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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第六章 エルフの国

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№39. メルナの潜在能力

「そらそら! 腰が引けてるぞ!」


「ぬっ、くっ……!」


 鉄の叩く音が響き、足がもつれないように気をつけながら、斬れず斬られずの距離を保つ。あと一歩、侵入を許せば負けるのはボクだ。あと一歩、侵入できればまだ……やりようはあるが。


「『火炎の剣』!」


「っ……ふふ。そうだ、色々試すといい!」


 炎魔法を纏った剣で、アルさんを斬るつもりで襲いかかる。聖剣の加護だけでは、普通にやっては腕力もスピードも、彼女には届かない。はっきり言って化け物だ、この人は。勢いと火力が特徴の炎の魔法を纏っても、やっと五分か少し上かな。


「『月燈ルナ』!」


「ふっ……」


 大振りの振り落とし、アマテラスが地面まで衝撃を伝える。防げるパワーじゃない。のに、アルさんの細い剣はそれを的確に弾き、そのまま——


「ははっ、悪くないパワーだぞっ!」


「ぐっ……な、ならっ! 少しは怯んでほしいですね!」


 鋭い突きが頬を掠め、後から風圧が押し寄せる。身体を捻りながら勢いを加え、また一振り。それもまた軌道を逸らされてしまう。ただ……違和感もあるな。未来予知と言ったか。……いや、未来予知みたいなもの、だよな。


「すぅーっ……」


「……? どうした、深呼吸なんか……」


 アルさんの攻めをなんとか受け流しながら、呼吸を整え、魔力を引き出す。炎を引き出しながら、もう一つも。難しいというか、やりづらいというか。意識を二つに割かなければ……いや、でもやるぞ!


「『氷結世界』ッ!」


つめっ……! そっか、二つか……!」


 一瞬のうちに視界は白み、ボクの身体も冷え始めた。ただ聖剣に纏わせた炎魔法、それだけはなんとか保たせている。半径五メートルに絞った氷魔法。それも軽々と跳ね上がり、躱されてしまったが。今、動きが良いのはボクだ。


「わっ、とっ……動きづらいな」


「氷の世界ですからね……呼吸だけでも痛いでしょう……っ!」


 一太刀、二太刀。振るたびに押しているが、変わらずあと一歩、届かない。やはり、勝利の加護とは未来予知のような力らしい。ボクの動きが分かっているようで……けれど知ってるわけじゃないな。


「たァッ! はっ、はっ……! ……最適解、ですか?」


「ははっ、よく見抜いたな!」


「……っ!?」


 さらに一振り、アマテラスを目一杯落としたところ。空を斬り裂いて視界が開けた。いや、まさか。ボクの周りは氷点下、足元も悪いんだ。なのに……視界には揺らめく炎を纏った剣しかなく。髪に降っていた霜がハラリと落ちた。


「ふふ、やはり筋はいいな。主属性が二つあるのも大きな強みだ」


「ひゃいっ……!?」


 ボクは集中してたんだ。それを突然、背後から頭をポンポンと叩かれては、こんな情けない声も出よう。背中を取られたことに肝が冷え、それと同時に穴の空いた風船のように、へにゃへにゃとそこに座り込んだ。


「確かに、最適解を見る力だよ。勝利の加護というのは、言葉の通り勝利への道を示してくれるんだ。もちろん万能ではないぞ。何が起こるのかは私は予測しかできない。ただおよその対処法を教えてくれる」


「結局、未来予知みたいなものですね。やっぱり」


「言ったろ、万能ではない。明確な区切りはないんだがな、魔力にしておよそ二倍、それくらい差がある相手にはまず発動しない。それ未満でも、私以上の魔力を持っていては完全に見切れるわけでもないんだ」


 ボクは魔力量は人並みらしいし、スケスケだったのかな。……なんかえっちだな、スケスケって。出力はアマテラスの魔力増幅の加護があるから相当だが、それは関係しないのか。いずれにせよ、ボクはまだまだってことか。


「そう凹むな。まだ細かな動きの差で私が勝ってはいるが、パワーはお前の方がずっと上だ。ずっとずっとな」


「……え? そうなんですか?」


「もちろんだ。私はお前の……いや、聖剣のかな? とにかく、その怪力を利用してるに過ぎない。加えて戦闘中もお前は私の太刀筋を吸収していくのだから……参ったものだよ」


 そう……なのか。確かに、アルさんの剣はボクとの正面からの打ち合いはしていなかった。太刀筋の吸収、というのは剣聖の加護のおかげかな。戦うほどに武が洗練される。……そんなところだろうか。


「お姉様。ボクはもっと強くなりたいです。もっともっと、お姉様もみんなも守れるくらい。こんな世界でも、何が起こっても生き残れるくらいに……! いや、なります!」


「……はっはっ! 夢のない夢のようで……つまり世界最強を目指すということか? ふふ、なれるさ、お前なら」


「え、あ、いや……そんな大層なつもりじゃ……」


 あまりの期待に否定しようにもしきれず。でもそうだな。目指さない理由もない。だからこその、魔剣ツクヨミ、それを得るための旅……。あれ、そういう話だったのか?


「さて、身体も動かしたところで。ほら、コレを付けなさい」


「動かしたってレベルじゃないんですが……。ブレスレット、ですか?」


「『継天の腕輪』という、国宝アーティファクトだよ」


 されるがままに、柔らかい右腕にその輪っかを通された。重くもなく、特別軽いわけではない。金の螺旋状の装飾が施されたありきたりな腕輪に見えるが……。


「これはいざというとき、王宮に帰還するためのものだ。バラムランデ王国に危険が及んだとき、あるいは私達の力が必要になったとき、この腕輪に魔力が飛ばされ、王宮に強制転移させる、という代物だ」


「ほぉ……一方通行ってことですよね?」


「そうだな。私達の方に危険があったとしても、そこから逃げ出すものじゃない。国に危険があったときに守るためのものだ。旅の道中はこれを身につけること、それが条件だ」


 なるほど。確かにアルさんもボクも国の要人であり、同時に戦力でもある。そんな二人を旅に出すのかと、最初は驚いたものだが、いつでも引き戻せるのなら問題も少ないか。まぁ……そのボク達の危険はどうしようもないのだが、可愛い子には旅をさせよと言うしな。


「それで、西の大陸に行くんだったか」


「はい。竜王はそう言ってました。そこにツクヨミがあるだろう、と」


「予言のような類かな。私には分からないが。ひとまず、西にいる鷹丸という者を訪ねようと思う。情報屋だ」


「え……鷹丸?」


 めっちゃ和名というか……元日本人なのかな。あ、でもあれか。西にはハカタもあれば忍びもいるらしいしな。バラムランデは比較的西洋に似た雰囲気だから、そりゃあ日本っぽいところもあるか。そんなことも思いながら、まずは一息、しばらくは休めていた。

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