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機能美から始まる江東区政ラブ・マッチング ~私を『女神』と呼ぶ最強エリートは、重度の筋肉フェチでした~  作者: あおきつばさ


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第20章:射抜かれた11号の誓い

第20章:射抜かれた11号の誓い


歓喜のあまり、私はその場から飛び上がった。

全身のバネを使い、歓喜のエネルギーを爆発させた、その刹那。

慎治さんの放った矢の音に、もう一つの「硬質な破壊音」が重なった。


……何が、起きた?

さっき、思わずジャンプしてまだ空中にいる。


慎治さんの矢が、的のど真ん中――まさにゴールドの中心を射抜き、一瞬置いて制限時間を知らせる電子ブザーが鳴り響いた。


そして私の視界には、ウエストのあたりから「銀色の流星」が、観客席を飛び越えて芝生の方へと射出される光景が映っていた。


(……え? ……嘘でしょ?)


一瞬の空白。

そして、急激に襲いくる「冷気」と「解放感」。

 

特注

ストレッチ素材

可動域3倍


それらすべての技術の粋を集めたはずの「斉藤美緒専用・決戦礼装」のメインホックが。

私の、慎治さんの優勝に呼応して最大出力を叩き出した大臀筋と大腿四頭筋の「爆発」に耐えきれず、宇宙へと旅立ってしまったのだ。


「……っ、あ……」


ずり落ちそうになるスカート。

私は空中で、その身を捻るようにして両手でウエストを掴んだ。


着地。


幸いにも、特注セットアップの構造上、即座に全壊することは免れたが、今の私は安全ピンすら持っていない、無防備な戦士だった。


「……し、慎治さん……優勝、した……」


羞恥心

歓喜

混乱

それらが混ざり合い、私の脳内は最大負荷のベンチプレスを十回上げきった時のように真っ白になった。



会場は、割れんばかりの拍手と歓声に包まれていた。

逆転優勝。

江東区の歴史に残る、完璧な10ゴールド

 

慎治さんは、静かに弓を下ろした。

普通なら、仲間と抱き合い、ガッツポーズを決めるところだろう。

けれど彼は、優勝の余韻に浸ることもなく、迷いのない足取りで観客席の方へと歩き出した。

 

その視線は、周囲の称賛をすべて切り捨て、ただ一人、赤くなって固まっている私だけを捉えていた。


「……斉藤さん」


「……あ、あの、瀬戸さん、おめでとう……ございます。……すごい、すごかった……」


私は、両手でスカートのウエストを死守したまま、震える声で言った。

 慎治さんは、私の前で立ち止まると、フッと不敵な、そしてこの上なく優しい笑みを浮かべた。


「……言っただろう。君の真心には、最高の利子を付けて返すと」


「……それは、分かってる。……でも、今、ちょっと……その、物理的なトラブルが……」


「……分かっている」


慎治さんは、手に持っていた大きなスポーツタオルを、バサリと広げた。

 そして、流れるような動作で、私の腰にそれを巻き付けたのだ。


「…………っ!」


「……ありがとう!君のおかげだ。俺の、11号の女神」


耳元で囁かれる、低い声。

タオルの上から、彼の手が私の腰を強く、しっかりと抱き寄せた。

そして、また抱えられた。


お姫様抱っこ! ……大観衆が注目する前で!


その温もり。

しかし、圧倒的な「守られている」という安心感が、しばし猛烈な羞恥心をも忘れさせてくれた。


慎治さんはそのまま、会場のすべての人々に聞こえるような、凛とした声で言い放った。


「皆様! ……聞いてくれ!」


会場の喧騒が、ピタリと止まる。

来賓席の副都知事も、香坂麗奈様も、みんなが息を呑んで彼を見つめている。


「俺が今日、この土壇場で10点を射抜けたのは、俺自身の力ではない! ……俺の隣で、誰よりも自分を律し、俺の筋肉と魂を支え続けてくれた、この……斉藤美緒さんがいたからだ!」


「……っ、瀬戸さん、恥ずかしい……!」


顔が発熱するのを感じた私は、彼の胸に顔を埋めた。

けれど、慎治さんの告白は止まらない。


「彼女は、迷いのあった俺をここまで導いてくれた女神だ!」

「俺が射抜いたのは、的だけではない! ……斉藤美緒。君の、そのパツパツの制服の下にある、真っ直ぐな心だ!」


どよめき。

そして、地鳴りのような拍手。


青山愛が「美緒さーん! おめでとう!」と号泣しながら叫んでいる。

麗奈様が、わずかに微笑みながら、優雅に拍手を送っている。


「……美緒。……これからも、俺の隣で、最高のバルクアップを続けてくれ」


慎治さんが、私の顎を優しくクイと上げた。

夕暮れの夢の島、逆光に照らされた彼の顔が、ゆっくりと近づいてくる。


「…………はい。……もう、どこまでも、ついていくわよ。……この、筋肉バカ」


私たちは、拍手の渦の中で、静かに唇を重ねた。

 

ホックが弾け飛んだ瞬間、私はすべてを失ったような気がしたけれど。

その代わりに手に入れたのは、どんな数字(号数)にも縛られない、無限の広がりを持った「愛」という名の新天地だった。



その日の夜、私たちは、誰もいない河川敷にいた。

慎治さんのジャケットを羽織り、彼の隣を歩く。


「……瀬戸さん。……結局、あのホック、どこまで飛んでいったのかしら」


「……気にするな。今頃、夢の島の芝生の中で土に戻り始めているだろう」


「……適当なこと言わないでよ」


私は、彼と繋いだ手の感触を確かめた。

ゴツゴツとした、力強い手。


「……美緒。……次は、結婚式だな」


「えっ!? 早すぎない!?」


「君のウェディングドレス……大臀筋の部分をどう補強するか、今からデザイナーと打ち合わせなければならない」


「…………本当に、貴方って人は」


私は、彼の腕に抱きついた。

11号のスカートは、もういらない。

私は、私のままで。

彼と共に、新しい人生の「的」を射抜き続けていくのだ。


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