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転生TS少女の異世界譚 〜戦乱渦巻く魔法の世界。女の子になっちゃったけど二回も死にたくないので女神様から与えられた聖剣一つで生き延びます〜  作者: わらびもち
第四章 聖剣の主

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№20. 建前口上

「アルお姉様は軍服なんですね。……ミリアお姉様はドレスなのに」


「私はいいんだよ。こっちの方が慣れてるからな」


 ボクだって制服の方が慣れてるんだけど、

というのは今更か。もう着替えは済ませてあるわけだし、あとは始まるのを待つだけ。……ボクだって制服の方が慣れてるんだけどな。


「それよりメルナ、多少は挨拶もしなければならないんだ。お前は慣れてないだろう? 簡単に台本を作っておいたぞ」


「わぁ! ありがとうございます!」


 渡された紙、そこに書かれていたのは確かに簡単な文章だったが、この上なく参考に、そして頼りになるものだった。つまりはこれを言えばいいわけだ。いざというときに何を言えばいいのか、多少は考えていたがこれで心配ない。


「ねぇメルナちゃん。そんなことは気にしなくていいんですよ。言葉に詰まっても私達が助け舟を出しますから」


「は……はは。いやぁ、頼もしい限りです」


 鼻先が触れるほど近く、ミリア殿下が顔を寄せた。この人はアルさんとはまた違う距離感なんだよな。一線引いてるようで、その実、ボクの方にその線を越えさせようとする……いわゆる誘惑タイプだ。恐ろしい!


「いやしかし……本当にな、意外だよ。新しい聖剣持ちだと聞くから、身構えていたんだがな」


「あ、ベルアルトお兄様。お気づきになられたんですね」


「ぐっ……! はぁ、はぁ……あぁ。なんとかな」


 今度は倒れなかったか。いや、舌を噛んで理性を保ったんだ。身を削ってまで……なんなんだこの人。オモロいな。


「俺の立場上、幾人かの聖剣持ちと会う機会も多くてな。今の君とは違って聖卿と呼ばれる高みらしいが……まぁなんだ。そいつらと来たらイカれててな。頭が」


「頭が!?」


「癖が強いのなんの。ここにゃあアナスタシアがいるらしいな。アイツなんかマシな方だ。そして、それ以上にマトモなのが君ってわけ。安心したよ」


 イカれ……まぁそうか。強いなら一癖も二癖もあるもんだろう。ボクだってもしかしたらそこに仲間入りするかもしれないし……。いや、ボクは根本がマトモな日本人だからな。


「でも兄上、メルナも大概だぞ? 薬が欲しいからと一人で魔女の森に入って死にかけるくらいだ」


「何っ!? ……他人ではなく自身を削るタイプのイカれ人間だったか」


「はは……お戯れを」


 イカれてんのはアンタらだろ、というのは一旦置いておいて。というかそんな不敬を口にする度胸もなく。


「で、やはり筋は良いのか?」


「良いも何も、右肩上がりだよ。剣を握って三週間と少し、確かに私達と比べると少し見劣りはするし、魔力の扱いもお粗末。けど成長は明らかに右肩上がり。これじゃあ私が抜かされるのも時間の問題だ」


「そんなことありませんよ。いくら力をつけても、実践経験は埋まりませんから」


 確かなことは剣聖の加護が成長を早めている、ということ。剣を振れば振るほどに磨きがかかり、魔力も練れば練るほどに質が高まり、同時に全身の巡りが良くなる。質より量、量が質に直結する。……成長は早いのは確かではあるが、やはりもっと決定的なところで、ボクとアルさんとではまだ遠い。


「何にせよ、三週間でコレは化け物だよ。私はその聖卿ってのが何か、詳しくは知らないがさ。そう遠くないんじゃないかな」


「間違いないと思うよ。聞いた情報からするに、剣聖の加護……それは恐らく天井無し、強化系の加護なんだろうね」


「まぁ……体感、しばらくはそうですね。流石に限界はあるでしょうが」


 それから、時間が過ぎるのはあっという間だった。と言ってもほんの数時間なんだ。こんな刺激的な空間を退屈に思う暇なんかない。


 そしてその一瞬の後、いよいよ披露目の儀が開催された。場所は王宮の大舞踏の間、その壇上。いつからか意識を取り戻した国王様を先頭に、ボク達は連なった。客の視線は、見慣れないボクに集中しているのが分かる。


「ゴホン。まず我が国内の貴族を始め、各地を牽引するような皆の者よ、遠路はるばる赴いてくれたことに感謝する。必要などなかろうが、我が名はバルテッド・バラムランデ、我が国の国王である。堅苦しいのは好まない質だがな、形式を崩し過ぎると誰かがうるさいかもしれん。まずは——」


 そこから始まった話は、言うなれば校長先生の話だった。いつになく王の威厳は発揮されていたものの。良いことは言ってるだろうし、大事なのだとは思うが、どこかで退屈。そんな話。幸いなのは、それが決して長くなかったことか。


「——と、まぁつまらぬ話はここまでにして。紹介しよう。我が妃、リアネスムーンの新しい娘にして、我らの新たな家族でもある。十番目の聖剣保持者、バラムランデ王国国家特異武官。メルナ・アマテラスだ」


 その宣言と同時に、全ての視線が今一度集まる。品定めするような目か、疑いや嫌悪の目か……あるいは敬いか。それらは一言で言い表せないものだった。……それがどうした、関係ない。ボクは鞘からアマテラスを抜き、それを掲げた。


「ボクの名はメルナ! メルナ・アマテラス! アルナリュート殿下に名前を頂いた恩、リアネスムーン王妃に拾って頂いた恩! 深くは語らない。ただ一つ。第十の剣『剣聖の聖剣』アマテラス、ただこの一つで我らがバラムランデ王国、並びに偉大なる王家に受けた恩義を返す所存! ……よろしくね?」


「おぉー! 可愛いですぞー!」


「美しゅうございます!」


 清々しいほどの茶番だ。彼らには聖剣が、あるいはボクの顔が輝いて見えるだろうか。別にボクはそんな深いことは考えてないし、国王様方もそんなものを求めているわけじゃない。


 ただ使えるものは使おう。顔と声の良さも、それっぽさも。持ち上げられ、歓声を浴びるのも悪い気はしないしな。聖剣を鞘に収めてからも、しばしその熱は引かなかった。

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