そうそう、実はアルの奴も候補者なんだ」


「へぇ、そうなんですか! 強いですもんね、アルお姉様も」


「我が妹ながら、末恐ろしいよ。もっとも、候補者ということはまだもう一歩足りない、ということなのだが。近々そのラインも超えてくるだろうな」


 アルさんは強い。それは確かだが、聖議会に入るには及ばないらしい。それでも、彼の言葉が適当ではないことは分かった。兄としての期待か、はたまた根拠があるのか。


「ふふ、気になるのなら帰ったときに確かめてみるといい。まぁ、アルの場合は君より多少の慎重さを求められる立場でもあるし、注目も聖剣持ちの君ほどではないが」


「……お兄様は慎重ではないですよね。王太子なのに」


「慎重じゃないわけではない。ちょっとした見聞を広めるための旅、というのかな。もちろん長旅はしていないが、父上がそうしろというのだから仕方なかろう」


 仕方ないと言う割に心底楽しそうな顔をするなぁ。相変わらず、バラムランデ王家はストロングスタイルなんだから。彼ほどの実力があれば外に出ても安全、という信頼でもあるんだろう。……自由にさせてもらってるボクが言えたことじゃないか。


「大変なんじゃな、王族というのは」


「あ、君はアマテラスの意思、だっけ?」


「そうじゃ、よく知っとるな。いかにも、余はツクヨミじゃ」


「ヨミちゃん、姿を出しちゃダメだよ。説明が面倒くさいからね。……ん、何か声がするな」


 時計塔内部、その階段を上り、一際大きな部屋の前までやってきた。会議室、と札に書かれているからここがそうなのだろう。会議室には似合わない怒声が響いてるが……。


「——はッ、氷娘が大層なことを言うじゃねぇかよォ。こちとら遠路はるばる来たってのに、てめぇなんかの一言で帰るわけねぇだろォが」


「帰れなんて言ってませんよ。あなたはこの場に相応しくない、目障りだから私の視界に映るなと言ったのです。流石は炎小僧、どうやら頭まで沸いてるようだ」


「おいおい、言い合いはやめねぇか。新人ちゃんがビビったらどうすんだ」


「何言ってんだ、カトロフ。んなんじゃビビらねぇだろうよ。俺は気に入らねぇから言ってんだ。外野が止めんじゃねぇぞ」


 うん、ボクには分かるぞ。オルガリアとルミナスが言い争ってるんだな。まったく、なんだかんだと言ってるようだが……こんな雰囲気の中で入れるほど大物じゃないんだぞ。


「……お兄様、ボク、怖いです」


「なッ……! よし、俺に任せろ。おい、お前達! 声を収めぬか! 我が愛しき妹が怖がってるではないか!」


「なんだ、うるせぇ奴かと思ったらお前か」


 ボクの潤んだ瞳にすっかり負けたようで、ベルアルド殿下は率先して部屋の扉を開けてくれた。中はすっかりピリついた空気で、居心地が悪い。思ったとおり、熱と冷気がせめぎ合っている。


「さて……今日の主役も来たところだ。君達も静かにしなさい。何、長話にはならない。争いならその後でするといい」


「……とんでもございません」


「さぁ、君達も座りなさい。ベルアルド君と、メルナさん、だね?」


「あ、はい。失礼します」


 白髪の老人に促され、空いている席に座り込んだ。彼が教皇様か。魔力はさほどだが、確かに貫禄のような、威圧感がある。炎と氷の二人と、もう一人いるな。カタロフと言ったか。聖剣持ちじゃなさそうだ。


「数が……少ないですね」


「すまないね。一応、全員に通達はしたんだが、なかなか忙しいようで。しかしそれは、認めているからでもあろう。新しい仲間を」


「聖卿を認めないという方が、無理がありましょう。私たちも、認めてないから集まったというわけではありません」


 そういうことなら良いんだが、ただ興味がないようにも思えるんだよな。そもそも何人で構成されてるのかも知らないが、四人で半数はないだろう。


「まぁ俺としては、そこの氷娘は来なくて良かったんですがね。空気が冷えてたまったものじゃない」


「ことあるごとに突っかかるようですね、あなたは。頭を冷やしたらどうですか。氷漬けにして差し上げますよ」


「おいおい、良い加減にしろ、お前ら」


「……なんだ、一体。聖議会はこんな低俗なものだったか?」


 オルガリアとルミナスの言い争いの中、ガチャリと音を立てて扉が開かれた。二人の押し合いを新しい魔力が押し潰す。咄嗟に視線を向けたが、見るまでもなく分かる。強い、明らかに。


「久しぶりですな、教皇サマ。俺は部屋を間違えたか?」


「いや、ここが会議部屋で間違いない。それより来るとはな」


「オルトレイさん、来るんなら言ってくださいよ。あんまり急だからビックリしたでしょ」


「ふん、何を言う。来るも来ないも俺の自由だ。それとも何か、くだらない言い合いをするようなお前達の許可がいるか?」


 先までのとはまた違う圧迫感が部屋を包む。オルトレイ、とそう言ったのか。七大覇王《セダレクト》……四大聖王《フィアレクト》の一人、それが彼か。彼もまた、聖剣持ちではない。見た目はただの中年の男、だが魔力の重さは別格だ。ずっと感じてた異質な魔力は彼のものだったか。


「しかしオルトレイ、来るなら一言欲しいですよ。なんでまた……」


「なんてことを言うんだ、ルミナスちゃん。なぜって、新人が来たんだろ? 挨拶をと思ってな。……君か?」


「あ、はい。メルナ・アマテラス、この度は聖議会に呼ばれて来ました」


 突然の視線に、無意識に背が伸びる。分からない、何を試されるのか。最悪、認められなくても問題ないとして、彼がどんな人柄かも分からない以上、下手な真似は——


「メルナちゃん……月の神の名か。良い名だな。アマテラスというのも可憐で美しい響きだ」


「は、はぁ。ありがとうございます。メルナはアルお姉様……大好きな恩人に付けて貰った名ですから」


「ふぅん……ちょっと幼いのがもったいないが、うん、実に良い。麗しい娘だ。……ふふ、来て良かった。こんなに良い女なら来た甲斐あったな」


「おい、俺の妹に手を出すんじゃないぞ。いくらオルトレイ、アンタと言えど許さないからな」


 なるほど、心配無用だな。ただの女好きのおっさんだ。セクハラには気をつけなきゃいけなさそうだが、ボクがどうこうする必要はないか。確かにルミナスに対する口調も柔らかかったし。……うん、怖いけど怖くはない。

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