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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第六章 エルフの国

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№38. 万物の意思

「万物には意思がある。森も、海も、大地も。ましてや主を選ぶ聖剣ともなれば、その意思の力は強い」


「意思……?」


「そうだ。聖卿とはつまり、その意思を従え、聖剣の真の姿を引き出すこと。その境地だよ」


 ルヴァルクの聖剣、アランレームは姿を元の剣に戻したかと思えば、キンと鳴る高い音と共に、鞘に収めた。意思、なんてものが……万物に? 少し信じ難いな。生物ならまだしも、無生物なんて……でも、魔法の世界だし。あり得るのか?


「もちろん、そう簡単なことではない。中には主として選ばれず、ただの一度も声を交わさずに生を終える者もいる。もっとも、今の時代の聖剣持ちは君を除いて皆、聖卿と呼ばれる者達だが」


「ボクだけ置いてかれてるんですね」


「はは、無理もない。君は新人だからね。そもそもアマテラスは新しい聖剣、特性もよく分かってないなら仕方ないだろう。剣聖の聖剣、だったか」


「はい。意思というのもよく分からず……。まぁ今初めて知ったのですが」


 声でも聞こえるのだろうか。あるいは意思の力、みたいなものがあるのか。何にせよ、今のボクには分からないことばかりだ。必要なのは力と成長。それから魔剣ツクヨミ。参ったな、やることが多いか。


「仕方ねぇっス。魔物も斬ってもらえたし、あたしらは帰るっスわ。ルヴァルク、魔石が取れたらまた持ってくるっスね」


「あぁ、気をつけて帰れよ」


 そんなことを軽く言いながら、イェラティとユラエルはどこか、森の奥へと帰っていった。いや、森の向こう側か? 海辺に住んでるって言ってたもんな。……結局、よく分からんヤツらだったな。


「さて……時に三方、今日はこちらに泊まっていくのだろう? 出発はいつだ?」


「ふむ……メルナも話は終わったらしいからな。長居する理由も特にはないか。忙しなくて悪いが、道中が長くてね。明日の朝には出ようと思う」


「そういうことなら私の家にでも泊まるといい。今夜は温泉に案内しよう」


 そのまま、引きずられるようにトリュネルの家へと連れて行かれた。そうか、そうだよな。たぶん、宿よりは彼女の家の方が広くて良いところだろうし、女子四人、キャッキャうふふな女子会だもんな。


「温泉ですって! メルナ様も楽しみですね!」


「あっ……ゼル、お前は温泉には入るなよ。部屋で待ってろ」


「ちェッ」


「契約悪魔だったか。私は別に構わないのだが……そうだな。メルナがそう言うなら大人しくしておけ」


 こいつは見た目が可愛いものの、中身はただの変態だがな。ボクは……うん。ボクは仕方ないんだよ。中身はまだ立派に男子だけどね、あまりに外が可憐な女の子過ぎるから。そんな言い訳を胸に。

ボクが寝る頃には遊ばれ尽くされていたのだから……やっぱり、可愛がられるのも幸せばかりではなかったな。


◇◇◇


 その翌朝、国王のハイエルフに一度顔を合わせてからボク達はエルフの国、世界樹の森を出て。えーと……何日経ったかな。とにかく、バラムランデ王国に帰ってさらに翌日のことだ。旅の疲れもまだ癒えてはいなかったが、呼び出しに応じてボクは城の訓練場に赴いていた。


「……おはよう、メルナ。良い朝だな」


「はい。あの……呼ばれた理由を尋ねても?」


 質問にアルさんはコクリと頷き、剣を磨いていた手を止めた。やっぱり、彼女の立ち姿は美しい。絵になるというか、なんというか。芸術的と言えるほどに無駄がない。


「父上……陛下から許しが出た。近いうちに旅に出るぞ。メンバーはお前と私、それからナナだ。……あぁ、あとゼルシアスもだな。流石にタロンは歳だからな。連れ回すのは酷だ」


「え、いいんですか? いや、お願いしたのはボクですが、まさかこうもあっさり国を空ける許可をいただけるとは。思ってませんでした」


「もちろん、いくつかの条件付きだ。しばらくはこの国に危険が及ぶこともないだろう。兄上もいるしな。そんな状況で聖剣持ち(メルナ)の成長な必要な旅、止める理由がないだろう。お前はまだ分かってないのかもしれないが、それほどまでに聖剣とは特別な資質」


 アルさんの言葉に耳を、意識を傾けつつ、視線は注意深く彼女の動向に向けていた。鍛えられたことで身についた習慣とも言えるだろう。さりげなく構えられた剣を見ると、ボクも身構えずにはいられない。いや、まさか……嫌な予感がするな。


「まぁ、詳しいことは後で話すにして。……ふふ。私はな、お前が好きだよ。可愛いし、素直だし、飲み込みも良い。無茶をすることも多いが、それだけ正義感に満ちているという証拠でもある」


「あ、はは……買い被りですよ。ボクはただ、自分がやりたいように生きてるだけ。わがままなだけで——」


「わがままで結構。そんなお前を認めてるんだ。……で、お前を鍛え始めて随分と経った。どうだ? ここで一つ、私と勝負をしないか? 旅の前の現状確認というやつさ」


 い、嫌だぞ。そんなの。そんな……要はいつも以上のしごきじゃないか。参った。なんとか逃げ出さなければ……半殺しにされちゃうぞ。あぁ、でも逃げてもまた怒られるな。……あれ、詰んだないか?


「ははっ、おいおい、緊張するな。シアやルヴァルク殿と比べれば、私なんて大したものじゃない。お前も聖剣持ち、私はただ超えるべき壁でしかないのだぞ?」


「そ、そうは言いましても……」


「安心しろ。勝てとは言わんよ。だが、今の強さを見せてみろ。お前の潜在能力ポテンシャルは恥じるものではないはずだ」


 そう言い終わると同時に、彼女の細く美しい剣は確かに構えられた。ダメだ、逃げられない。こうなったらボクだって腹括ってやるよ。魔法でもなんでも使って、ちょっとでもカッコよく見せてやろうじゃないか。


「……一応、少しだけ教えておこう。私の加護について。私が持っているのは『勝利の加護』、少し違うが……ちょっとした未来予知による戦闘能力の上昇、とでも思ってくれ」


「化け物じゃないですか……」


「メルナ、お前はお前自身には加護がないとはいえ、聖剣には四つも加護があるんだ。卑屈になるな。お前だって十分に強いしズルいよ」


 鞘から抜いて、刃を向ける。そうすると改めて、彼女の大きさが分かった。確かに加護は一つかもしれない。けれどそこにあるのはそれだけでなく、経験と鍛錬が山のようにあるんだ。ちょっとのズルで対抗できる相手じゃ……。いや、いいんだ、コレで。


「剣技、魔法、なんでもいい。メルナ、お前の力を発揮するんだ。アマテラスを私に魅せてくれ」


「はい……っ!」


 ジャリ、と踏み締める音が小さく響く。これは試練だ。アルさんに叩き込まれたものを、これまで積み上げてきたものを見せる試練。恐れるべきは負けじゃない。今、恐れるべきは中途半端。ただそれだけだ。

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