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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第八章 ヤタノ大山

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№45. ロキ・ラグナロク

 コテツ村、それもまた和風な建物がポツリと並ぶ土地だった。畑や田んぼ、そこを駆け回る子ども達に、爺さん婆さんばかり。なんともまぁ、和やかな村ではあるが、このヤタノ大山という山に、本当に魔剣があるのか。……二人の聖卿が、そして一人の悪魔か何かが集まってるのか。


「疑うわけじゃありませんが、素直には信じられませんね。こんなにのどかなのに……あ、美味しっ」


「確かに。だが鷹丸が言うなら少なくとも、アルスメードやラグナロク達が集まっているのは確かだ。そんな奴らが一堂に会しているのだから……本当だ、美味しい」


「まぁ、十中八九ここでござろう。策か、多少の目星はあるのか?」


 ボクらが集まっていたのは村の小さな茶屋、白鶴屋というところだった。湯呑みを持ちながら団子を咥えるのは四人。……あ、それと一匹。もちろん、戦闘に疎いらしい鷹丸やルリは着いてきていない。そりゃあ、仕事の範疇じゃないしな。


「正直なところ、策という策は……。できるだけ交戦はしたくない、というところでしょうか。まぁ、話し合いで退いてくれる相手じゃないでしょうし」


「交戦はまず無理だぞ。まともに相手できる戦力じゃない。できるだけ息を潜め、出し抜くしかないな」


「隠密か。拙者は得意でないな。忍びではなか侍ゆえ」


「……ボクも」


 くそぉ、やっぱり無謀だったか? でも……いやぁ。ここでは退けないよなぁ、流石に。ただなんか……あまりにボクに課せられる試練のハードルが跳ね上がりすぎだろ。


「……なぁ、ゼル。お前も手伝ったらもうちょってなんとかならないか?」


「俺様は確かに魔王だが、大魔公級の悪魔は格が違ェんだよ。それにロード・アルスメードッつーと、俺様を捕らえた奴だッて言ッただろ。ロキ・ラグナロクとやらは知らねェがよ」


 一筋の可能性を見るのなら……『ロキ』それから『ラグナロク』、それらが地球の神話から来てる場合、だ。そのロキも転生者の可能性が……あぁ、ダメだった。確か第八の剣、となればラグナロクはずっと昔に誕生したはずだ。ロキが何代目か分からないけど、名前だけじゃ判別できない。


「……でも、二人は人間なんでしょう? 確かに協力関係にはならずとも、少女以外はそう危険でないのでは?」


「んん……どうだろ。ねぇ、アルお姉様。ロキは聖議会の人間でしたっけ?」


「あぁ、その通りだ。大雑把な括りでは人類の陣営、戦争でなければ敵対する理由はないがな」


 ツクヨミがどれだけ大きな意味を持つか、結局はそこが問題になるか。ただどちらにせよ、ロードは無視できない。彼は人間ではあるが、人類の味方でなければ悪魔の味方でもないと言う。加えて最強、まず会いたくない。


「ナナ、確かまだ、彼らはヤタノ大山には入ってないんだよな?」


「鷹丸様が言うには、山の中に実際にいたのは例の少女だけらしいですよ。ただ出立したのが昨日、その時点ではまだ入山していなくとも、今は分かりません」


「魔剣の手掛かりがないんじゃ、どちみち遭遇はするでしょうね。……じゃあ、ロキとは接触してみましょう。少なくとも、立場上すぐ襲ってくるようなことにはならないはず。そこで同盟でも結べればいいですが、最悪、全員で逃げ出しましょう」


「ふむ……なかなか行き当たりばったりだが、承知した。確かに、聖卿と組めれば他ともやり合えるでござるな」


 ロキは旅の仲間が一人いるだけらしい。いや、数で比べればロードも少女も一人らしいが、危険は少ないだろう。同盟を組む旨みを、向こうに提示できればだが。


「……アルお姉様って相当強いと思うのですが、やっぱり敵わない相手もいるものなんでしょうか」


「剣技だけならある程度はなぁ。しかし魔力量と腕力は少ない方だからな。聖卿の聖剣持ちや、兄上のような人間には劣るよ」


 その少ないという基準がだいぶ壊れていると思うのだが。それくらい上は高いということだろう。ただ、多少の希望はあるかもしれない。アルさんが劣っているというのが腕力や魔力量だけなら……ボクの方は聖剣込みで、その二つは補えるのだから。


