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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第八章 ヤタノ大山

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52/60

№52. 勝利

◇◇◇


 白い空間、見渡す限り何もない。そこに一人、変わらず見た目だけは美しい女性がいる。流石に三回目だ。ボクだってすぐに分かる。


「……ホルネィ様、ボクまだ死んでないと思うんですけど」


「おー。確かに死んではないね。だけど君さぁ、ツクヨミを手に入れたんだろう? なら多少は説明しなきゃなって、気絶してる間に呼んだのよ」


「えぇ……。でも女神様の話って長そうなんで嫌です」


「見ないうちに図太くなったね。別に長話にはならないからさ。まぁま、腰掛けなさい。どうせ現世の方の時間は私で整えてあるから」


 そう言いながらヒョヒョイといったように指を振り、無の空間に椅子と机を作り出した。時間も整えてあるって……さすが神様、なんでもありだな。この人の話聞かないと帰してくれないか。


「さぁて、何から話そうかなぁ。……うん、成り立ちからか」


「いや、結論だけでお願いしますよ」


「君、転生させるよ? ねぇ、あんま私のこと軽んじてると勝手に転生させちゃうからね?」


 これが女神様ジョークってやつか。冗談でも、もう転生はしたくないぞ。せっかく今の生を堪能してるんだし。いよいよ諦めて、どこからか出されたお茶を啜りながら口をつぐんだ。


「まずこの世界がどんな形をしているか、知ってるかい?」


「真樹があって、その根を覆うように大地がある、でしょう? 世界樹の森にも行きましたから、その辺の話はおおよそ聞きましたよ」


「うん、その通りだね。その認識は確かだ。じゃあ、その『下』は?」


「……下?」


 ええと、根っこがあって、大地があって、そこから飛び出してる枝が世界樹で。じゃあその下っていうのは……大地と根っこの間か? それとも、そのさらに下? あるのは空洞か、地核かな。いや、この世界は地球のようで少し違うんだから、そんな単純な話じゃないか。


「……ははっ、そう複雑な話じゃないよ。真樹はいわゆる木とはまるで形状が違う。ま、球みたいなものさ。少し違うけどね。その中に、もう一つの空間があるんだ。その空間は『真世界』と呼ばれてる」


「あぁ! ルヴァルクが言ってたな。真世界って……確かドラゴンがそこの住人だったとかなんとか」


「正確には天使だね。あ、別に神の使いとかじゃないよ? 地球のイメージする天使とは違って、まぁ始まりの種族みたいなものだよ。人間もそこの子孫ってわけさ。ドラゴンじゃないけどね。真世界はそれらが生まれた世界、今もあるけど……現世界が大きくなってるから、そんな大きなものじゃない」


 古代遺跡みたいなところをイメージすればいいのかな。始まりの種族、人間や動物の祖ってことは……どういうことだ? たぶん、聖剣よりも前の話だよな。……あ、たぶん関係ない話だ。今のコレは。


「うるっさいなぁ。順を追ってるんだよ。……まぁいいや。で、もちろんその天使ってのの対になるのが悪魔だってのは分かるね? 何十万年も昔のこと、悪魔は『真樹の世界』にはいなかった。『月の民』だったんだ、元々は」


「へぇ、月の。地球の月じゃなくて、この世界の月ってことですよね?」


「もちろん。ザックリ言うとだね、彼らがこの真樹の世界にやってきて、真世界にしかなかった魔力という力を現世界にも持って来た。そこで始まったのが『満月の日』、いわゆる『真樹の世界』の住人と、月の民の争いだ」


 それがおよそ七〇〇〇以上前に始まった、悪魔と人間達の争い……か。今でこそ少し大人しくなったらしい悪魔だが、それでもその争いは終わってないのは明らか。……つまり、その『満月の日』とやらは現世界に溢れ出した者達による殺し合い……。


「……? え、結局、その話が何なんですか?」


「君の聖剣、アマテラスはね、その二つの因子を持ったものだ。厳密には君が、だが。そんな解放なんてそりゃあ大層なエネルギーを使うものさ。気をつけなよ。無理して使い過ぎたらお陀仏ってやつだ」


「なっ……!? ちょっ、それってどういう……」


「私は主神、肩入れはしないよ。与えるのは知識だけだ。じゃあね〜」


◇◇◇


 最後に視界に映ったのは彼女がヒラヒラと手を振る姿だった。肩入れをしない、だって? 嘘吐いたな、あの人。ボクの容姿やらを趣味でいじったくせに……。話に飽きたとかそんなとこだろ、実際は。


「……あ、おはようございます。アルお姉様、ナナ。……クソ猫は寝てんのか」


「っ! 起きたか、メルナ! ……良かった、目を覚まして」


「心配かけました。……シアは?」


「あぁ、起きるな起きるな。寝たままでいい。シアは帰ったよ。特にこっちでやることもないからと。私達は無事、それから藤玄も、道中でロキとシェリンが拾ってくれて、一命は取り留めたよ」


 お腹で丸まったゼルを無視しながら指された方向を向くと、ロキを始め確かに三人、そこにいた。斬られたはずの腕も繋がってるようだし、高級な回復薬ポーションでもあったのかな。死人がないなら良かった。


「ここは……」


「コダマ峠の鷹丸の店だよ。部屋を貸してもらったんだ」


「ヤマト大山の方もお気になさらず。メルナ様が凍らせてくれたおかげで、村は怪我人もなかったようです。氷は溶けなかったようですが、面白かったので置いてきました」


 ナナが嬉々として話した内容は良いのか悪いのか……まぁ面白いなら良しだな。しかし、月の焔は氷の性質を強く出すと溶けない氷になるのか。炎は消化できないとか、温度が下がらないとかかな。強力なことには変わらなそうだ。


「それと、スカートの穴は縫っておきましたのでご安心ください」


「おぉ、助かるよ。でも困ったな。解放するたびに穴をぶち空けるんじゃ恥ずかしくて……」


「それは仕方ないってもんじゃ。余の尻尾は力の象徴でもあるんじゃ、威張れ威張れ」


「わっ、いつでも出てこれるのか。びっくりした」


 嬉しそうに首に巻きつく感触には相変わらず戸惑いながら、上半身だけゆっくり起こした。問題はまだ残っているし、手放しに喜べることもないが。ひとまず、魔剣を勝ち取ったのはボクだ。この争奪戦、勝ったのはボク達だ……!

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