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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第八章 ヤタノ大山

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№50. 『魔剣』ツクヨミ

「ほいっ……ほっ。ロードとは戦ったらいかんばい。アレは勝てる存在じゃないけん」


「……そんなに?」


「強力すぎるけん、解放せんらしいよ。そもそも、堕天の力で不老、地力がまるで別格ばい」


 走りながら、道中はそんな話を聞いていた。若々しい見た目だったが不老……ってのは。つまり六五〇〇年前、最初の時代から生きてると見ていいのかな。サラッと流せる話でもないが……そうか。妙に納得するところではある。確かに勝てる相手じゃない、ってわけだ。


「メルナちゃんは、何で魔剣を探してると?」


「えーっと……。ボクの聖剣ってアマテラスでしょ? で、ここにある魔剣がツクヨミって言うんだけど。その名前が……えっとぉ、竜王曰く繋がりがあるとかなんとか」


「へぇー。よく分からんっちゃけど、ゼノヴィオ様が言うんなら間違いなかね」


 よし、なんとか誤魔化せた。嘘じゃないしな。ボクには前世の記憶があるものの、彼だって同じなんだから。


「……ねぇ、聖剣の解放ってどうすればできるの?」


「声を聞くんよ。ま、なるようになるばい」


「急いでなんとかなるもんじゃねぇぞ。声を聞くんだ。万物には意思がある。もちろん聖剣にも。その意思と声を交わせばいい」


 確かルヴァルクもそんなことを言ってたか。意思なんて、一言で言うには簡単だが。どうにも分かりづらい。いや、声の方か。聖剣って喋るのかな。


「おっと、見えてきたばい」


「アルさん……っ!」


「メルナか!! 良かった、生きてたか……」


 地面を蹴り、彼女の隣に膝を負った。傷は痛むが無視を決めるとして。目の前に映る景色は異様なものだった。一箇所に集まっているアルさん始め、他の全員。そのみんなを制圧しただろう和服の剣士らしい少女と、それと向き合うロード。せめぎ合う魔力が地面にヒビを入れている。


「……アルお姉様、これ、どういう状況ですか?」


「こっちこそなんでシアがいるのか聞きたいが……。あの侍らしい風貌の子が例の少女だ。悪魔に見えるが……シェリンが言うには違うらしいからな」


「あれが……。確かに悪魔に見えますが……」


「あぁ。うちは寄っただけやけん、気にせんとって」


 黒い髪に長い刀……大太刀ってやつか。背丈はボクと同じくらい、和服の隙間から見える爬虫類のような鱗と、ツノと尻尾。当然、人間じゃない。……容姿は可愛いな。魔力は可愛さの欠片もないほど膨大だが。


「おい、シェリン。俺達は帰るぞ。まるで釣り合わねぇ」


「あ……はい。分かりました」


「下にいる、もし生きてたら会うとしよう」


 そのまま、ロキは山を下りていった。良くも悪くも、誰も止めようとはしない。ロードやあの少女にとっても、去るものには用がないのか。ボク達も、今逃げ出せば……。


「……主は何者だ。悪魔ではないな。いや、およそ似たようなものだろうが」


「ふっふっ……余の正体など、興味があるのか? そなたは魔剣がほしい。余は魔剣を渡しとうない。それだけじゃろう?」


「そうだな。単純だ……っ!」


 短い問答、その果てに両者の魔力が交わった。剣と刀が打ち合い、その刃が高い音を奏でる。風圧だけで進めない。化け物だ。ロードも、あの少女も。


「この隙に魔剣を探してくる。たぶん、近くにあるはず……」


「っ、無茶を言うな! あんな戦いの中、隠れられるはずもない!」


「引っこんでいろ、邪魔だ」


「ぐぁっ……!?」


 身体を一歩、出そうとした瞬間。相変わらず、ほんの一瞬のことだというのに。魔力を帯びた斬撃が、遠隔でボクの身体を刻んだ。戦闘中だ、多少は狙いも逸れたようだが、そもそもの規模が違う。


「そなた、よそ見とは余裕じゃな……!」


「っ……ますます何者だ、主は」


「ふふっ、一度の問答じゃ分からぬか。そなたに名乗るような名はないと、そう言ったんじゃ!」


「くっ……おい、メルナ! 動くんじゃない!」


 逆流しているように血が熱い。ここまでボクを動かしてるのは何か。分からないが、退いちゃダメだと、何かが告げている。ボクを突き動かしているのはただの衝動じゃない。何かだ。


「『氷結世界』……」


「頑固な……。そこまで死にたいか」


「『月の海(ルナロック)』!」


「むっ。……ん?」


 戦場を全て凍らせ、それをさらに、鋭利な氷を纏わせた。刃を持った領域フィールド、氷点下の空間。ロードはこともなげに砕き、少女は乱入に驚いたのか首を傾げている。なんで全然効かねぇんだよ……っ!


「はぁっ、はぁっ……くそっ!」


「誰も彼も、鬱陶しい。ならば仕方ない。全員揃って、消えたもらう。『堕天の……』」


「そうはさせんばい! 君はうちが止め……ッ!?」


「……『堕天の権能』、因果は崩壊する」


 シアが二人の迫り合いに割り込み、聖剣でロードに斬りかかった。はずなのに。肝心の彼には刃が触れず、逆にシアが袈裟斬りにされていた。反射……なのか。いや、単にそれだけじゃない。斬られたのはシアだけじゃなく、ボクやアルさん、山の木々にも分散している。


「けほっ、けほっ……。びっくりしたぁ。……まだ解放はしとらんね。対抗するには、うちはこのままじゃいかんばい」


「タフだな、やはり。だから主は厄介なんだ」


「邪魔じゃ、邪魔じゃ! 余はそなたらに興味がないんじゃ!!」


「主は主で懲りぬな……っ!」


 まるで応えた様子もなく、シアが聖剣を解放しようと魔力を練り上げた矢先のこと。二人の間合いを破壊するように、少女が刀一本で振り払った。体勢が崩れた隙に着地、そのままボクの方に……。


「っ、なんで来るんだ! 『月燈ルナ』!」


「メルナ! 逃げろ!」


「そなたも邪魔じゃ! 余の邪魔をするな!」


「くぁっ! メルナ……ッ!」


 炎を纏った一撃、空気を焼きながら飛ばした刃は掠ることすらなく。間に割って入ったアルさんも蹴り飛ばされた。足止めすらできない。せめてもの抵抗、アマテラスを地面に刺し、掴んだまま跳躍。残りカスのような魔力を流し込んで、爆発を起こす。


「『日食(アメノヤミ)』!」


「……っと、うっしっし! その程度で余を止められると思うでない!」


「くっ、このっ……!」


「けほ、けほっ……!? メルナ様!」


 爆炎をまるで意に介さず、むしろどこか楽しげに。彼女は巻き付くようにボクの首に腰を下ろした。太い尻尾がしがみつき、振っても振っても離れない。刀で首を落とされるのか、そんな恐怖に背筋が震えると、タイミングが良いのか悪いのか。ナナが意識を取り戻した。


「そなたは知ってるぞ。メルナ・アマテラスだな!」


「くっ……それが何だ! 離れ、ろ……っ!」


「ふふっ。良い、自己紹介は手短にいこう。余は魔剣、名はツクヨミ!『剣聖の聖剣』アマテラスの意思じゃ!」


「……? ……はァ!? なん……何だって!?」


 まるで時間でも止まったように、ボクの意識は白く浮かんでいた。いや、ボクだけじゃない。みんなそうだ。突拍子のない言葉にしばらく、ただ疑問符と困惑を浮かべるだけだった。

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