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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第九章 聖議会

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№54. 聖議会の招待状

「しかしアレだなぁ。聖卿にもなって、一気に追い抜かれたようで複雑な気分だよ、私は。もちろん嬉しいけどね」


「そんなことないですよ。確かに強くはなりましたが……安定感って言うんですかね。ボクはまだムラがありますから」


「それを踏まえても、だよ。一騎打ちをしたら、私は敵わないだろうな。……ふふ、鍛え直さなければ、騎士団長の名が廃りそうだ」


 アルさんとはそんな言葉を交わしながら、ナナとは色んな土産を楽しみながら。バラムランデに帰ってきたのは二週間と少しだ。その頃にはナナに作ってもらった桜の髪飾りも崩れてしまい、華の少ない格好になっていた。


「……お、メルナー! 帰ったんだな! ほら、俺の胸に飛び込んで——」


「ただいま帰りました、お兄様。疲れてるので、部屋に帰らせていただきますね」


「くぅっ、辛辣だ! 仕方ない、休んでおいで」


 ベルアルド殿下を軽くあしらいながら、ボクはナナと自分の部屋に戻った。アルさんの部屋も近いは近いが、今日はもう少し剣を振りたいんだとか。ストイックだな、相変わらず。ボクはまだ痛みや疲労も抜け切ってはないし、そんな追い込むことはしない。


「ふぅー! 久々の王宮のベッドは違うなぁ。フカフカだぁ」


「お疲れ様でした、メルナ様。ほら、ゼルも出てきてください」


「ん……? おう、帰ッたか。ふにャー」


 ボクが下ろした荷物から、憎たらしい声を上げながらゼルがヒョイと飛び出した。なんでコイツは……いや、いいや。体力の無駄だもんな。


「……ねぇ、ナナ。ボクさ、少し始まりの時代……七〇〇〇年前だっけ。その辺のことを知りたいんだけど、書庫に行けば調べられるかな?」


「そうですね。もちろん、伝説としてしか残ってないと思いますが、バラムランデ王室の歴史は長いですから。地下書庫には大量の書物が置いてありますよ」


「ナナは詳しく知らない感じ?」


「えぇ、まぁ。貴重な文献もございますから、一介の従者が立ち入るのは……。禁止はされてないんですが、気が引けまして」


 封印された本とかあるのかな。悪魔を封印した書物とか、そういうファンタジーチックな。まぁあってもなくてもいいんだけど、ホルネィ様から聞いた『満月の日』について多少は知りたいよな。


 それがロードが言ってた『新月の日』に関係するのか……それは分からないけど。全くの無縁、なんてことはないだろう。特にアイツは六五〇〇年以上生きてる存在。何かしらヒントは得られるかも。


「ナナぁ、ボクもう寝るや。ベッドに寝転がったら急に眠くなってきた」


「承知しました。では明日の朝、シャワーを浴びましょうか。お休みください。夜まではここにおります」


「うん、ありがと」


 ベッドに沈むように、意識が瞼と一緒に閉じていく。長い旅路、怪我はほとんど治ってたが、帰路で疲れが積み重なったからかな。いつになく深い眠りへと落ちていった。


◇◇◇


「メルナ姉さん、いるか? 届け物なんだけど……」


「あっ、ルーク殿下。どうぞ入ってください」


 次の昼、部屋をノックする声に返事をした。朝はナナに支度をしてもらいつつ、書庫に向かったのだが……正直、大したものは見つからなかった。確かに悪魔と人類の争いを描いたものはあったが、目新しい情報は何も。何千年も前のことだ、仕方ないことではあるけど。


「いらっしゃいませ、殿下。お茶をお淹れしますね」


「いや、大丈夫だぞ、ナナ。持ってきただけだ。ほら、姉さん。聖議会から」


「早いですね。わざわざありがとうございます」


 ルーク殿下の手から一通の手紙を受け取り、すぐに出て行く彼を見送った。内容はだいたいこんな感じだ。一つ、ボクのことを十人目の聖卿として認めること。二つ、ボクのことを聖議会に加えること。そして三つ、本部のある北大陸の聖地・ハルノに三ヶ月後に赴くこと。


「なんか……拒否権が与えられてないな」


「まぁ悪くない話さ。聖議会に加盟すれば面倒も多少は増えるが、利も少なくない。金が貰えるしな」


「うわっ、いつからいらしてたんですか。ここボクの部屋なんですけど」


 いつの間にか、アルベルド殿下は部屋に入っており、ボクの背後に立っていた。この速さに驚くべきか、あるいは勝手に入っていることにおののくべきか。判断を下せるほどマトモな状況じゃない。


「……まぁいいや。お兄様、聖議会って、確か悪魔に対抗するための組織ですよね?」


「まぁそんなところだな。正しくは人類の脅威に、だ。ただ、よほどのことでは組織として動くことはないよ。それこそ大魔公が動いた、とか。あるいはロード・アルスメードが動いた、とかな。ただそれも、戦争にならない限りは刺激しないくらいさ」


「なるほど。……人間同士の戦争には?」


「完全に中立だね。個々人が手を貸す貸さないはあれど、組織としてすることはない。もっとも、聖法に反したとなればまた別だが」


 聖法は確か国際法みたいなものだったか。地球で言うところの国連みたいな組織か? 違うとすれば中枢は個人の集まりであることか。影響力や支配力がイマイチ分からない。恐らく、相当に巨大なものだろうが。


「……? あれ、大魔公というと、ロキが連れてるシェリンは?」


「彼女が動いたときに聖議会がロキを送ったんだよ。あの子は悪魔としては新参者だったからね、大魔公と言うほどの力はなかったんだよ」


 だとしても相当強かっただろうけど。やっぱりゼルを始め魔王級とは一線を画すんだろうな。大魔公にも力の差があったとして、一番上はどれほどか。今のボクなら戦えるのかどうか……。


「ははっ、そう難しい顔をしないでくれたまえ! さぁ、メルナ。今日は俺とデートにでも——」


「すみません、今日はミリアお姉様と魔法のお話があって。ではまた。ナナ、行こうか」


「……ふふ。なんて愛くるしいんだ」


 あの人は無敵だな、なんて思いながら部屋を出た。今までは炎と氷、二つの属性を扱っていたが、今はそれが一つになっている。性質の調整はできるものの、なかなか物珍しい力のはずだ。


 ミリア殿下はそれに興奮するかもしれないが……。それでも魔法のことを聞くなら彼女が一番だろう。そんな考えでボクはナナと二人、王宮の廊下を進んだ。

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