↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第五章 侯爵領の事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/50

№24. ヴァルタリオ侯爵領

 山を離れ、馬車に乗り込み。また侯爵邸へと戻る。最悪野宿も覚悟していたが、思いの外早く片付いたのは幸か不幸か……。ただ厳密には片付いたわけでもない。真に片付けるべきなのはその元凶なのだから。


「悪魔を討伐し、今帰った。侯爵はどこだ!」


「ア、アルナリュート殿下! お早いお帰りで……。主はただいま領内の視察、記録に赴いており……しかしすぐに帰られると思いますが」


「くそっ。間が悪いな。仕方ない。とりあえず通してくれるか?」


「は、はい! もちろんです!」


 屋敷に戻り、簡単に門番と言葉を交わしながらその敷地に足を踏み入れた。この屋敷の主はいないものの、使用人達がテキパキと働く姿が目に入る。洗濯やらなんやら、忙しいところを悪くも思うが……ボクらとて同じだ。そのまま案内された部屋に腰を下ろして一息ついた。


「ふぅ……申し訳ございません。私めには少々……厳しいスケジュールになってしまって……」


「あぁ、休め。流石に馬車で走り過ぎたな。そろそろ八〇だろう? 無理もない」


「では少し……お言葉に甘えまして……」


 ぐったりと、彼もまたソファに身を沈める。八〇だったのか。あんなに軽やかな身のこなしだから……外見を加味してせいぜい六〇後半か七〇ほどだと思っていたが。ご老体を労わるどころか、働かせ過ぎたかな。


「時にメルナ、お前はどう思うんだ?」


「……正直、証拠が少な過ぎるので直感に頼るしかありませんが……。もしボクの読みが当たってるのであれば、これは民間がどうこうできる範囲ではありません。ましてや侯爵お抱えの騎士団、それを動かすとなれば——」


「そうだな。行方不明者の急増というのは、そもそも偽りの報告なのかもしれない。……タロン、言うまでもないがお前はここで休んでおけ。ヘトヘトの状態では万が一のとき、守れないかもしれん」


「守るのは私の役目なのですが……釘を刺されては仕方ありません。嫌な気配を察知したらすぐに駆けつけます」


 タロンにそう残し、ボクとアルさんは腰を上げた。あくまで可能性の域を出ない。証拠も少ない、直感の話だ。それでも……ここには不思議な箇所がある。


「……執務室、ここですね。この部屋だけは不思議なくらいに魔力を感じない」


「魔障石でも使われているのか? まぁいい、とりあえず……」


 許可なく侯爵の執務室に侵入するのもどうかとは思うが、仕方ない。もし違ったのなら謝ればいいさ。幸いアルさんは王室騎士団長であって王女でもある。ボクにだって王妃の娘で聖剣持ち、加えて国家特異武官という立場もある。調査という名目で、一体誰が文句を言えようか。


「メルナ様、アルナリュート殿下! 困ります。旦那様のご不在時に……」


「安心しろ。何もなければ荒らしはしないし謝罪もする。ただ今は手を出すな」


「……そ、そこまで言われるのでしたら」


 少なくともこんな風に、屋敷の使用人が強く出ることはそうない。制止されることもなく、その重厚な扉を開くと。広がっていたのはあまりに凡庸な、そして輝かしい部屋だった。怪しい物は見当たらない、普通の部屋。けれどやはり、異常に魔力の残りや漏れがない。


「……っ、ここです。ここだけ何かが変だ」


「よくやった。退け、私が開いてやる」


 隠し通路を見つけたのは部屋の奥、本棚をずらした下に金属の蓋をされていた。カーペットで隠れてはいたが、そこは特に魔力を弾こうとしていたんだ。地下の魔力を隠すためには、地上の魔力も遮断することになってしまう。ボクがいたのが災難だったか。


「……じゃあ、降りるぞ、メルナ」


「はい。慎重に、お姉様」


 蓋を開くと、人が一人、やっと通れるような小さな通路、そこに鉄梯子がかかっていた。一歩、一歩。慎重に降りるたびに、ドス黒い匂いが強くなる。まさか、とは思っていたが、こうなるといよいよ……犯人は一人しかいない。


「ゔっ……うぇ!」


「これは……っ!」


 目の前の光景に息を吸うのもままならず、臓物が口から溢れそうなほどだった。それは地獄なんて生優しいものではない。死体も多いが、そればかりじゃなかったんだ。


 みんな、その地下牢に閉じ込められ。ある者は吊るされ、臓物まで引き裂かれ。ある者は四肢を失い、虚空を見つめ。またある者は……まさに理性を溶かされ、身体が変異していたり。およそ人間のものとは思えず……そのとき。ガチャン、と、背後で何かが閉じた。


「っ……!?」


「誘惑鬼はなかなか成功していたのですが……まさかバレてしまうとはね。舐めていましたよ、お二人とも」


「あの悪魔には人間の魔力が混ざっていました。よく思い返せば、戦場と思われるところの痕もそうだった。……騎士団とやらも、すでに人間と呼べるようなものではなかったのでしょう?」


 そう言いながら、ボクの眼光は侯爵を捉えた。優しかった柔らかい笑みも、今ではどこまでも憎たらしい。人の命に価値を見出していない……あるいは命を低俗な価値で決めているような下衆の瞳。


「街の行方不明者もそうだ。姿を見失ったのではない。攫って、実験体にしてるんだ。ここにいるのは死んだとされた騎士団員、消えた領民。全てだ。全てここにいる。……いや、『いた』はずだ。……お前はァ! ここで何をしてるんだ! ヴァルタリオ!!」


「ふはっ! 簡単な話ですよ。分かってるでしょ……ぶッ!?」


 言い終わるよりも速く、ボクの拳はヤツの顔面を殴り飛ばしていた。地下の壁にぶつかりながら、侯爵は身体を削りながら転がる。手の骨は痛むし、ポタポタと血も流している。それがなんだ。今は斬るより殴るの方がボクの趣味だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。