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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第六章 エルフの国

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№35. 先の行方

 ハルヒ・ユキムラ、目の前の竜王はそう言った。日本人の名前だ。間違いなく、この竜の精神は元・日本人。……つまり転生者。正直、気になるところもあるが。


「お主も転生者、それも同郷の者だろう?」


「……そう、だよ。うん、ボクも転生者、日本人だよ。ゼノヴィオ……さん?」


「ふははっ、やはりな。いやぁ、久方ぶりだな、同郷の者に出会うのは! メルナ、メルナ・アマテラス……ふむ、やはり良い名だな。我よりずっと分かりやすくていい」


 どうやら、ボクを取って食おうというわけでもなさそうだ。ま、それなら良いか。変わらず愉快な性格のようだし。やっぱり深刻に考える必要はないかな。


「でもゼノヴィオさん、あなた七〇〇〇年前からいたんですよね? 相当の老人というか……一体、何時代の人間なんですか?」


「待て待て、我はそんな昔の存在ではない。いや、この身体はそうだがな、我が継承したのは最近のことだ」


「継承?」


「地球で死んだときにな、ホルネィ様の手でこっちの世界に転生させられたわけだが。ちょうどそのときこの肉体の主、先代の竜王が死にかけていたようでな。譲ってもらったんだ。ホルネィ様にゃ継承の加護ってのを与えられてな。だからその七〇〇〇年前の記憶はあるが、それは厳密には我ではない」


 肉体を譲ってもらった。……そんなことがあるのか。ただこの肉体は確かに生きてるもんな。死んだのは先代の魂だけか? ドラゴンは輪廻転生だとか死の概念が人間とは違うのか。それともその継承の加護のためか。……いや、大事なのはそこじゃないな。


「あなたが転生してきたのはいつ頃ですか?」


「えーっと、何年前だったかの。二〇……いや、三〇か? もう少し前だったかもな。……あまり暦を数えてないもんで、具体的には覚えとらんわ」


「結局ジジイじゃないっすか」


 記憶は引き継いでいるようだから、そのせいで時間感覚も狂ってるのか。三〇年かあるいはそれ以上、相当な時間だ。ドラゴンの記憶に比べれば、そんなものは赤子の人生のようなものだろうけど。


「まぁいいや。しかしメルナ。お主、この世界を楽しんどるようだな。我もしばらくは楽しんでたが、なんせこんな身体だ。不自由もないと、こうのんびり過ごすのが趣味になってしまってな」


「やっぱりジジイじゃないすか」


「ジジイ言うなや。話題はそこじゃねぇんだよ」


 岩より大きい身体を持ちながら、案外その感性は人間とそう変わらないものなんだな。元が人間なんだからそりゃそうか。でも……よくそれだけ強大な力を持っていて、大人しくしてるものだ。人によっちゃ世界を火の海にもしたがるだろうから、『良かった』ってところかな。


「我はなぁ、記憶もあればエルフのこともあるから、いつの間にか口調も先代に似通っちまってなぁ。まぁ悪い気分でもねぇが」


「悪い気分じゃないならいいじゃないですか。ボクなんか、結構酷い目に遭ってるんですよ。死に目に遭ったのも、一回や二回じゃないし……」


「我の転生は、まぁズルみたいなもんだからなぁ。しかしお主もめげることはなかろう。なんと言ったってアマテラスという銘の聖剣を与えられてんだ。ツクヨミも主人を待ってると聞く」


「何……?」


 彼の言葉に、全身がビクリと波打った。ツクヨミ、それは魔剣の銘だ。ゼルが語った、聖剣と魔剣、その両方を持つ者が世界を……うんたらかんたらだったか。大事なところが分からないんだったが、間違いなく強力な力を得るのは間違いない。


「何か知ってるんですか……?」


「いや、詳しくは知らねぇのよ。ほとんどの魔剣がそれぞれ、大魔公共の手中にあるってことくらいしかな。だが加えて一つ、我が知ってることがある。……お主をここに呼んだ理由だがな。久方ぶりに同郷と話をしたいというのもあったが」


「ボクもまさか日本人と話せるとは思ってなかったから、ちょっとテンションは上がったけど。……その、知ってることというのは?」


「旅に出ろ。西の大陸だ。そこに魔剣ツクヨミはある。アマテラスを持つお主が、それを見つけるのだ」


 それはあまりに突拍子もない……いや、抽象的過ぎるものだった。西、ただ分かってるのはそれどけか。ここは位置的には中央の大陸、それを跨ぐのは骨が折れるが。旅、ねぇ……。


「気は進みませんよ。ボクの……夢っていうのかな。この世界では順当に生きたいんです。もちろん、日本と違って危険な世界。多少の実力はつけるつもりですが……」


 魔剣というのはどうもなぁ。そもそも聖剣持ちというだけで平和に過ごせる自信は少ないんだ。加えてツクヨミを拾ったならば、ボクに集まる敬意と敵意は跳ね上がるだろうし。……そもそもその道中が危険な匂いしかしないし。


「なるほど、もっともだな。が、それはなかなか厳しい夢だぞ」


「……なんでですか」


「近いのだ。混沌の時代が……戦乱の時代が。否が応でも巻き込まれる。逃げ続けるのは不可能だ。お主も……お主の大切な者も」


 戦乱の時代か。……簡単に信じられる話ではない。確かに争いの多い世界だが、バラムランデは平和な国だ。いくら竜王といえど、予知能力があるわけでもあるまいし。けど、でも——


「大切な者、それを出されちゃ引けないじゃないですか。……一つ、教えてください。その予言の根拠は?」


「時代の変化と言うべきかな、うごめいているのだ。時代が。我はその変化を聞いているに過ぎない。だが近いうちに必ずだ。変化は起きるぞ」


「……分かりました。分かりましたよ。ツクヨミですね。ちゃんと魔剣を探します」


 その返事を聞いてか、彼の顔は少しだけ綻んだ気がする。ボクは生きたいだけだ。死にたくないだけ。でも同時に、目の前の手は取りたいとも思ってる。


 聖剣という力があるんだから、アルさんやナナ。そして国の人達。それくらい、ボクが守れるのなら守りたいんだ。全員じゃなくても、ただ目の前だけでいいから。

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