「となれば、善は急げ。荷物は私が持ちますよ。戦いではみなさんほどお役に立てないので」


「うん、ありがとっ。でも助かってるからね」


◇◇◇


 茶屋を出てすぐ、ボク達はすぐにヤタノ大山に踏み入った。これといった違和感もないが、確かなのは強大な魔力が集まっている、ということ。山の反対側に一つ、頂上付近に一つ、そして…….近くに二つ。


「……なぁ、おい、シェリン。魔剣ってのはどんな風にあるんだ?」


「さぁ、分かりかねます。ツクヨミという魔剣が眠っている、ということしか」


「クソッ。なんだって探すのが面倒なんだ。やっぱり上に行くか? 悪魔みてぇな魔力はあるが……アルスメードとは会いたくねぇよ」


(アレが……)


 木陰に隠れ、彼らを覗いていた。一人は赤髪に白黒服の騎士のような風貌の若い美人さん。そしてもう一人はその主らしき、紫の髪の青年。二人とも剣を差しているが、男の方は聖剣だ。つまり彼が——


「……客もいるみてぇだ。お前らよォ、コソコソしなくたっていいだろォ!?」


「うっ、わわっ!」


 魔力は抑えていたのだが、流石の感知力だ。男が剣を抜いたかと思えば、辺りの木々は円を描くように薙ぎ倒され、身を隠す場所もなくなっていた。剣の長さには不釣り合いの破壊規模、挨拶代わりの斬撃がこれか。


「……一、二、三、四。なんだ、思ったより多いじゃねぇか。よし、俺はロキ! ロキ・ラグナロクだ! 貴様らはなんだ!」


「ぐっ……! ボクはメルナ! メルナ・アマテラスだ!」


 ロキの聖剣がボクに向き、気づいたときには目の前まで迫っていた。咄嗟にアマテラスを抜き、互いの聖剣がぶつかり合う。防御はなんとか間に合った。が、その隙にアルさんと藤玄が彼の首元に刃を向けていた。


「くっくっ……これは一体、どういうつもりだ?」


「貴様こそ、メルナに刃を向けて、黙って見ていると思ったか?」


 一触即発、今どちらかが動けば間違いなく斬り合いになる。そんな緊張が走った。何にしてもこの刃が邪魔だ。押し返そうにも力が強い。冷や汗が頬を伝い、アマテラスがロキの突きに押されつつある。どうすればいい。戦いでは勝ち目が薄い。だがこうなった以上——


「そこまで」


「っ……!?」


 パチン、と音が鳴った。互い音だが、柔らかさもある音。一瞬分からなかったが、たぶん、手の叩いた音だ。……いや、分からなかったのはそこじゃない。ボク達は先の姿勢のまま、いつの間にか位置がズレていた。


「ロキ様、彼女を斬れば問題になります。そちらはバラムランデの姫君、アルナリュート殿下でしょうし、メルナ様においてもバラムランデの者。あなたは聖議会の一員なのですから気をつけてください」


「チッ、ちょっとした戯れじゃねぇかよ。……まぁいい、互いに戦うのは得がねぇな。ここは剣を収めてやらぁ」


 鞘に収める音が響く。魔法だろうか。それか何かしらの加護? いずれにしても、強いのはロキだけじゃない。この付き人、シェリンとやらもそれに準ずる強さはあると見た方が良さそうだ。


「メルナ、大丈夫か?」


「あ、はい。傷はありません。……あなたはシェリン、と言ったっけ。止めてくれてありがとう。危うく争いになってたところだ」


「いいんですよ。むしろこちらのバカがご迷惑を。少し、お話をしませんか?」


「……あぁ、こちらとしてもお願いしたい」


 シェリンの浮かべた笑みは妖艶で、そしてどこか意味ありげなものだった。いがみ合って何が起こるでもない。アルさんと藤玄の確認を取ってから歩み寄った。今度は剣を鞘に収めて。

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